東京高裁でも不当判決

【とりくみ:公務員賃下げ違憲訴訟】2016-12-05
「公務員賃下げ違憲訴訟」闘争ニュース
東京高裁でも不当判決
 
 国公労連と組合員359人が2014年11月13日に東京高等裁判所に控訴した「公務員賃下げ違憲訴訟」の判決言い渡しが本日12月5日15時から東京高裁101号法廷で行われました。原告席、傍聴席とも埋め尽くされる中、川神裕裁判長は「1 本件控訴をいずれも棄却する。2 控訴費用は控訴人らの負担とする」と主文を読み上げるのみで、東京地裁に引き続いて被告・国の暴挙を「合憲」と判示する不当判決を言い渡しました。(判決要旨は別添)
 国公労連「公務員賃下げ違憲訴訟」闘争本部および同弁護団はこの不当判決に対し、ただちに以下の通り声明を発表しました。なお、本日の行動などについては別途お知らせします。

「公務員賃下げ違憲訴訟」の不当判決を弾劾する(声明)
 
 本日、東京高裁第17民事部(川神裕裁判長)は、国家公務員の労働基本権制約の代償措置たる人事院勧告をも無視した給与減額について、憲法28条には違反しないとして合憲と判示し、国公労連との誠実交渉義務違反も認定せず、原告らの請求を全て棄却した東京地裁判決を支持して、控訴を棄却する不当判決を言い渡した。我々は、この不当判決を満身の怒りを込めて弾劾する。
 
 「給与改定・臨時特例法」に基づき、2012年4月分の給与から、歴史上初めて、人事院勧告によらない国家公務員給与の平均7.8%(一時金は一律9.77%)もの減額が実施された。2年間の給与減額は一人平均100万円程度にも上る。
 これに対し、2012年5月25日以降、日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)と組合員370名が、差額賃金の支払いと損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。東京地裁は、2014年10月30日、原告らの請求を全面的に棄却する不当判決を言い渡したため、原告らは逆転勝訴をめざして東京高裁に控訴した。
 
 国家公務員は、労働基本権を制約され、争議権と労働協約締結権が剥奪されている。そのことが、全ての勤労者に労働基本権を保障した憲法28条に違反しないためには、代償措置がなければならない、と最高裁は全農林警職法事件で判示している。その代償措置が、給与などの労働条件については人事院勧告制度であった。
 判決は、この最高裁が示した枠さえ無視し、「人事院勧告には拘束力がない。他方で、勤務条件法定主義、財政民主主義に基づき立法裁量がある」との国の主張を受け入れ、「我が国の厳しい財政事情」と「東日本大震災に対処する必要性」があるとの立法理由を鵜呑みにして、合憲判断をなした点で重大な誤りを犯したものである。
 さらに、ILOが本件に強い関心を示しているにもかかわらず、判決は、本件給与減額が、ILO87号条約(結社の自由及び団結権保護条約)、98号条約(団結権及び団体交渉権条約)に違反することについては、全く無視した。
 また、判決は、就業規則による労働条件の不利益変更法理について、公務員であるとの理由だけで、その適用あるいは準用を一切否定した。
 そのうえ、判決は、人事院勧告を経ない給与減額について、労働組合との交渉の義務を否定した。そればかりか、政府と国公労連との不誠実な交渉の内容に立ち入らず、交渉の回数のみを取り上げて交渉が尽くされたとし、原告らの主張をことごとく退けた。
 判決は、憲法・法律の解釈と事実認定を誤り、国家公務員労働者を事実上無権利状態におくことを容認するものであって、絶対に容認できない。
 
 賃下げ違憲訴訟を提起した結果、賃下げ措置は延長されることなく2年間で終結した。しかし、国家公務員給与の「総合的見直し」など、賃金の実質的切り下げを企図している。
 国公労連は、この間支援いただいた多くの労働者・国民の皆さんに心より感謝の意を表する。同時に、全ての労働者の権利擁護、賃上げと安定した雇用の確保など、憲法にもとづく基本的人権の保障をめざし、いっそう奮闘する決意を表明するものである。
 
2016年12月5日
国公労連「公務員賃下げ違憲訴訟」闘争本部
同弁護団
 
以上



資料:3286 16-12-05 添付判決要旨20161205.pdf