国公労新聞2020年8月25日号(第1549号)

【データ・資料:国公労新聞】2020-08-25
国公労働者平和の集いオンラインでひらく
平和あってこそ働き暮らせる

 国公労連は8月6日、広島への原爆投下日にあわせて国公労働者平和の集いをオンラインで開催しました。例年は、原水爆禁止世界大会のメイン会場で実施してきましたが、今年は新型コロナウイルス感染症の影響により、原水爆禁止世界大会がオンライン開催となったことから、この集いもオンラインでの開催となりました。集いには約30の端末を通じて単組や県国公の仲間が参加しましたが、画面の向こうでは複数人で視聴している組織もありました。
 国公労連の伊吹組織部長が主催者挨拶を行い、国公労連の森中央執行委員が情勢を報告しました。情勢に関わっては、残り10カ国の批准で条約が発効することや(その後さらに4カ国が批准し、8月19日現在では残り6カ国の批准で発効)、今年の原水爆禁止世界大会の開催状況、集いの当日に開かれていた広島の平和祈念式典での政府の姿勢などについて報告。学習企画では、1歳の時に広島で被爆し、その後長野県や全国での核兵器廃絶運動で活躍されている藤森俊希さんの被ばく証言や活動についてわかりやすくまとめたDVD「藤森俊希の伝言~きのこ雲の下、僕は1歳だった。~」を視聴しました。このDVDはこれまでの核兵器禁止条約に関する経過等も収録されており、被ばくの実相とこれまでの情勢を学べるとても分かりやすいものでした。

広島県国公 被爆者援護を
 とりくみの交流では、広島県国公の藤川事務局長と愛知国公の丹羽事務局長が発言しました。藤川事務局長は7月29日に広島地裁で勝利判決が言い渡された「黒い雨訴訟」について発言し、政府が控訴しないこととあわせて、75年の時を経ても健康被害に苦しむ被爆者の運動が今なお続いていると訴えました(本件訴訟は12日に控訴され、今後は広島高裁で審理されることになります)。

愛知国公 自治体当局と懇談
 愛知国公の丹羽事務局長は、自治労連の自治体キャラバンに同行し、愛知県下の各自治体を廻って自治体当局と懇談を行った愛知国公のとりくみについて、「平和教育の予算強化の要請では、自治体の中には何千万もつけて平和関連予算を中学生全員が広島や沖縄で学習する自治体も。今年は世界大会や平和行進が中止となってしまったが、今後もコロナ禍でもできることを行っていく」と発言しました。
 最後に国公労連の大門中執が今後のとりくみ方針やその具体的行動を提起しました。
 参加者のオンラインアンケートでは、DVDについて「核兵器廃絶運動の強化の必要性を再認識した」「日々一歩ずつ、短くもあきらめずに前進することの大切さを教えてくれた」「本日のDVDを組合員、特に青年組合員にむけての平和学習材料に活用していきたい」といった感想が寄せられました。また、核兵器廃絶や平和への思いについて「平和があってこそ安心して働き暮らせるということを広めていきたい」「唯一の被爆国、日本に生まれて日本人として平和の大切さ、命の尊さをしっかり守りたい」「戦争を体験した方に直接話を聞き、それを後世に語り継ぎ、戦争をしないさせない世界を作ることが我々の使命だし、我々の世代にしかできない重要な任務である」といったメッセージが寄せられました。
 今回の集いは、オンライン開催によって気軽に参加できたとの声も寄せられており、コロナ禍で多数が参加する集会はできなくても、多くの仲間に平和のとりくみを知ってもらい、運動を広げていくきっかけとなりました。


 

コロナ禍で奮闘する職員の生活改善
非常勤職員の雇用安定と均等・均衡待遇を


非常勤職員 病休の有給休暇無期転換を
 国公労連は8月7日、「非常勤職員制度の抜本改善にむけた重点要求書」にもとづく、内閣人事局・人事院交渉を実施しました。交渉には、近隣県から参加の非常勤組合員4人を含めて、14人が参加し、当事者を中心に職場の実態や非常勤職員の雇用の安定と均等・均衡待遇を訴えました。
 非常勤職員制度では雇用の安定が重要な課題となっています。交渉でも更新にかかる「3年公募」にかかる発言が多くありました。参加者からは、「新型コロナの影響により職業相談一般部門などの窓口がひっ迫している。窓口では、国の現状に対する不満が非常勤職員にぶつけられ、怒鳴られるなどの危険な状況もある。そのような職場で、非常勤職員が1年更新で3年ごとに公募にかけられるという制度運用は理不尽である」「このきびしい状況下で仕事をしている私たちを、これ以上不安に陥れないでほしい」「民間では無期転換が制度化されている。ハローワークはどの部門も専門性が高いが、特に専門援助部門は高度な専門性を要する。安心して働ける職場にするため、少なくとも3年公募要件は廃止し、無期転換制度の導入を求める」などと訴えました。
 また、休暇制度にも関わっても「常勤とは違い、休むと無給になる。病休を有給休暇にすべきだ。非常勤職員は高齢の方も増えていて、糖尿病やガンなどの治療には定期通院が必要。質の高い仕事をするためにも、疾病に対しては有給休暇の措置を求める」と訴えました。また年休の採用当初からの付与なども要求しました。
 しかし、私たちの追及に対する人事院・内閣人事局の回答は従来の域をでず、議論は平行線のままで交渉を終えました。国の機関で働く非常勤職員の労働条件については、まだまだ不十分ではありますが、夏季休暇制度の実現など私たちの運動により少しずつ処遇が改善されてきています。安定雇用と均等待遇を実現するために、引き続き、制度当局だけでなく国会や世論への働きかけを強め、人事院や政府の姿勢を変えさせる必要があります。

人事院は労働基本権制約の代償機関として役割果たせ
 国公労連は8月7日、2020年人勧期重点要求にかかる人事院交渉を実施しました。交渉には、各単組から計10名が参加し、コロナ禍における防疫等作業手当など各種手当の適用範囲の拡大や支給額の改定、感染リスクの高い窓口での手当の新設などを求めました。
 また、最前線で働く全国の職場では、コロナ禍であっても様々なリスク等にさらされながら業務を停滞させることなく行政サービスの維持・向上に努めていることを訴え、このコロナ禍にあって頑張って働いている職員に対して、その労苦に報いるよう労働基本権制約の代償機関としての適切な対応を求めました。
 他にも、ハラスメントの根絶に向けた実効性ある対策や、超過勤務の上限規制における際限ない特例命令や隠れ残業などに対して、その背景や特例命令の妥当性の点からも検証し、改善にむけたとりくみの実施を訴えました。また、不妊治療休暇の新設を求めるとともに、身体的・精神的に負担が大きい治療であり、国としても民間に先んじて不妊治療を支援する姿勢を示す必要があることを指摘しました。
 さらに、労働基本権の代償機関として、「民間準拠」ではない政策的な賃上げ、定員政策の転換などの働きかけを強く求めるとともに、引き続き勧告にむけて要求を実現するよう求めて交渉を終えました。
 労働基本権制約の代償という役割を果たさせるとともに、職員・職場の実態をふまえた勧告をださせるためにも、引き続き、人事院に対する追及が重要となります。

増員、超勤・ハラスメント解消
概算期重点要求を追及
 国公労連は8月17日、概算期重点要求等にもとづく政府・内閣人事局との中間交渉を実施し、各単組から計10名が参加しました。
 交渉では、定員管理をはじめ超勤、ハラスメントなどとともに、国家公務員定年延長法案が廃案になり、職場には不安の声もあることから、今後の見通しなどを提示するよう求めました。また、交渉にかかる各種課題の根本問題は定員管理にあり、年末にむけた定員査定での増員の実現を求めました。さらに、国民の権利や安心・安全をまもるために日々奮闘している現場を直視して、労働条件の改善や安心して働ける環境の整備など、政府・使用者としての役割発揮を求めました。
 政府の人事管理政策を転換させ、定員合理化計画の中止・撤回を求める職場・地域からの運動を広げていくことが重要となります。



地域間格差の解消をめざして
「賃金の地域間格差解消戦略構築プロジェクトチーム」の中間報告


 近年、最低賃金などの地域間格差の拡大によって、地方部から都市部への若年人口の流出に拍車をかけ、「全国一律最賃制」導入の声が大きくなるなど、地域間格差の解消を求める世論が高まっています。
 私たちの職場でも、人事院の「給与構造改革」(2005年勧告、2006年から実施)と「給与制度の総合的見直し」(2014年勧告、2015年から実施)によって、給与全体のなかの地域手当の比率が高まり、同じ役職で同じ仕事をしていても、勤務官署の所在地の違いによって地域手当で最大20%もの給与格差がつく仕組みになっており、国公労連においても地域間格差の解消が大きな要求になっています。
 そうしたもとで、国公労連は、昨年の秋に「賃金の地域間格差解消戦略構築プロジェクトチーム」(責任者 九後書記長)を立ち上げ、地域間格差の解消にむけての議論をすすめてきました。
 8月28日から開催する第66回定期大会でこれまでの検討結果として発表する「中間報告」の概要を紹介します。

国家公務員賃金が格差拡大を助長
 「中間報告」では、まず、問題意識として「国家公務員制度上の課題」「民間賃金と地域経済への影響」などをあげています。
 「国家公務員制度上の課題」では、同じ役職で同じ職務を遂行していても、勤務している地域によって賃金に最大2割もの格差が生じることは、「職務給の原則」を逸脱していることを指摘しています。また、全国斉一でなければならない行政・司法サービスの提供体制にとって大きな障害となり、行政・司法サービス提供の質・量に大きな地域差が生じたりするような事態になれば、日本国憲法の要請である国民の基本的人権の保障に関わる重大問題となることを指摘しています。さらには、地域手当による最大2割もの賃金の地域間格差は、人事異動における公平性の担保を困難にし、各府省の人事管理にも大きな支障をもたらしていることなどの問題を指摘しています。
 「民間賃金と地域経済への影響」では、国家公務員賃金は、社会的影響力が強く日本の雇用者総数の約14%・770万人に影響し、地方自治体では国の制度に準じているところが多く、給与制度が地域間格差拡大を助長していることや、地方部から都市部への若年人口の流出等については、最低賃金の地域差の影響が指摘されており、給与制度も同様のことが言えることを指摘しています。人事院は「地域によっては企業規模50人以上の企業は少数であり、より小規模の企業の給与の実態も反映すべき」との意見もあるとしていますが、それを裏付けるデータはないこと、さらには、最低賃金をめぐって、自民党内にも最低賃金一元化議員連盟が発足し、参議院選挙で一部の野党を除く各政党が最賃引き上げを公約に掲げるなどの状況が生まれていることなどを指摘しています。

格差の解消へ
中間報告の職場討議を

 労働者・国民の生活悪化がすすむとともに、地域間格差のこうした問題意識もふまえ、あるべき賃金水準は、民間・公務を問わず、衣食住に困らず、健康で文化的な生活がおくれる水準、8時間働けば普通に暮らせる賃金水準とすること。くわえて、公務の場合は「全体の奉仕者」として、何ごとにも左右されずその職務に安心して専念できる賃金とする必要があるとしています。
 こうした本来あるべき国家公務員の賃金水準等を示したうえで、現行制度下での格差解消のあり方について、①現行手当を縮小等して配分する、②賃金水準は担保(維持)しつつ毎年一定程度の原資を確保して、非支給地域から段階的に地域手当を引き上げる方策を提案し、職場でも議論していくとしています。
 今後、プロジェクトチームでは、地域間格差の解消にむけた運動論などの議論をすすめるとともに、「中間報告」についての職場討議と意見をふまえた「最終報告」を作成していくこととしています。
 地域間格差の課題は、公務員賃金のみならず、最賃や生活保護など、社会保障の地域間格差にも同じことが言えます。これから地域別最低賃金の改定時期を迎えることから、最低賃金の大幅引き上げ、「全国一律最賃制」確立のとりくみなどと一体で運動していくことが求められています。