外国人労働者の権利保障とそれにふさわしい行政体制の確立を求める
――出入国管理法「改正」の強行採決にあたって(談話)

【とりくみ:談話・声明等】2018-12-10
2018年12月10日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
書記長  九後 健治
 
 与党は、多くの労働者・国民の反対を顧みず、12月8日未明に外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理及び難民認定法の「改正」を強行採決した。国公労連は、外国人労働者の人権確保策をないがしろにしたまま、議論を尽くさず法律を強行採決したことに断固抗議する。
 
 法律には外国人の受け入れ産業分野や受け入れ見込み人数、求められる技能の水準などの具体的運用について法律に盛り込まず、政令等で定めるとしていることなど、強行採決で通してしまえば、中身は政府がどうにでもできる枠組みとなっている。さらに、制度の土台となる外国人技能実習制度における問題があるにもかかわらず、人手不足対策を口実に、まともな審議も行わないまま衆参合わせてわずか40時間足らずという短時間で強行採決した。このことは、先の通常国会における、森友・加計問題での文書改ざんや労働基準法「改正」に関わるデータの不適切使用なども含め、国民の国会に対する不審を増大させるとともに、およそ民主的とは言えないプロセスを経てつくられた政策を現場第一線で実施しなければならない国家公務員労働者の働きがいを奪うものに他ならない。
 
 加えて、この間の国会審議でも明らかなとおり、外国人技能実習生は送り出しにあたって悪質なブローカーに高額の手数料を徴収されたうえ、日本で働くにあたっても無権利状態に置かれている。実習生の管理団体や実施機関では、賃金の不払いをはじめとした労働基準関係法令違反や、暴行・脅迫・監禁、パスポートの取り上げなどが横行し、「奴隷制度」と揶揄されるほどの深刻な実態があるにも関わらず、その具体的解決策は全く示されていない。他方、外国人労働者の人権保障を担うべき行政の体制はきわめて不十分と言わざるを得ない。2018年7月に閣議決定された「外国人の受入れ環境の整備に関する業務の基本方針について」では、法務省が司令塔的機能を持ち外国人の受入れ環境の整備を効果的・効率的に進めるとし、来年度に向けての概算要求では入国管理庁の新設を要求している。しかし、その主たる業務は出入国・在留の管理であり、外国人労働者の人権保障が危惧される。また、関係府省と位置づけられている厚生労働省は「ハローワークにおける雇用管理体制の強化」としてわずか108名の増員要求を行ったにとどまっている。その他関係府省と位置づけられている、総務省、外務省、文科省の要求においても外国人労働者の人権を保障するという姿勢は見えてこない。
 
 こうした状況のまま、人手不足を口実に外国人労働者の受け入れを拙速に進めようとしている背景には、安価な労働力を調達したいという財界・使用者の思惑が透けて見える。人手不足が深刻になっている背景には、日本人労働者にとっても「ブラック」と言われる働き方を押し付けられたり、健康で文化的な生活を営むにふさわしい賃金水準が保障されていないことがあることは明らかであり、外国人労働者受け入れを議論する前に解決しなければならない課題である。また、無権利状態に置かれる外国人労働者が増加すれば、日本人労働者の労働条件に悪影響を与えることは想像に難くない。
 
 国公労連は、国籍を問わず日本で暮らし働く人たちに日本国憲法に定められた基本的人権が保障されること、そしてそれを担保するための行政体制と予算の拡充を求めるとともに、民主的な国会運営を強く求めるものである。