一審判決をなぞっただけの不当判決に抗議する
――社会保険庁不当解雇撤回闘争・愛知事案高裁判決にあたって(談話)

【とりくみ:談話・声明等】2018-07-05
2018年7月5日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
書記長 鎌田 一
 
 名古屋高等裁判所民事第3部(裁判長揖斐潔)は本日、社会保険庁分限免職処分取消等請求事件(社会保険庁不当解雇撤回闘争・愛知事案)について、控訴をすべて棄却するという不当判決を行った。しかも判決は、事実及び理由の記述がわずかA4・6ページ足らずで、ほぼ原判決(一審判決)の「記載のとおり」として棄却したもので、原告の控訴理由をまったく無視した判決に対して厳重に抗議するものである。
 
 社会保険庁の解体は、年金に対する国民の不信を社会保険庁職員に転嫁した政治の圧力のもとで国策として強行され、政府・厚生労働省は、十分な分限免職回避努力を尽くさなかったことは明らかである。原告に何の責任もないにもかかわらず、一方的に解雇されたもので、本件は分限処分に名を借りた不当解雇以外の何物でもない。しかも原告の1人は育児休業中の解雇である。解雇権の濫用は、労働契約法できわめて厳しい制限が加えられているが、判決は、それさえもまったく考慮せずに、国による解雇権の濫用を容認した不当な判決である。
 
 国家公務員法第78条4号の「官制(行政組織)若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職」による免職は、極めて慎重に運用され、社会保険庁事案までは、省庁間配置転換などの国を挙げた免職回避措置が講じられてきた。したがって、分限免職回避の責任は、当然国にある。しかし、一審判決では、国の責任について「国までもが分限回避義務を負うべき主体になるというのは飛躍に過ぎる」「任命権者にとどまるのが原則」などと矮小化し、厚生労働大臣の分限免職義務を認めたものの、国の義務は認めなかった。本日の判決は、それを踏襲する不当なものである。
 
 こうした判決は、公務員の身分保障を形骸化させると同時に、公務員というだけで憲法で保障された労働者としての権利を奪われるに等しいもので、到底容認できるものではない。
 
 不当解雇撤回を求める裁判は、現在、広島事案が最高裁に上告、秋田・東京・愛媛事案が控訴審段階でのたたかいを展開している。国公労連は、全厚生闘争団を全面的に支援して、不当解雇撤回をめさす裁判闘争の完全勝利をめざすとともに、国と厚生労働省に不当解雇の即時撤回と全員の雇用保障を求めるなど早期解決にむけて全力をあげる決意である。