10年ぶり一時金引下げ勧告、非常時に奮闘する職員の労苦に応えず
~2020年人事院勧告にあたっての声明

【とりくみ:談話・声明等】2020-10-07

2020月10月7日
国公労連中央闘争委員会

 人事院は本日、政府と国会に対して、国家公務員の給与に関する勧告及び公務員人事管理に関する報告を行った。
 給与改定については、新型コロナウイルス感染症の影響により月例給に先行して実施していた一時金の民間給与実態調査結果に基づき、特別給を0.05月分引下げる勧告を行った。
 今回の勧告では、①慢性的な人員不足にコロナ関連業務が負荷されいっそう厳しさを増す職場実態の中で、感染の不安を覚えながらも国民の生命やくらしを守るために現場第一線で働いている職員の労苦に報いる賃金改善が求められていたことや、②コロナ禍で消費が大幅に落ち込んでいる日本経済を回復させるためには、経済の内需主導型への転換が求められており、最賃と同じく社会的影響力を持つ公務員賃金を引き下げることは社会政策上も許されないことなど、こうした情勢に適応した政策判断が求められていたところ、民間準拠に固執し特別給のマイナス勧告を行った人事院の姿勢に断固抗議する。
 特別給を支給月数で民間と一致させるにしても、その前提として特別給の算定に用いられる基礎給与が官民で均衡していなければならない。国公法第28条2項が人事院に課しているのは、現在の俸給表が情勢適応の原則に照らして適当であるかどうかである。その上で、特別給についても増減する必要があれば勧告・報告するというのが法令上求められている。したがって、特別給のみ先行して勧告することは論理的にあり得ず、公務員給与体系全体で正確な官民均衡がとれているのか問題である。人事院の特別給削減ありきの姿勢は許されるものではない。
 特別給の引下げ分は、期末手当から差し引くとしているが、今夏の民間のボーナスの減少は、コロナ禍の影響による企業業績の落ち込みによるものであり、そのこととの均衡を図るならば、生活補給金的な期末手当ではなく、成績査定分に相当する勤勉手当から差し引く方が情勢に適応している。ここにもこの間政府・人事院の能力・実績主義強化に偏重した姿勢が表れており、不当なものと言わざるを得ない。
 再任用職員の特別給の引下げは回避できたが、依然特別給の支給月数は低く抑えられており、引き続き給与改善を求めていく。
 公務員人事管理に関する報告では、新型コロナウイルス感染症に係る取組、長時間労働の是正、ハラスメント防止対策、仕事と家庭の両立支援、心の健康づくりの推進などが報告されている。
 長時間労働の是正に向けて人事院は、超過勤務命令の上限を超えた場合における各府省による要因の整理・分析・検証の状況を把握し、必要な指導を行うことを言及しているが、超過勤務命令の上限を守ることだけが重視され、以前より不払い残業やサービス残業が増えている実態が指摘されているなかで、要因の整理・分析・検証に必要な客観的で正確な勤務時間の把握ができているのか、そのエビデンスに疑問を呈さざるを得ない。そもそも、長時間労働の最大の要因は行政需要・業務量の増大に反して強行されている定員削減である。定員合理化計画を中止・撤回し、必要な要員を確保することが何より求められている。人事院として政府に対し、労働条件の問題としてこれまで以上に積極的な意見表明を行うことを求める。
 ハラスメント防止対策について、各府省庁の長の責務を十全に果たさせることが重要である。ハラスメントの要因を解消するため、業務体制の整備など職場や職員の実情に応じ、必要な措置を講ずることが求められている。ハラスメント根絶と誰もが安心して働き続けることができる職場環境に向けて、人事院として具体的な対策を講じることはもちろんのこと、各府省への指導など人事院の役割発揮を求める。
 今回の報告では、非常勤職員の処遇改善の要求に対し実質「ゼロ回答」となっている。非常勤職員は、国公法と労基法の狭間に置かれ、定員管理制度と任用制度の壁に阻まれ、予算の厳しい制約を受けていることなど、理不尽な状態におかれている。いま非正規の処遇改善が社会全体の共通課題としてとりくまれているなかで、その流れに逆行する「ゼロ回答」は許されない。常勤職員との不合理な処遇格差をただちに是正するよう政府・人事院に強く要求する。
 現在、人事院において月例給等の勧告作業がすすめられている。残る給与改定の勧告・報告の時期等は不明だが、組合員の切実な生活改善要求の実現に向けて、引き続き国公労連は人事院に対する追及を強めていく。同時に、特別給の引下げを実施させないよう政府に対する追及を強めていく。
 この間の新型コロナウイルス感染や大規模災害で明らかになったように、公共体制の立て直しは急務の課題となっている。医療、介護、保育、教育などと同様、いわゆるエッセンシャルワーカーといえる公務の人員増と処遇改善を勝ち取るべく、全国の仲間の皆さんの2020年秋季年末闘争への引き続きの結集を呼びかける。