政府は7月20日、公共サービス改革基本方針(以下「基本方針」)を閣議決定した。2006年制定の「公共サービス改革法(市場化テスト法)」に基づくもので、2009年以降は毎年ほぼこの時期に改定され、今回が9回目にあたる。今回の改定では対象事業を93増加(計263事業)させるとともに、官民競争入札等監理委員会(以下「監理委員会」)での実施要項案の審議を省き、実施府省等に委ねる「新プロセス」とともに、「業務フロー・コスト分析」の導入により、民間委託の対象拡大がねらわれている。
この間の民間委託の拡大で、不良業者の参入と過当な価格競争により、地元業者の受注機会は減少し、従事する労働者は低賃金で不安定雇用の「官製ワーキングプア」に置かれ、サービス水準の低下や利用者の生命にも関わる重大事故も多く発生している。そうした問題を踏まえない、今回の改定に断固抗議するものである。
今回追加された対象事業は、行政情報ネットワーク関連業務(4府省・38独法の45事業)と公益法人が1者応札等で受注していた39事業が大半を占めているが、その他に総務省関係で地方交付税算定業務(2014年度以降、約5年間)、厚生労働省関係で労働保険加入促進業務(2014年4月から2年間)が選定されたことは看過できない。
地方交付税算定業務の民間委託開始時期は、政府が進める「国の出先機関の原則廃止」と時節が符合することから、「補助金の一括交付金化」の動きとも合わせ、「地域主権改革」との関わりで注視する必要がある。また、労働保険加入促進業務の民間委託は、人員不足のなか労災未加入問題で一定の改善も期待できるが、「業務委託」の性質上、労基署職員と業務従事者との意志疎通に不備が生じることは容易に想像され、各企業を含む個人情報の漏洩や悪用が懸念される。
今回新たに導入された「新プロセス」で、対象事業の実施要項の作成・入札契約が実施府省の主体性に委ねられることは、不良業者の排除やサービス水準の面で一定の改善が期待できる。政府が定めた実施要項の標準例や入札参加者評価基準等が足かせとならないよう、「行政民主化」運動を強めることが求められる。
「業務フロー・コスト分析」は、マンパワーが必要な業務、まさに行政の根幹部分の民間委託化をねらったものといえる。「基本方針」では国の行政機関の努力規定とされる一方、監理委員会からの求めに応じた義務規定も併記されている。「国家公務員総人件費2割削減」をはじめ、政府が国民への悪政押しつけの地ならしとしてすすめる「身を切る改革」の手段とさせないよう、社会保障充実などの国民的要求課題の実現とともに公務・公共サービス拡充の世論を広げる必要がある。
政府は東日本大震災以降、財界などの求めに応じて「構造改革」路線を強行に推進しているが、その一方では、原発再稼働やTPP参加などに反対する国民的な連帯・共同が大きな広がりをつくりだしている。
国公労連は、「構造改革」路線を転換し、国の責任で国民・住民の生命と暮らしの安全・安心を確保するため、社会保障の充実や公務・公共サービスの拡充などを求め、広範な労働組合や国民のみなさんとも共同し奮闘するものである。
以上