司法の役割を投げ捨て、「政治のパワハラ」を黙認した上告棄却に抗議する
――社保庁不当解雇撤回裁判・東京事案の上告棄却にあたって(談話)

【とりくみ:談話・声明等】2019-03-29
2019年3月29日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
書記長  九後 健治
 
1、最高裁判所第一小法廷(裁判長:池上政幸、裁判官:小池裕、木澤克之、山口厚、深山卓也)は3月28日、「分限免職取消等請求事件」(東京事案)について、裁判官全員一致の意見として、①本件上告を棄却する。②本件を上告審として受理しない。③上告費用及び申立費用は上告人兼申立人らの負担とする。との決定を行った。
 最高裁判所は、不当な東京高裁判決を審理を開かずに容認し、不当解雇を不問にするもので、極めて遺憾である。加えて、最高裁判所は決定理由として、①上告については民事訴訟法312条1項又は2項に該当しない(※1参照)、②上告受理申立てについては同318条1項により受理すべきものとは認められない(※2参照)とした。これは、先に上告棄却された京都、広島、愛知と同じ理由であり、社会保険庁職員に対する分限免職の問題点を正面から受け止めず、上告を門前払いとした最高裁判所に厳重に抗議するものである。
 
2、この事件は、2004年に発覚した国会議員の年金未納問題を末端の社会保険庁職員の責任にすり替えたうえ、2008年には自民党の求めに応じて懲戒処分歴のある職員を日本年金機構に採用しないという基本計画を閣議決定し、2009年12月31日付けで525人の分限免職処分を強行した「政治のパワハラ」そのものである。分限免職の非合理制は、25人の分限免職を取り消した人事院判定からも明らかであるとともに、本事件の第一審で、原告のうち1人について分限免職回避努力が不十分だったとする判断が行われた(後に高裁において一審判決は取り消された)ことを鑑みれば、まともな審理も行わず門前払いとしたことは、政府の主張を鵜呑みにし「政治のパワハラ」を黙認したことに他ならず、司法の役割を投げ捨てたものと言わざるを得ない。
 
3、東京事案は、全国7つの事案のうち、唯一地裁段階で一人とはいえ分限免職処分の取り消しを勝ちとったたたかいであった。そのことは全国の仲間を励まし、全国のたたかいを牽引するとともに共闘を広げるなど大きな役割を果たしてきた。これまで、裁判闘争で奮闘されてきた原告と東京事案のたたかいを支えてきていただいた全国の仲間にあらためて敬意を表し感謝を申し上げる。
 しかし、分限免職処分の取消を求めるたたかいはこれで終わらない。愛媛事案は昨年12月に高松高裁での不当判決を受けて最高裁に上告しており、秋田事案は仙台高裁で5月17日に判決が出される。引き続き、政府や内閣に屈することなく、公平・公正な裁判所としての役割を果たすようたたかいをすすめる必要がある。また、裁判闘争と平行して2008年に閣議決定した「日本年金機構の当面の基本計画」を取り消し、年金業務に就くことを希望している元社保庁職員を年金職場に戻すたたかいもすすめなければならない。
 加えて、すべての公務員が時の政権に忖度することや不当な圧力に屈することなく、憲法に規定された「全体の奉仕者」として働くことのできる民主的公務員制度の確立も求められている。国公労連は全厚生の社保庁不当解雇撤回闘争を全面的に支援するとともに、すべての公務員が国民のための公平・公正な行政・司法が行われるよう奮闘するものである。
 
以 上


【※1・上告】
第312条 上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。
2 上告は、次に掲げる事由があることを理由とするときも、することができる。ただし、第4号に掲げる事由については、第34条第2項(第59条において準用する場合を含む。)の規定による追認があったときは、この限りでない。
 一 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
 二 法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
 二の二 日本の裁判所の管轄権の専属に関する規定に違反したこと。
 三 専属管轄に関する規定に違反したこと(第6条第1項各号に定める裁判所が第一審の終局判決をした場合において当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときを除く。)。
 四 法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
 五 口頭弁論の公開の規定に違反したこと。
 六 判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること。
 
【※2・上告受理の申立て】
第318条 上告をすべき裁判所が最高裁判所である場合には、最高裁判所は、原判決に最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件について、申立てにより、決定で、上告審として事件を受理することができる。