検察庁法「改正」案は廃案にし、働きがいの持てる定年延長の実現を(談話)

【私たちの主張:私たちの主張】2020-05-19
2020年5月19日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長  九後 健治
 
 5月18日、安倍内閣は検察庁法「改正」案を含む一括法案の今国会での成立を断念した。法案は継続審議扱いとして秋の臨時国会での成立がもくろまれているが、本来の趣旨であった国家公務員の定年年齢の引き上げと、後付けされた検察官人事への恣意的介入に道を開く「特例定年」とをない交ぜにして議論することこそが問題であり、少なくとも検察庁法「改正」案から「特例定年」条項を削除したうえで法案を分離して議論を行うべきである。とりわけ国家公務員労働者の労働条件に関わる国公法「改正」案は先送りせず、慎重審議を行うよう強く求める。

 年金支給開始年齢が65歳に引き上げられたもとで、政府は定年年齢の段階的引き上げを求めた人事院の「意見の申し出」を無視し、私たちの要求を正面から受け止めることなく、再任用制度の義務化によって雇用と年金の接続をはかることとした。しかし、フルタイム再任用は国家公務員の定員内と位置づけられることから、本人の意に反して短時間勤務の再任用となるケースが多いことや、給与水準はフルタイムでも現役世代の6割程度と設定され、年金支給開始までの生活を支えるには不十分な水準にとどまっていることなど多くの問題を抱えており、定年延長によってその早急な解決が求められている。

 検察官を含む国家公務員は高年齢者雇用安定法の対象ではないが、法律の趣旨である雇用と年金の確実な接続はすべての労働者に保障されるべきものであり、定年延長の実現は当然である。しかし法案の具体的な内容は、①総定員法や総人件費抑制方針の下で「2年に1歳ずつの引き上げ」で行政体制と高齢期雇用の両方が確保できるのか、②俸給月額を7割水準にするとしているが特定の年齢に達したことを理由に引き下げることは職務給原則に反する、③役職定年制の導入により行政運営や人事管理が混乱する可能性が高い、④能力・実績主義強化によって行政を歪め国民の権利や安心・安全を脅かすことにつながりかねないなど、きわめて重大な問題を含んでいる。

 森友・加計問題や桜を見る会疑惑などが解明されない中で、独立性と政治的中立性が求められる検察官の人事に恣意的な介入が可能となる法「改正」を行うことは、政治と行政の私物化に拍車をかけ、国民の権利や生活をないがしろにするものに他ならない。SNSでの批判の広がりをはじめとした世論の高まりによって成立断念に追い込んだことは、この国の民主主義が正常に機能していることの証左でもあり、国公労連としても安倍内閣の横暴を許さず、民主主義擁護、すべての人が自分らしく尊厳を持って生きられる社会をめざし、引き続き幅広い労働者・国民と連帯していっそう奮闘するものである。