司法判断で初めて分限免職取消判決
6月29日、社保庁分限免職取消訴訟の東京事案の判決が東京地裁(清水響裁判長)であり、司法段階で初めて分限免職取消の判決が出されました。判決は原告3人のうち1人を社会保険庁長官の分限回避努力義務違反として取り消し、2名を請求棄却とする判決でした。判決言い渡し後、裁判所前で待ち構える支援者の前で、三澤弁護士と大門全厚生中執が「一部勝訴」の旗を出すと、支援者から大きな歓声が上がりました。
今なお残る「社保庁バッシング」に風穴
判決後、開かれた報告集会で尾林弁護士
(写真左)は「全国の初めて1人だけだが勝訴判決を勝ち取った。2009年からたたかってきた原告・弁護団の成果だ。相川さんが取り消しになった理由は、当初から正規職員を強く希望し、その事実を社保庁は認識しており、日本年金機構発足時に正規職員が381名も欠員があったにもかかわらず、正規職員を募集するように機構設立委員会に対して要請しなかったのは、分限免職回避努力義務違反として処分を取り消した。他の2人については、懲戒処分歴があり年金機構職員に懲戒処分歴があれば採用されないため請求棄却となった」と報告しました。また「各地の裁判でも裁判官の中に社保庁バッシングがあるが、今回、裁判官が勇気を持って判断した意義は大変大きい」として、各地の裁判に与える影響は大きいと報告しました。
支援にかけつけた東京国公の植松さんは、「一部勝訴は大きな勝利だと思う。これからは厚労省に自主的な解決を求めることが必要。IBMとJALマタハラ裁判は和解解決した。最後までたたかうとは悲壮感が漂って使いたくないが勝利的に解決するまで最後までたたかう」と力強い激励がありました。
JAL原告団の小栗さんは、「一部だが風穴を開けたことを嬉しく思っている。マタハラ裁判は妊娠しても地上勤務ができるように2年間頑張ってたたかい、昨日、勝利和解した。和解は原告が望んだ120%の内容。みなさんの支援があったからでお礼を申し上げる。JALのたたかいも最高裁で不当労働行為が断罪されている。みなさんと同じように風穴を開けていきたい」と激励と決意が述べられました。
IBM原告の橋本さんは「ロックアウト解雇3次原告で4月に全労連などの支援を受け勝利和解となった。2名は職場復帰、2名は金銭解決で和解した。相川さんは本当に良かった。わたしは松本さんと鶴田さんに寄り添いたい。まだまだたたかいは続く。裁判所がいつも正しい判断とは限らない。今回2名は残念だが、悔いのないよう引き続きがんばってもらいたい」と激励しました。
秋田県労連の越後屋事務局長は「今日の判決は風穴を開けた。仙台の4人の原告勝利に向けて、さらに奮闘していきたい」愛媛県労連の竹下事務局長は「一部勝訴だが、きっかけがつくれた。高松高裁でも、厚労省の欠員を活用すれば回避できたのではと追及している。今日の判決は、愛媛でも活かせる部分があると感じた。判決内容について学習し原動力にしていきたい」と決意がそれぞれ述べられました。その他、年金者組合の増子さんから、年金裁判とともに奮闘する決意が、中部闘争団の磯貝さんからは愛知事案の控訴審が大法廷で9月に開かれることが報告されました。
全国から原告も駆けつけ今回の判決をも守りました。京都原告の川口さんは、「国を相手取っての裁判は本当に難しいと実感している中で、今回の判決を聞いて鳥肌が立った。回を重ねるごとに分析していけば、矛盾がどんどん大きくなっていく。引き続き手を緩めず頑張っていきたい」広島原告の平本さんは、「2名に対しての不当判決について、政治の介入問題や公務員の身分保障などについて、裁判所には踏み込んで判断して欲しかった。年金制度について国民の信頼を取り戻すと言っているが、裁判とどう関係があるかわからない。広島でも一部勝訴を機に全ての勝訴を勝ち取っていきたい」愛媛原告の「今日の判決結果を他の原告に送ったら、張り合いが出た頑張ると返信があった。これからも頑張れるという気持ちが湧き上がってきた。糧にして引き続き頑張っていく」とそれぞれ決意を述べました。
報告集会と並行して記者会見に臨んでいた相川さんをはじめ弁護団が会場に到着し、分限免職処分の取消判決を勝ち取った相川さん
(写真右)は、「みなさんの希望になればと思う。体調を整えて頑張っていきたい。これからも応援よろしくお願いします」とお礼と、引き続きの奮闘を誓いました。
記者会見を行った中川弁護士は「相川さんを担当した。相川さんは、機構の正規職員を希望していた。理由は、准職員は最大7年の有期のため断った。機構は欠員もあったのに追加募集を行わず、社保庁は依頼もしなかった。このことが今回の勝因となった」と報告しました。また、加藤弁護士は「記者会見には多くの記者が参加した。これまで全国で22人の原告の請求が棄却されてきた。今日、1人だが突破することができた。2人は請求棄却だが、政治的責任に過ぎないと逃げる判決。しかし裁判所でも解雇は間違っていたと1人判断したことは、こちらはたった1人だが、国としては大変なこと。絶対に負けないというつもりで臨んできており大変な事態になっていると思う」と述べました。岡村弁護士、萩尾弁護士も今回の判決を評価し引き続き奮闘していくと力強く挨拶いました。
残念ながら、棄却判決をうけた原告の鶴田
(写真左の右)さんは、「判決は予想していたが言葉が見つからない。残念な気持ち。支援にお礼を申し上げる。今はこれだけ」と述べました。また、松本
(写真左の左)さんは「相川さんおめでとう。厚労省の無責任が一つ証明された。処分取り消しを勝ち取った相川さんを早く職場に戻し、残った原告も勝訴するように奮闘したい」とお礼と決意を述べました。
閉会のあいさつを行った山本全厚生委員長は「大きな力を添えていただいてありがとう。ここから新たにスタートしたい。次は仙台の判決。ここでも勝って原告らを職場に戻したい。厚労省は京都などの判決で厚労大臣にも分限回避の責任があったとされたことにショックを受けていたが、今回は大大大大ショックだと思う。勝利を確信に、引続く支援をお願いしたい」と引き続きの支援を訴え団結ガンバロウで報告集会を終えました。
閉会の前には、東京歌声協議会の大熊さんと全厚生闘争団で「ヒューマンライツ」「はな」を合唱し、会場が一体となりました。
国と裁判所は使命を果たせ
判決前に東京地裁前で判決前宣伝行動を行い約100人が参加しました。
主催者あいさつした国公労連の秋山副委員長は、「本日、東京事案の判決が出される。分限免職された経験豊富なベテラン職員の職場復帰を勝ち取り、安定した雇用・誰もが安心して働ける社会をつくろう」と述べ、全労連の野村副議長が「いまの政治は酷すぎる。旧社保庁職員の不当解雇を許さず、勝利にむけて奮闘しょう」と連帯あいさつしました。
続いて、弁護団を代表して萩尾弁護士は、「森友・加計学園疑惑で行政の私物化が社会問題になっている。社保庁を解体し大量に分限免職させたのは、年金問題を職員に責任を押しつけた『政治介入』が本質ではないか。憲法尊重擁護義務を負い、全体の奉仕者である公務員が公平・公正に業務を遂行するためにも、国と裁判所は使命を果たしてほしい。裁判勝利のために全力でたたかおう」と呼びかけました。
原告団からの決意表明として、松本原告が「私は政府に年金問題の冤罪を押しつけられ、無実の罪でクビを切られた。『政治のパワハラ』を許さず、働く権利を守るためにも、清水裁判長は公正な判決を出してほしい」と力強く訴え、鶴田原告は「多くの支援のみなさんのおかげでここまできた。真っ白な気持ちで判決を迎える。支援に感謝したい」と述べました。
その後、参加者全員で東京地裁にむかってシュプレヒコールをぶつけ、原告と弁護団を送り出しました。
以 上