愛媛事案で第1回控訴審が開かれる

【とりくみ:社保庁 分限免職】2016-10-26
 10月21日、社保庁不当回顧撤回闘争愛媛事案の第1回控訴審が高松高裁で開かれました。弁論に前には、高松高裁前で原告と愛媛支援共闘会議のみなさんが宣伝行動を行いました。
 愛媛のたたかいは、今年3月30日に高松地裁で請求棄却の不当判決を受け、高裁へ控訴し解雇撤回を求めてたたかっています。



高松地裁は誤った判断を行った
 第1回控訴審(生島弘康裁判長)は大法廷で開かれ、約60人が傍聴席から見守るなかで始まりました。原告側より国に対して第1準備書面と求釈明申立書を提出し、原告の児島さんが意見陳述を行いました。意見陳述で児島さんは、在職中に専門的な知識を持って業務にあたっていたこと。「消えた年金問題」では事務所の責任者として休日や夜間を問わず解決に奮闘していたことを述べました。また、高松地裁判決は厚生労働大臣の分限回避努力を認めておきながら、法的義務を履行しなかったことに対して誤った判断を行っていると述べ、裁判長に公正な判決を求めました。
 国側から、原告が提出した求釈明に対し、「地裁判決がすべてであり、回答しない」主旨の反論があったため、原告側弁護士より「地裁判決は憶測での判断しかしていないため、事実確認が必要だ。求釈明には必ず応えるべきである」とあらためて主張し、裁判長からも国に対して書面で釈明するように求めました。また、次回弁論も大法廷で開くように申し入れ、来年2月13日(月)14時から大法廷で開くことを確認し閉廷しました。


雇用調整本部の使用は法的にも可能
 弁論につづいて報告集会が近くの会場で行われました。香川県労連の堤議長が主催者あいさつを行い「裁判長は愛媛県の周桑病院争議の不当判決を書いた生島裁判長。国側も自分たちの主張を押しつけてきている。わたしたちも署名などを集め裁判に勝利しよう」とあいさつしました。つづいて、国公労連の中本中央執行委員と全厚生の杉浦副委員長が駆け付けていただいた支援者のみなさんにお礼と引き続きの支援をお願いしました。また、杉浦副委員長からは、全国でたたかわれている裁判の状況を報告しました。
 次に、弁論の報告を弁護団が行い、水口弁護士は「多くの支援者が傍聴席を埋めていただいたことは、裁判官に『ちゃんとやれ』というプレッシャーになっている。引き続きの支援をお願いしたい。今日は、児島さんの陳述がすべて。地裁判決は四苦八苦して書いた判決。事実関係を明らかにしないまま予測した判決であり、今回釈明を求めた。国は、そこを追及されると負けると思い、どうやって釈明しないかを主張していたが、裁判長から国に対して書面を出させるように言わせたのはよかった。厚労省に具体的事実をどう釈明させるかがんばりたい」と決意を述べました。
 臼井弁護士から「今日は法廷らしい法廷となった。裁判長がよく聞いてくれたと思う。高裁段階でこれだけ聞いて、国に対して書面を出させることを明言させたことはよかった。楽観はできないが、大きな前進。また、雇用調整本部を使用することは法的に可能と言わせたことも大きい」と報告しました。井上弁護士は「釈明に対してあれだけ抵抗してくるのは、大変許し難い。雇用調整本部を使わなかったのは、法律が違うと言い続けてきたが、法的に可能であったと発言させたことは大きい。今後、閣議決定時に雇用調整本部を使うことを決定している点を追及していきたい」と今後の展開も報告しました。

 そのあと、参加者から激励と各争議の報告などがあり、原告の出原さんからお礼と年金機構の業務実態の報告、児島さんからもお礼と署名を6,000筆提出してきたことも報告されました。最後に愛媛県労連の前川副議長より、支援共闘として50,000筆を目標に署名をお願いしたいと呼びかけ閉会しました。

児島さん意見陳述(抜粋)
 わたしたち、社保庁職員は国家公務員として、公務の中でも公的年金という国民に直接関わる大切な仕事を選択し、熱意を持ってまじめに従事してきました。
 わたし自身も36年10ヶ月間、一貫して公的年金業務や健康保険業務に携わり豊富な知識と経験を蓄えてきました。年金記録問題では、すべての土日を開庁して年金記録問題への対応にあたったこともあります。このような職務に対する頑張りは、他の控訴人も同様です。
 年金記録問題は、年金制度毎に管理・運営されていたことや、機械化に伴う切り替え上の問題など、歴史的・組織的背景を持った複合的な要因により発生しています。同時に、年金記録の管理に十分な予算や人員が配置されてこなかったことも明らかです。
総務省の「年金記録問題検証委員会」の最終報告では、責任の所在として歴代の社会保険庁長官をはじめとする幹部職員の責任は最も重く、厚労大臣についても責任は免れないとしています。
地裁判決では、厚労大臣の法的責任を明確に認めました。さらに、厚労大臣の指揮命令権限を根拠とするのであれば、内閣総理大臣は憲法や内閣法で行政各部を指揮監督するとされており、法的責任を認めるべきです。ところが、雇用調整本部の活用を認めないことが平等取扱い原則に違反しないとしました。しかし、各府省庁の協力態勢が、内閣総理大臣の指示によることを無視しています。内閣が、閣議決定で「分限免職回避にむけてできる限りの努力を行う」とあり、社保庁の問題を別として、内閣総理大臣が指示しなかったことに合理的な理由はありません。
 さらに、厚労省のとりくみとして残務整理定員枠の活用や欠員の活用、日本年金機構への出向者の定員枠の活用を認めませんでした。残務整理定員枠の活用について判決で「はばかられる」と述べていますが、職員の分限免職回避のために活用を「ためらったり」「遠慮したり」する必要があるのでしょうか。厚労大臣の法的義務を履行できなかった理由にはなりません。
地裁判決には、重大な誤りがあり、これらの点を公正・公平に判断していただくようにお願いします。
 
以上