政府・内閣人事局に夏季要求書を提出
今年の概算要求をめぐっては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、例年8月に締め切られる概算要求が1カ月延期されて9月末の締め切りになっています。また、人事院勧告をめぐっても、職種別民間給与実態調査が約2カ月遅れで開始(6月29日~7月31日)されました。内容も賞与等の調査を先行して、訪問によらない方法で実施(医療現場については新型コロナウイルス感染症への対処できびしい状況にあることから調査対象に含まない)されています。月例給の調査については、今後の状況をふまえて実施時期等を判断するとされています。しかし、月例給調査は、対面(人)での対応が基本となるため、全国的に新型コロナウイルスへの感染がふたたび拡大しているなかで、実施の見通しがたたない状況です。したがって結果的に調査が実施できないことも想定されます。
こうしたもとで国公労連は7月16日、政府・内閣人事局に対して、非常勤職員を含む公務員の賃金と一時金の改善、増員による行政体制の拡充をはじめとする2021年概算要求にむけた「重点要求書」を提出し、夏季闘争における政府交渉をスタートさせました。(人事院への要求書提出は7月31日)。
コロナ・自然災害の最前線で奮闘する職員の労働条件改善を
九後書記長は要求書提出にあたって、コロナ禍において、日本経済回復のためにも内需拡大が必要であることから「国家公務員を含むすべての労働者の大幅な賃金改善は不可欠」と指摘しました。
また、民間春闘や夏季一時金もきびしい状況にあり、今年の人事院勧告に影響することが想定されるもと、自然災害や感染症対応の最前線で国民の命と生活を支えている国公労働者と職員の奮闘に報いる労働条件改善を求めました。あわせて、この間の「給与構造改革」や「給与制度の総合的見直し」などにより高齢層を中心に賃金が抑制されるとともに、地域間格差が拡大したことによる問題を指摘し、地域間格差の解消と最低賃金を下回る(国公労連試算)地域が年々増加している初任給水準の抜本改善を求めました。
非常勤職員制度の抜本改善については、大企業では正規社員と非正規社員との諸手当など労働条件における不合理な格差が4月から禁止されていることをふまえて、職場からの要求の強い病気休暇の有給化をはじめ、不合理な格差の完全解消にむけて関係機関への働きかけも含めて対応するよう求めました。さらに、非常勤職員の最も強い要求である雇用について、安定した公共サービスを提供するためにも恒常的・専門的・継続的業務に従事する非常勤職員の常勤化・定員化、少なくとも、労働契約法で定められている無期転換権の公務職場への適用を求めるとともに、人権や健康はもとより、行政運営に否定的な影響を及ぼしている更新にかかる公募要件の撤廃を求めました。
コロナ対応等で要員不足明らか増員による行政体制拡充を
今般の自然災害や感染症対応で行政組織や公務員そのものの不足がいっそう鮮明となっていることを指摘し、増員による行政体制の拡充とその障壁となる総人件費抑制政策をあらため、総定員法廃止、定員合理化計画の中止・撤回を強く求めました。
くわえて、慢性的な長時間労働の是正をはじめ、雇用と年金の確実な接続のための定年年齢の引き上げ、能力・実績主義の強化は行わないこと、希望者全員のフルタイム再任用の確保、非常勤職員の無期雇用化、障がい者雇用、両立支援制度を活用できる職場、ハラスメントのない職場など、誰もが安心して働くことができる環境を整備するとともに、政府の定員管理のあり方をただちに見直すことを要求しました。このほかにも、民主的な公務員制度と労働基本権の確立などを追及しました。
最後に、新型コロナウイルス感染者が東京をはじめ全国的に拡大傾向にあるなかで、感染の不安を抱えながら職員は業務に従事しており、使用者として、新型コロナ対策としてのマスクや手指の衛生確保のための消毒薬の常備や、窓口業務での飛沫感染対策や三密回避、ソーシャル・ディスタンスの確保など、徹底した感染防止対策を講じることを求めました。
今年は新型コロナウイルス感染症の影響で夏季闘争の日程もイレギュラーな形となっています。いま、全労連公務部会が提起した「公務・公共サービス、教育の拡充を求める署名」(政府あて)、「公務労働者の賃金・労働条件の改善を求める署名」(人事院あて)を職場の声として積み上げ、追及を強めることが重要です。署名は9月3日に実施する全労連公務部会独自行動で提出します。今夏も様々な課題が山積していますが、組合員の切実な要求の実現にむけて、職場と地域からのいっそうの奮闘を呼びかけます。
【政府】分限処分の厳格化を通知
恣意的な運用されないよう監視強化を
政府・内閣人事局は7月20日に「勤務成績が不良な職員に対する対応について(通知)」(内閣官房内閣人事局人事政策統括官)を発出しました。
この通知は、人事院が「定年延長にかかる意見の申出(2018年)」や公務員人事管理に関する報告で能力・実績にもとづく人事管理の徹底・推進に言及していたことにくわえて、自民党行革推進本部公務員制度改革チームが7月2日にだした提言をふまえたものです。その内容は、これまでD評価の職員のみを分限処分の対象として制度運用されてきたものを、C評価が連続する場合に、能力・実績主義に則り、公務能率の維持・改善の観点から、成績不良者の職務能率の向上を目的とする「改善措置」を講じたうえで、それでも改善が見られない職員については分限、降任等を行うとしたものです。
この分限処分の厳格化のベースとなるのは、「数値目標だけが重視される」「人材育成の視点がほとんどない」「評価基準が曖昧で公正・客観的な評価ができない」「上司の顔色ばかり気にするようになる」「そうした評価結果が直接給与や処遇に反映される」など、数多くの問題点が指摘されている「人事評価制度」です。人事評価を行うのであれば、人材育成や職員の働き甲斐に結びつくものでなければならず、短期の評価結果を直接給与に反映させる仕組みはあらためなければなりません。
国公労連は、こうした「人事評価」を用いた分限処分の厳格化に反対し、撤回を求めてきました。7月9日には各単組書記長が参加する交渉を配置して、政府・内閣人事局に対して職場における「人事評価制度」や分限処分の厳格化の問題点を指摘しました。7月16日には、前回の交渉をふまえて最終的な交渉を配置し、あらためて撤回を求めましたが、政府・内閣人事局が通知を強行する結果となりました。
これから、職場でこの通知にもとづいて分限処分の厳格化が行われることになります。いまでも、現場では「人事評価」がしっかり運用されていない状況があるなかで、「人事評価」と分限処分の厳格化による恣意的な運用がなされないように職場で監視を強めていく必要があります。また、この厳格化のベースとなる「人事評価制度」を労働組合との真摯な協議をふまえて抜本的に改善させていくことが必要です。職場からの監視と追及を強めていきましょう。