退職手当の一方的引き下げは許されない
――給与法・退職手当法「改正」法案の閣議決定にあたって(声明)

【とりくみ:談話・声明等】2017-11-17
2017年11月17日
日本国家公務員労働組合連合会
第1回中央闘争委員会
 
 政府は本日(11月17日)、第2回給与関係閣僚会議を開き、本年の人事院勧告の取扱いについて、勧告どおりに完全実施するとともに、国家公務員の退職手当について、平均で78.1万円削減する方針を決定した。その後の閣議で、給与法「改正」法案と退職手当法「改正」法案を決定した。
 
 国公労連は、人事院勧告について、①要求に及ばない低額の給与改定であること、②「給与制度の総合的見直し」の経過措置である現給保障を受けている職員の多くが賃金改善に結びつかないこと、③現給保障の仕組みにより生じた給与改定原資を本府省業務調整手当の改善に再配分したこと、④経過措置終了にともなう賃下げ回避措置を講ずることなく「給与制度の総合的見直し」を完成させること、などの問題点を指摘するとともに、4年連続の月例給と一時金の改善であり、改善部分の早期実施を求めてきた。
 政府の対応は、国公労連が強く求めてきた賃下げ回避措置を顧みないもので大変不満である。他方で、改善部分の早期実施は組合員の切実な要求であり、今特別国会で、年内支給にむけた政府の対応は当然である。引き続き、政府・人事院に対して、賃下げ回避措置の確立、給与の地域間格差の解消と高齢層職員の職務に見合った賃金水準の確保を求めていく。
 
 退職手当の「見直し」について国公労連は、①労働条件にふさわしく労働組合との合意を前提とすること、②支給水準は公務の特殊性を踏まえたものとすること、③「見直し」のルールも労働組合との合意をすべきであり、安定した制度とすること、などを要求書にまとめ政府に対応を求めてきた。
 しかし政府の最終方針は、①人事院の調査結果及び見解のとおりに引き下げる、②引き下げは退職手当の調整額には手をつけずに基本額の調整率(退職手当法附則第21-23項。現行87/100を83.7/100に引き下げ。国公労連試算で平均78.5万円減額)で対応する、③来年1月1日実施(経過措置なし)とするとしている。これらは、国公労連の指摘を一顧だにしない一方的な改悪であり、政府の対応に厳重に抗議するものである。
 
 改めて指摘するが、国家公務員の退職手当は、最高裁判例(1978年小倉電話局事件)でも賃金の後払いであるとされており、明らかに労働条件であるにもかかわらず、政府は「長期勤続報償の要素が強い」などと労働条件であることを認めようとはせずに、一方的に不利益変更することは、労働法理を無視するとともに、労働基本権が制約された公務労働者の権利を侵害するものである。
 また、退職手当法に「情勢適応の原則」が規定されていないのは、本来、退職手当のあり方が、現役時代の公正・中立性を確保するための公務の特殊性を踏まえた制度であるからに他ならない。しかし、政府が「見直し」の根拠としている「国家公務員の総人件費に関する基本方針」(2014年7月25日閣議決定)では、「官民均衡の確保」を唯一のルールとしていることが問題である。このルールも労働組合の意見を踏まえずに一方的に決めたもので権利の侵害にあたる。官民比較の方法についても、不透明な人事院の調査結果のみに依拠した極めて不安定な制度であり、公務労働者の生涯設計を困難とし、個々の職員の期待権や請求権を踏みにじるものである。そのため国公労連は、政府に対して公務の特殊性を踏まえた「見直し」のルール作りが必要であることを重ねて主張してきた。
 
 しかし政府は、国公労連の要求に応じて交渉の回数は重ねたものの、結果として今回もアリバイづくりの対応であった。事実、組合員の要求を背景とした国公労連の主張にまともに応えることはなく、当初から引き下げありきの姿勢を崩すことはなかった。また政府は、最終方針について決定の直前に労働組合に伝えたことも不誠実であり、方針決定と同日の法案を提出するという対応も問題である。しかも、不利益変更であるにもかかわらず、経過措置も一切設けずに来年1月1日実施という拙速かつ乱暴な対応は、公務労働者の権利を踏みにじると同時に、長年公務運営に貢献してきた職員にペナルティーを科すに等しく、「長期勤続の報償」と主張してきた政府の姿勢がいかに皮相的であったかを如実に現している。
 
 退職手当改悪阻止のたたかいの舞台が国会に移ったが、国公労連は、組合員の利益と権利を守るために、改悪法案の廃案にむけて国会段階でのたたかいに力を尽くす決意である。また、公務労働者の権利侵害について政府に厳重に抗議するとともに、日本政府の不当な対応について、国際社会への働きかけを行うなど、公務労働者の労働基本権の完全回復に向けて全力をあげる。