一審判決から一歩もでない不当判決に抗議する
――社会保険庁不当解雇撤回闘争・愛媛事案の高裁判決にあたって(談話)

【とりくみ:談話・声明等】2018-12-18
2018年12月18日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
書記長 九 後 健 治
 
 高松高等裁判所第4部(裁判長石原雅也)は昨日、社会保険庁分限免職処分取消等請求事件(社会保険庁不当解雇撤回闘争・愛媛事案)について、控訴をすべて棄却するという不当判決を行った。しかも、原判決
(一審判決)を一部補正のうえで原判決の「記載のとおり」として棄却したもので、原告の控訴理由をまったく無視した判決に対して断固抗議するものである。同時に、高裁審理において厚生労働省から年金機構への147人の出向者の定員枠とともに、厚生労働省に多数の欠員が発生していたことを明らかにさせ、その活用が可能であったことを主張・立証したにもかかわらず、厚労大臣の分限免職回避努力義務違反を認めない判決は言語道断である。
 
 社会保険庁の解体は、年金に対する国民の不信を社会保険庁職員に転嫁した政治の圧力のもとで国策として強行されたものであったが、政府・厚生労働省が、分限免職回避努力を十分に尽くさなかったことは明らかである。原告に何の責任もないにもかかわらず、一方的に解雇されたもので、本件は分限処分に名を借りた不当解雇以外の何物でもない。解雇権の濫用は、労働契約法できわめてきびしい制限が加えられているが、判決は、それさえもまったく考慮せずに、国による解雇権の濫用を容認した不当判決である。
 
 国家公務員法第78条4号の「官制(行政組織)若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職」による免職は、この間、極めて慎重に運用され、社会保険庁事案までは、省庁間の配置転換など国をあげた免職回避措置が講じられてきた。したがって、分限免職回避の責任は、当然国にある。しかし、判決は、一審同様に厚労大臣の分限免職回避努力義務は認めたものの、国の責任について「内閣が分限免職回避努力義務を負っていたと解することはできない」と国の義務は認めない不当なものである。
 
 こうした判決は、公務員の身分保障を形骸化させると同時に、公務員というだけで憲法で保障された労働者としての権利を奪われるに等しいもので、到底容認できるものではない。
 
 不当解雇撤回を求める裁判は、現在、広島事案と愛知事案、東京事案が最高裁に上告、秋田事案が控訴審段階でのたたかいを展開している。国公労連は、全厚生闘争団を全面的に支援して、不当解雇撤回をめさす裁判闘争の完全勝利をめざすとともに、国と厚生労働省に不当解雇の即時撤回と全員の雇用保障を求めるなど早期解決にむけて全力をあげる決意である。