「定年延長法案」は全体の奉仕者としての公務員の役割発揮に寄与するとともに、民間の高齢期施策のモデルケースとなる内容で成立を!
――定年延長にかかる「国家公務員法『改正』法案」の閣議決定にあたって(談話)

【私たちの主張:私たちの主張】2021-04-13
2021年4月13日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 浅野 龍一
 
1.政府は本日、国家公務員の定年延長を行うための「国家公務員法等の一部を改正する法律案」(以下、「法案」という。)を閣議決定し、第204回通常国会に上程した。この法案は、雇用と年金の接続を確実なものとするとともに、高齢層職員の能力及び経験を本格的に活用することで質の高い行政サービスを維持することを目的としたものであり、高齢期における国家公務員労働者の労働権と生活権を保障する極めて重要な法律である。
 人事院は2011年9月に国会と内閣に対して「定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出」を提出したが、政府はこれにもとづく法案を国会に提出することはなかった。人事院は2018年8月に再び「定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出」(以下、「意見の申出」という。)を提出したが、政府は翌年の第198回通常国会への法案提出を見送った。その後2020年の第201回通常国会に、内閣や法相の判断で検察幹部の定年を延長できる役職定年の例外規定(①検察官について65歳定年後の勤務延長を認める、②63歳の役降り後も引き続き検事総長等として勤務することを認める)を設けた検察庁法「改正」法案と「束ね法案」として提出したが、検察庁法「改正」法案に対する国民の批判の高まりによって廃案となった。
 前述のとおり極めて重要な法案であるにもかかわらず、最初の「意見の申出」以降今日まで法案を事実上棚上げにし、定年延長に該当する職員の生活権を侵害した使用者たる政府に対し抗議の意思を表明する。
 なお、今回提出された検察庁法改正法案では、前回問題となった例外規定は削除されているが、当時の黒川弘務東京高検検事長の人事に際して政府が行った現行法の解釈変更(検察官に国家公務員法の定年規定を適用できるとする解釈)は撤回すべきである。
 
2.今回国会に提出される法案について、この間国公労連が多くの問題点を指摘し修正を求めてきたにもかかわらず、第201回通常国会に提出されたものが修正されず基本的に同一内容であることは極めて遺憾である。改めて法案の主な問題点を以下のとおり指摘する。国会において国公労連の要求に即した修正が行われるよう法案の徹底審議を求める。
 ①給与水準を基本7割にすることは、年齢差別であり、職務給の原則にも反するため反対である。高齢層職員の経験や能力等を適切に発揮するための水準とは言い難く、これまで給与抑制を強いてきたうえに7割に引き下げることはモチベーションの低下につながり、行政サービス提供の点でも悪影響を及ぼす。人事院は、定年延長に伴って給与カーブの見直しの必要性に言及しているが、高齢層職員の能力及び経験を本格的に活用するためには、職務に見合った適正な給与水準を維持すべきである。また、「意見の申出」のデータは、賃金構造基本統計調査から引用されているが、再雇用データを多数含んでおり、給与水準の算出根拠としては不適格である。定年延長は職務にふさわしい処遇を基本に、賃下げのない制度とすべきである。
 ②役職定年制は一方的な不利益変更であり、地方出先機関にまで一律に導入することは、組織運営上も問題が多い。国民にこれまでと同様に良質で安定的な公務・公共サービスを提供するという点でも一律の導入はやめるべきである。一律適用は混乱することから経過措置的に必要な場合にのみ運用を求める。仮に導入する必要がある組織の場合は、例えば8級以上に限定するなど職場実態に見合った柔軟な措置を講じるべきである。
 ③定年前短時間再任用は、フルタイムへの転換ができるような制度設計にすべきである。また、多様な働き方というのであれば勤務時間についても31時間以上の枠組みを設けるべきである。
 ④加齢により就労が困難な職種については、職員の健康確保の面でも国民・利用者の安全確保の面でも、65歳まで働き続けることができる職域を設けるなど、特別な措置の検討、夜勤制限やインターバル規制などを措置すべきである。
 ⑤退職手当について、個々の事情に対応できるよう支給時期を本人が選択できるようにするなど必要な配慮を行えるようにするべきである。
 ⑥定員について、現行の定員管理手法では、新規採用者がとれないまたは非常に少なくなる年が発生することになる。組織の年齢構成にバラツキがでることによって、安定的に公務・公共サービスを提供することに支障をきたすことになる。また、国家公務員をめざす人たちのなかでも、生まれた年によって採用枠に差が生まれることは憲法の平等原則にも反することになる。定員は別枠で確保するなど柔軟な管理を行うべきである。
 ⑦能力・実績主義にもとづく人事管理の徹底について、現在の人事評価は目標が最優先され、数値偏重の業務運営が横行する、評価基準が曖昧で公正・客観的な評価ができないなどの問題が職場からも指摘されている。公正な評価ができない現在の人事評価制度を積極活用して成績主義を強化することはやめるべきであり、歯止めのない分限処分の運用は許されない。
 ⑧定年延長は重大な労働条件の変更であるにもかかわらず、現行制度下では、政府・使用者が一方的に決定できる仕組みになっている。国公労連との合意にもとづいてすすめるよう再三指摘してきたがそうなってはおらず、大変な問題である。政府に対し国公労連と労働基本権回復にむけた協議を実施するよう改めて求める。
 
3.一方でこの間、再任用者の労働条件改善も見送られてきており、良質で安定した公務・公共サービスを提供するうえでも重要な課題となっている。賃金水準の大幅改善はもとより、定年退職前の年次有給休暇残日数の通算、常勤職員と同様の生活関連手当等の支給、希望者全員のフルタイム再任用を保障させるなど、政府・人事院への追及をいっそう強化していく必要がある。
 
4.本年4月から改正高年齢者雇用安定法が施行され、企業に70歳までの就業機会の確保が求められることとなった。企業にこうした努力義務を課しながら、政府による公務員制度改革の遅れは否めないところである。
 国公労連は、健全な定年延長制度の確立と多様な選択肢の確保を求めている。定年制の廃止・65歳以上定年制を導入している企業が1割程度の現状のもとで、今回の法案が、高齢層職員の能力及び経験を活かし、国民の権利や安全・安心を守る全体の奉仕者としての公務員の役割発揮に寄与する内容であることはもちろん、民間の高齢期施策のモデルケースとなる内容で成立するよう強く求める。
 私たち国公労連は、国民本位の行財政・司法の確立のためにも幅広い労働者・国民と手を携えながら、要求実現をめざし法案成立までたたかう決意である。