森友・加計疑惑隠しの大義なき解散は、権力の私物化に他ならない
――悪政に終止符を打ち、憲法をいかした国民本位の政治への転換をめざそう(談話)

【とりくみ:談話・声明等】2017-09-28
2017年9月28日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
書記長 鎌田 一
 
1、安倍首相は、本日(28日)午後に召集された臨時国会の冒頭に衆議院を解散した。
 野党が憲法53条(※)にもとづいて要求していた臨時国会の召集を3ヶ月も放置しながら、ようやく開かれた臨時国会の冒頭で解散したことは、首相自身が国会での森友・加計疑惑に対する追及を恐れ、追い込まれた挙げ句の暴挙である。そして、野党の虚を突くことで選挙戦を乗り切って、自らの不都合を精算するとともに、揺らいだ政権基盤を立て直して、政権の座に恋々としがみつかんとする身勝手な解散であり、憲法無視の権力の私物化に他ならない。
 
 安倍首相は、解散の理由として、①生産性革命と人づくり革命を二大改革と位置づけ、再来年の消費税率10%への引き上げによる財源の使途を借金返済から子育てや介護などの財源に変更すること、②北朝鮮問題への対応方針として「対話」ではなく「あらゆる手段による圧力を最大限まで高めていく」ことの2点で国民の信を問うとしている。
 しかし、消費税率の引き上げは、家計を圧迫して景気後退の引き金となることから、国民に根強い反対があり、その増税を前提とすること自体が問題である。新たな使途として高等教育無償化などを打ち出しているが、従前から野党が主張していた課題であり、与党内での議論も経ずに、いきなり解散理由としたことも不可解である。こうした施策は、解散によらなくとも国政の場で議論を重ねてその方向性を模索することが可能であり、それが民主主義の基本である。それにもかかわらず、首相が「選挙は民主主義における最大の論戦の場」などと論理をすり替えたことは、国会軽視もはなはだしく、明らかに真の争点を隠すねらいがある。北朝鮮への対応にいたっては、政治空白を作ってまで国民に信を問うという理屈は、もはや意味不明である。国際世論は対話の継続であり、強硬姿勢のアメリカ・トランプ大統領の尻馬に乗って、対話の放棄と圧力について信を問うことは、アメリカの戦争に追随する際の免罪符とする意図が透けて見える。
 
2、解散の真のねらいは、25日の解散説明会見でまったく首相が言及しなかった9条改憲にあることは疑いようがない。これまでの国政選挙でも争点をそらして、選挙後、数の力を背景に、特定秘密保護法、戦争法、共謀罪法などの憲法違反の悪法を次々と強行成立させてきたが、これは、安倍政権の常套手段である。選挙で勝てば何をしても構わないという安倍政権の立憲主義を無視した不遜な態度をもう許すことはできない。
 
 仮に与党が選挙で勝利したならば、これまでの5年間の悪政をさらに4年間継続を許すとともに、9条改憲で戦争できる国を完成させる権限と時間を与えることとなる。
 したがって、今回の総選挙の争点は、悪政に終止符を打ち、国民本位の政治に転換させることにある。
 
3、虚を突かれた野党の離合集散の動きがとりざたされているように、不意打ちの解散は、国民を惑わせて選択を困難とさせる不公正な側面がある。それに惑わされないことが重要であり、そのためには、各政党・候補者の政策を吟味するとともに、過去の立ち振る舞いも重要な判断要素となりうる。特に憲法9条に対する姿勢は、大きな指標となる。それは、選挙結果如何で改憲勢力による政界再編なども視野に入れておく必要があるからである。
 また、9条改憲に反対する市民連合等の役割も重要である。政権を本気で変えるためには、野党共闘を推進することが最も効果的で合理的であることは、先の参議院選挙や首長選挙でも明らかである。その野党共闘を広げる力は、連帯の力であり、幅広い市民との共同を推進していかなければならない。
 
4、総選挙は、公務員労働者にとっても重要な節目となる。
 憲法は、国家公務員にとって存在意義そのものである。そのため、憲法99条で「すべての公務員は憲法尊重・擁護の義務を負う」とされているのであり、今回の選挙ではそのことが問われている。また、「政策決定が歪められた」と指摘されている森友・加計疑惑は、憲法で規定された「全体の奉仕者」として公正・中立性を旨とする公務員制度の根幹が問われており、徹底究明のためには選挙結果が大きく影響する。
 さらに、選挙の帰趨は、公務・公共サービスの有り様に大きく影響するとともに、労働条件法定主義のもとで処遇に直結することから、総選挙は公務員労働者にとって極めて重要な意義を持つ。
 
5、国公労連は、今回の総選挙で国民本位の政治に転換させることをめざし、憲法をくらしと行財政・司法にいかすために奮闘する決意である。そして、早期に臨時国会を開かせて、森友・加計疑惑を徹底究明するとともに、公務・公共サービスの拡充とそのための体制確保、給与改善勧告の早期実施などの要求実現を求める。そのため、改憲阻止や労働法制改悪阻止などの一致した要求での幅広い市民との連帯や市民と野党との共同のとりくみをともに推進しようではないか。
 そしてすべての組合員に、政治的無関心に陥るのではなく、自らの生活と権利や要求に照らした選択を行い、投票権の行使、憲法で保障された政治活動への積極的な参加を呼びかけるものである。
 
【※】第53条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。