2018年9月20日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)書記長 九後健治
全厚生労働組合(全厚生)書記長 川名健
東京高等裁判所第17民事部(川神裕裁判長)は9月19日、社会保険庁分限免職処分取消等請求控訴事件(社保庁不当解雇撤回裁判・東京事案)について、一審原告3名すべての控訴および請求を棄却する不当判決(以下、「本判決」という)を行った。昨年6月19日に言い渡された東京地裁(原審)判決では、原告のうち1名に対する分限免職処分について、分限免職回避努力が不十分だったとしてこれを取り消す旨の画期的判断が示されたが、本判決はこの判断部分を形式論で覆す極めて不当なものであり、厳重に抗議する。
そもそもこの事件の本質は、政府・与党による社保庁職員への報復として断行された「政治のパワハラ」という点にある。すなわち、2004年に国会議員の年金未納問題が発覚し、この年の参院選挙で大敗した自民党が、個人情報を「閲覧」したとされる職員に対する大量の懲戒処分を強要したうえ、2008年には自民党ワーキンググループの強い要請により、懲戒処分歴のある職員を一律に不採用とする閣議決定を行った。このような強い政治的介入の下で、年金問題の責任を末端職員に転嫁するかたちで断行されたのが本件分限免職処分なのである。
本件分限免職処分は、本判決も述べているように「被処分者に何ら責められるべき事由がない」ものであるにもかかわらず、政治的圧力を背景に、国による十分な分限免職回避努力を尽くさずになされたものであって、その不当性は明白である。
本判決は、上記閣議決定の際に政治的関与があったことについて、「議院内閣制の下においては、内閣の政策決定過程に多数派である与党が関与すること自体は当然想定されているから、与党の関与の結果決定された政策が、関係する法律の趣旨に反し、または委任の範囲を超えない限り、違法性の問題は生じない」としている。しかし、一民間法人である年金機構における職員の採用・雇用の問題について、「報復」を背景とする政治的圧力により与党が関与したことは、正当な政策決定であるとは到底いえず、むしろ行政を私物化するものであり、断じて許されないものと言わざるを得ない。
社保庁職員の不当解雇撤回を求める裁判は、現在、広島と愛知の両事案が最高裁に上告、愛媛・秋田事案が控訴審でのたたかいを展開している。国公労連・全厚生は、すべての事案での勝利をめざすとともに、国と厚生労働省に不当解雇の即時撤回と雇用保障等による全面解決を求めて全力を尽くす決意である。
以 上