国公労新聞2021年1月10・25日号 第1557号

【データ・資料:国公労新聞】2021-01-10
 
霞ヶ関の本省支部の仲間
コロナ対応で過酷な残業 抜本的ナ定員増こそ必要


 
 新型コロナウイルス感染拡大への対応も相まって、霞が関本省庁で働く仲間の長時間残業がいっそう深刻になっています。「霞が関、働き過ぎ拍車/コロナ対策で人手不足深刻/20代自己都合退職4倍に」(朝日新聞1月5日付夕刊1面トップ)など「公務員を減らし過ぎ」とのマスコミ論調が多くなっています。こうした中で霞が関の長時間残業をなくそうと奮闘している、各単組本省支部の仲間にお話をうかがいました。
 



 
頻発する自然災害、GOTOトラベル等で忙殺
国土交通労組本省支部



 国土交通省本省職場では近年頻発する自然災害への対応などで業務量は増える一方、毎年続く定員削減によって長時間労働が常態化していました。
 加えて、新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応により、長時間労働に拍車がかかっています。
 なかでも、GOTOトラベル事業や交通事業者への対応が大変になっています。GOTOトラベル事業は、官邸の方針転換による突然の中止などもあり現場は振り回されており、過労死寸前の働き方となっています。 
 厳しい職場環境によりメンタル疾患や退職者が続出しており、このままでは国土交通行政が立ち行かないという危機感から、最近は当局も「ワークスタイル改革」と称した取り組みを省をあげて進めています。
 コロナ禍でテレワークも推奨されていますが、部署によって対応が違っていたり、端末などの整備が行き届いていないこともあって、全体の実施は1割に達していません。それでも、できるだけ「密」を避ける必要があるということで、職員間のコミュニケーションがオンラインで行われることが多くなり、人間関係が希薄になっている面もあります。
 本省支部では2年前から毎月最終水曜日の昼休みに「折り鶴サロン」を開催しています。毎夏の原水爆禁止世界大会に献納する折り鶴をみんなで折りながら交流し、組合未加入の非常勤職員の仲間も誘い合って参加してくれています。今後も本省で働く仲間のつながりを広げていきたいと考えています。
 



 
非常勤職員の組合員が自ら声かけ仲間増やす
全厚生本省支部



 今月(2020年12月)も非常勤職員の組合員が自ら声かけをして、非常勤職員の仲間を組合に迎えました。全厚生本省支部では非常勤職員の組合員が自発的に仲間を増やしています。こうした仲間づくりが進むのは、仲間が増えると労働組合の力が強くなって、非常勤職員の労働条件が良くなることを組合員のみんなで共有しながら、取り組んでいるためです。
 今はコロナ禍で工夫しながらの実施となっていますが、フラワーアレンジメント、ピラティス、ボクササイズ、卓球、絵手紙、韓国語、日比谷ランチウォーク、皇居ランニングなどレクリエーション活動も多彩に行い、組合員のつながりを深めていることも大きいと思います。
 レクレーションで集まった際は、局ごとに非常勤職員の労働条件が異なっていることもあり、
情報交換を行い、職場の悩みも共有して一緒に問
題を解決しています。
 非常勤職員の仲間はコロナ対策本部にも駆り出されたり、常勤職員が削減される中で、係長の仕事を引き継ぐ非常勤職員もいます。
 郵政20条裁判の最高裁判決で、病気休暇(有給)、住居手当、扶養手当などの格差是正が確定しましたが、国の非常勤職員にも格差是正、無期転換ルールの確立(ネット署名)を要求して取り組みを進めています。
コロナ禍で4月の新規採用者はいきなりテレワークで職場の人間関係をつくりづらく孤立してしまう状況が広がっていました。本省支部ではネットを使った新採アンケートやランチ会などに取り組み、組合に加入した新採の仲間からは、「コロナ禍で職場の人間関係が希薄になるなか、いろいろな部署の仲間とつながることができる労働組合に入って本当に良かった」とのコメントがありました。
 定員削減の中、コロナ対策本部にも動員されているため、職員の長時間労働が深刻になっていますが、仲間づくりを進めて定員増の要求につなげていきたいと思っています。
 
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 コロナ禍で4月の新規採用者はいきなりテレワークで職場の人間関係をつくりづらく孤立してしまう状況が広がっていました。本省支部ではネットを使った新採アンケートやランチ会などに取り組み、組合に加入した新採の仲間からは、「コロナ禍で職場の人間関係が希薄になるなか、いろいろな部署の仲間とつながることができる労働組合に入って本当に良かった」とのコメントがありました。
 定員削減の中、コロナ対策本部にも動員されているため、職員の長時間労働が深刻になっていますが、仲間づくりを進めて定員増の要求につなげていきたいと思っています。


 
 
コロナ対応、国会対応で長時間残業が常態化 
全労働本省支部



 本省の労働行政の職場は、霞国公の残業実態アンケート調査において、毎年のように各省庁の中で残業時間が最も多くなっています。
 2020年は霞国公全体としての残業実態調査を取りまとめることはコロナ禍でできませんでした。そうした中でも全労働本省支部では数を多く集めることはできなかったのですが、独自にコロナ禍の残業実態を集約しました。予想していた通り、コロナ対応で例年より残業が増えていました。とりわけ、コロナ対応に関連しての国会対応と議員対応による残業が増え、平日は翌日の未明まで働くことが常態化しています。
 さらに、本省にコロナ対策本部ができて、各局からの応援が割り当てられ続けているのと、雇用調整助成金はじめコロナ関連業務への応援もあり、通常の業務をこなすことが困難になっています。
 メンタル疾患や身体を壊しての休職が続出しています。マスコミ報道もされていますが、若手職員の退職も続いていて、優秀な人材がいなくなってしまう深刻な状況になっています。
 政府は、「ブラック」霞が関を改善するためにデジタル化などで業務を効率化し残業を減らすなどと言っていますが、小手先で改善できるような状況ではなく、抜本的な定員増こそ必要です。
 また、政府から縦割り110番など突然仕事がふってくることも多くなっていますが、現場はそのたび大変なことになり、政府こそ霞が関を非効率にして「ブラック化」を加速させていると思います。
 この間、若手の組合員が声かけをしてキャリアの組合員も増えています。コロナ禍で少人数での学習会を6回に分けて実施するなど工夫しています。
 労働組合は職場の仲間とのつながりが何より大切です。コロナ禍ですが工夫を重ねて、仲間づくりを広げ、抜本的な定員増を実現して長時間残業をなくしたいと思っています。


 
持続化給付金で電話6千件
放置されるサービス残業
全経済本省支部



 定員削減が続くなか、国会対応に加えて、災害への対応業務が増えています。現地に行き被災された自治体と住民の間に入って物資等の手配を行ったりするのですが、通常業務だけで恒常的な長時間残業が続いているので厳しい職場実態です。
 さらにコロナ対応では、持続化給付金への対応が大変で、問い合わせの電話だけで6千件にのぼるなど忙殺されています。
 メンタル疾患の職員が多く、セクハラ・パワハラも減っていません。クラッシャー上司が依然いる証拠ですね。他省庁では若手職員が退職代行業者を使って辞めていくケースがあると聞きましたから、全省庁的な状況でしょうか。
 地方から本省に出向してきた職員へのケアがないため、職場の人間関係に悩み、メンタル疾患になるケースも多くなっています。全経済本部の取り組みですが、上京団行動と合わせ、出向者懇談会を開催しています。旧友との交流を兼ね、本省職場の実態や課題を把握しています。また、全経済のホームページのリニューアルをお願いしました。いろいろな課題があることを労働組合の取り組みの中で知ってもらえるといいですね。
 2020年4月から電子出勤簿が導入され超勤時間はガラス張りになりました。しかし、超勤手当は全額支給されず、サービス残業は放置されたままです。
 長時間残業に対応できない職員はお荷物であるかのように扱う職場実態がある中で、20~30歳代の女性はキャリアパスに悩んでいます。いつ結婚して、いつ出産するか悩ましいのです。マミートラックに陥って仕事へのモチベーションが極端に落ちてしまう職員もいます。長時間残業の対応が人事評価されないよう早急に改める必要があります。
 政府は霞が関のデジタル化を進めるとかデジタル庁をつくるとか言っています。行政は国民のためにあるわけで、何より国民の利便性を良くすることが必要なのに、政府は国民を置き去りにしてデジタル庁をつくることが自己目的化しているように思います。いま上手く回っているシステムをデジタル庁へ強引に突っ込むことで国民の利便性にかえってマイナスになりかねないと思っています。今後、デジタル庁の動きは要注意だと思います。


 
東京オリパラ延期で残業増
コロナ禍の弊害で業務増
全通信本省支部



 総務省の職場でも定員削減が進められていて、人は減らされても仕事は増え続けており、毎日綱渡りの状態での勤務になっています。
 コロナ対応や自然災害への対応によって残業が増えていますが、もっとも大きな影響は、東京オリンピック・パラリンピックの延期です。世界中から電波が集まるという状況になるので、それに対応する準備を進めてきたのですが、延期によって再度準備が必要になり業務が増えています。
 国会対応があって超過勤務が増えても超勤手当は月30時間程度しか付かないことが多く、サービス残業が恒常的になっています。
 上司から定時退庁をうながすアナウンスなどはされていますが、業務は増えているのに人が減らされ続けているので実効あるものになっていません。
 総務省がテレワークを推進しているということもあり、コロナ禍において本省職場の働き方が大きく変わりました。
 部署の中でA班とB班の2つのグループをつくり、A班が出勤する日はB班がテレワークという対策を講じているところもあります。
 加えて、会議や打ち合わせも原則オンラインで行うことになっています。オンライン会議は、職員間の意思疎通が難しいため、オンライン会議の後のフォローの仕事が増えてしまっています。
 そういう中で、地方局から本省に異動してきた職員が、上司である係長等と数カ月以上、直接顔を合わせることすらできないという弊害も生まれています。
 従来は本省支部として新規採用者など若手職員を集めるイベントなどを開催して仲間づくりを行っていたのですが、コロナ禍においては個別の声かけを強めていくなど工夫した仲間づくりに取り組みたいと考えています。


 
非常勤職員の病休の実現
無期雇用への転換を
国公一般



 非常勤職員本人が新型コロナに感染したり、家族に感染がある場合については、特例措置として非常勤職員も有給扱いの病気休暇となっています。
 しかし、例えば季節性インフルエンザに非常勤職員が感染しても有給扱いではなく無給となっています。また、休暇制度の違いにより庶務業務が複雑となる原因となっているので常勤職員と非常勤職員の休暇について条件を同等とするように改善をしていくことが切実に求められていると思います。
 それから、国公労連の取り組みとして、非常勤職員の無期雇用への転換を求めてネット署名を始めていますが、これを大きく広げるために、組合員はもちろんのこと、組合員以外の人にも国で働く非常勤職員の労働条件がいかにひどい実態があるのか、どんな思いで仕事をしているのかなど、非常勤職員当事者の声を集めてSNSで拡散して世論喚起を行っていければと思っています。
 「ブラック霞が関」を改善するには、常勤職員の長時間残業の改善とともに、非常勤職員の劣悪な雇用・労働条件の抜本的な改善が必要です。 









 
 
新春対談コミュニティ・オーガナイジングで組合員みんなが主人公に

NPO法人コミュニティ・オーガナイジングジャパン理事共同創設者 鎌田華乃子さん
大阪府関係職員労働組合(大阪府職労)執行委員長 小松康則さん


 
 職場も社会も一人では変えられません。仲間づくりを進め、その仲間の力を引き出す必要があります。いま労働組合の大きな課題となっている「組織強化・拡大」の処方箋としてコミュニティ・オーガナイジング(CO)に関心が高まっています。2020年11月には全労連においてもワークショップが実施されました。そこで、NPO法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパンを立ち上げ、2020年11月に『コミュニティ・オーガナイジング――ほしい未来をみんなで創る5つのステップ』(英治出版)を出版した鎌田華乃子さんと、すでにCOを活用している大阪府職労委員長の小松康則さんにお話を2時間に渡って伺いました。ここではその一部を紹介します。(※対談の全体については、季刊誌『KOKKO』43号に掲載しますので、ぜひご購読ください)
 


 
公務員バッシングや組織後退で悩み深く

 ――コミュニティ・オーガナイジング(以下CO)を学ぶ前の状況はどうでしたか?
 小松 
大阪府職労は今年で結成75周年です。その歴史と伝統を背負って、たくさんの課題をこなさなければいけないと思って11年前に書記長になったときは、しんどいことも多かったですね。
 組合員が減り役員のなり手もいなくなってきていて、会議のたびに「こんなに厳しい情勢なのだからもっと頑張らないといけない」と、役員のみんなに言っていました。
 役員からは「会議に参加するだけで疲れるわ」「質問しづらい」「わからないと言えない雰囲気が漂ってる」などと言われて、この状況をどう変えればいいのかずっと悩んでいました。
 加えて、橋下徹氏が大阪府知事になった2008年以降、公務員バッシングも激しくなって、公務員が声を上げることも躊躇するような状況で、労働組合はどういった運動を展開すればいいのかと悩みは深かったですね。
 
困っている人の声が社会に届かない 
 鎌田 私は、子どものとき4人家族でした。母が体調を崩していて、弟がいたのですが、姉としてしっかりしなければと無理をしていました。母に甘えることができず不安になったとき、安心できたのが近所の公園での木登りだったのです。どんなときでも温かく迎え入れてくれると感じていた公園の木は、私にとって大事な居場所でした。
 ところが、私が小学生のときに公園に工事が入ってその木が切り倒されてしまったのです。
 このとき、「なぜ大人は子どもたちの声を聞かないで勝手に木を切ったのだろう」「私が大人になったらきっと声を聞いてもらえるだろうから環境を守る大人になろう」と思いました。
 そうして環境コンサルタントの会社で働くようになったのですが、日本では環境政策が審議会できちんと議論されずに官僚の人が書いたシナリオ通りに決められていって市民の声は届きませんでした。
 このとき、「市民の声が届く社会にするにはどうすればいいのか?」と強く思ったのと同時に、私自身は環境政策に関わる仕事をやりたいのではなくて、困っている人たちの声が届く社会をつくりたいのだと気づきました。
 それで、市民参加による社会づくりを学びたいと思って、ハーバード大学ケネディスクールに留学してCOに出会ったのです。
 
実際に「組合員を主人公」にするCO
 
 ――小松さんは、COを学んでどうでしたか?
 小松 
COを学んで最初に感じたのは、これまでの労働組合が組合員や職場で働く仲間を置き去りにしていたのではないかということです。労働組合は「組合員が主人公」とよく言いますが、実際はそうなっていなかったことを痛感しました。
 具体的には、会議や集会の運営方法、さまざまな運動の組み立て方と取り組み方、そして仲間づくりの手法など、あらゆる場面で組合員の主体性を発揮できるものになっていなかったことに気づきました。
 最初に大きく改善できたのは会議や集会の運営方法です。参加者から「こんな楽しく元気が出る会議や集会ならすすんで参加したい」と好評を得ていますし、青年部もとても元気になり、青年自らが仲間づくりに取り組むようになっています。
 これまで2時間、3時間かけてみんなを疲れさせていた会議や集会って一体なんだったのだろうと正直思いました(笑い)。
 それから、いま「保健師、保健所職員を増やしてください」というキャンペーンに、当事者である保健所の仲間と一緒に取り組むことができています。
 鎌田 会議は具体的にどう変えたのですか?
 小松 参加者全員のチェックインから始めて、毎回の会議でゴールを最初に明確にして、ペアトークやグループワークも随所に入れています。読めばわかる報告等は文書を配布して、みんなでしっかり議論して決めたいことを重視して会議をやっています。
 
「仕方がない」から誰もが「仕方がある」へ
 

 ――鎌田さんは、留学から帰国してCOJ(NPO法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン)を立ち上げ、2020年11月に『コミュニティ・オーガナイジング――ほしい未来をみんなで創る5つのステップ』(英治出版)を出版されたわけですが、この本を読者にどう活用してもらいたいと思っていますか?
 鎌田 
この本は、多くの人に読んでもらって、これまでさまざまな問題に直面したとき「仕方がない」とあきらめていた人が「私にも問題を解決できる」「仕方がある」と行動に移してもらえるものにしたいと思って書きました。
 本の中で小学生がCOで課題を解決していくという設定にしたのも、最初から社会運動に関心がある人だけでなく、できるだけ多くの人にCOを知ってもらいたいからです。
 例えばCOで戦略を考えようとすると、ものすごく硬く考えてしまいがちです。でも戦略ってみんながわくわくする楽しいものであるべきだし、社会運動って楽しくないと多くの人に参加してもらえません。ですので、楽しく創造的にCOを知ってもらえるように小学生が問題の解決にチャレンジしていく設定にしました。

 ――コロナ禍ですがオンラインでの読書会や学習会も広がってきていますね。
 鎌田 
アクティブ・ブック・ダイアログ(ABD)という読書会に何度か参加しました。みんなで少しずつ分担して本を読み、各自読んだ箇所を数分でプレゼンをしていくのですが、そうするとCOの全体像がよく理解できてきて、自分の活動でここができていなかったとか、もっとここを強くしていきたいとか、普段の自分の活動を改善するための気づきがたくさん生まれました。
 労働組合でもぜひこの本を使って読書会や学習会に取り組んでもらえるととてもうれしいです。
 小松 この本を読むと、普通の人が社会を変えたいと思えるようになってほしいという鎌田さんの思いが伝わってきます。職場を変えたい、社会を変えたいと思う仲間づくりにこの本を活用したいと思います。