国公労新聞2021年6月10日号 第1565号

【データ・資料:国公労新聞】2021-06-10
定年延長法が成立
2023年度から制度スタート


 6月4日、定年延長にかかる「国家公務員法等の一部を改正する法律」が成立し、2023年度から基本60歳となっている定年年齢が段階的に引き上げられ、定年年齢が65歳になります(2031年度に制度完成。定年延長のスケジュールは左表参照)。
 一方、今回の制度改正はこれまでも指摘してきたとおり、多くの問題を抱えてます。①60歳超職員の給与を7割に引き下げる、②60歳となった管理監督職員を降任させる制度、「役職定年制」を「指定職および俸給の特別調整額適用官職及びこれに準ずる官職として人事院規則で定めるもの」に一律に導入する、③定年前短時間再任用制度を選択するとフルタイム勤務に戻ることが極めて困難、④加齢により就労が困難な職種への対応が各府省任せ、⑤問題の多い人事評価制度を使った能力・実績主義にもとづく人事管理の徹底・強化されるなどがあります。
 定員問題については「新卒採用が滞ることのないよう、一時的な定員の調整を措置することを考えている」と政府は国会で答弁していましたが、どの程度措置されるか定かではありません。
 今後、役職定年にあたっての任命権者が遵守すべき一定の基準や、役職定年にかかる「特例任用」の要件等が人事院規則によって定められることとなっています。また現在、内閣人事局で人事評価制度「見直し」がすすめられています。その「見直し」を受け、人事院で給与など処遇への反映について検討することになっており、それぞれの現場実態にそった制度とさせていく必要があります。
 さらに、人事院は「60歳前後の給与水準が連続的なものとなるよう、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況等を踏まえた60歳超職員の給与水準の見直しに加え、60歳前の給与カーブも含めた給与カーブの在り方等について検討」すると言及しています。今後の動きに注視しつつ、賃金水準の引下げを許さず、職員が定年まで職務に誇りと責任を持ちかつ、安心して働ける制度とするために職場からの追及を強めていくことが求められています。

 

ワクチン接種・副反応は「職専免」で対応

 新型コロナウイルス感染症対策として職場でのワクチン接種が6月21日からの開始にむけて企業で準備が本格化してきています。一方、国家公務員も民間企業における職場での接種開始に合わせて、職場や職種ごとで接種を行うことが検討され、災害対応などの危機管理や、空港での水際対策を担当する職員などから接種を順次にすすめていくとの報道もなされています。
 このようなもとで、人事院は5月27日に①ワクチン接種を受ける場合(ワクチン接種直後の経過観察や接種会場までの往復時間も含む)、②ワクチン接種にともなう副反応が出て療養が必要な場合の勤務の取扱いについて「公務の運営に支障のない範囲内(当該療養する必要がある場合にあっては、そのためにやむを得ないと認められる必要最小限度の期間)において、勤務しないことを承認することができる」との旨を記載した人事院指令14-2「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種を受ける場合等における職員の職務に専念する義務の免除に関する臨時措置について」を各省各庁・各行政執行法人の長あてに発出しました。
 国公労連は、21春闘で今後職員においてもワクチン接種がすすめられていくことが想定されるもと、その際に対応できる「ワクチン休暇(特別休暇または職専免)」の措置を強く求めてきました。その結果、民間での動きとも相まって今回の措置につながりました。この措置は当然のことながら非常勤職員にも適用されます。
 今後は、職員が安心してワクチンを接種することができる職場環境・体制を整備させていくことが必要です。また、「職専免」とするか否かは各省各庁の長の判断となっていますので、不当な取扱いがなされていないか監視することも必要です。取扱いでおかしいなと思ったことなどありましたら近くの組合役員にご相談ください。

 
ジェンダー平等をめざして
第50回国公女性交流集会ひらく


 国公女性協は6月5日、第50回国公女性交流集会をオンラインで開催し、全国から150人を超える仲間が参加しました。来賓として国公労連九後委員長に参加いただきました。
 記念講演では、上西充子法政大学教授から「ジェンダー平等な働き方をめざして あなたを縛る『呪いの言葉』は何ですか?~みんなでこころのストレッチ~」と題して、著書の『呪いの言葉の解きかた』を中心に「嫌ならやめればいい」「コロナだから」など一見もっともらしい「言葉」に隠された本質を浮かび上がらせること。そのために思考の柔軟体操が必要であること。また、「交渉」の重要性について語られました。「女性登用は逆差別では?」の質疑に「女性が管理職に就いていないと何も変わらない。女性が管理職になりづらい事情を発言することによって次に続けられる」との回答がありました。最後に公務職場で働く私たちへ「公務の大切さを理解し、応援していきたい」とのメッセージがありました。
 集会では50回記念として、歴代の国公専従女性役員からのメッセ―ジを紹介。「これまでの歴史を振り返り、これからの運動につなげよう」と50年間の集会や育児休業制度など両立支援制度を勝ちとるため、女性協(婦人協)が担ってきた運動を紹介するとともに、「集会に参加したことがありますか」「年休は取得しやすいですか」など、参加者へのアンケートを実施しました。アンケートは「一方的に聞くだけでなくよかった」と好評でした。
 オンライン開催で参加者同士の対話はできない中、チャットを活用し、集会の感想や参加者同士の交流が活発に行われました。また、好評だった記念講演の動画については、組合員限定でユーチューブで配信します。上のQRコードから各組織での学習資材としてご活用ください。

 
神奈川県国公 行政相談を実施
 【神奈川県国公発】
神奈川県国公は4月25日、横浜駅東口地下の新都市プラザで行政相談を実施しました。昨年はコロナ感染拡大による緊急事態宣言下で会場が使えず実施できませんでしたが、今年は会場の使用が可能だったため、飛沫防止のアクリル板や消毒液、除菌ティッシュなどを用意し、感染防止対策をとりながら実施しました。
 全労働、全法務、全司法、全厚生、国土交通労組の各単組に加え、神奈川国公革新懇のOBと神奈川労連からの労働相談員にも協力を得て、全体で23名が参加し、相談は26件ありました。
 相談と並行して国土交通労組の防災映像を流しながら、パネルや横断幕を掲げ宣伝行動も実施。足を止め、映像を見た後に、署名コーナーの署名を持ち帰る人もいました。年に1度の取り組みですが、今後も継続的に実施していきたいと考えています。

 
非正規公務員に無期転換を
全労連公務部会がシンポジウム


 全労連公務部会は5月29日に「非正規公務員の無期転換制度を求めるシンポジウム」を開催し、自治労連、全教の書記長とともに、国公労連から浅野書記長がパネリストとして登壇しました。
 国公労連は近年、非常勤職員の置かれた不安定雇用の問題を解消すべく、更新時の公募手続きの撤廃とともに労働契約法の無期転換権と同様の制度の創設を人事院や政府に要求し、世論喚起のために署名などのとりくみも行っています。全労連として非正規公務員の無期転換をテーマにシンポジウムを開催するのは今回が初めてです。
 シンポジウムでは、公務部会の秋山事務局長の基調報告、公務三単産からの現状報告のあと、ゲストパネリストとして金沢大学の早津裕貴准教授と三多摩法律事務所の山口真美弁護士から問題提起がありました。
 早津准教授は、ドイツの労働法やドイツ政府の人事管理と日本の非正規公務員の実態を比較しながら問題提起をしました。ドイツでは安定した雇用は公務運営の「能率」「効率」性のために不可欠だと捉えられており、日本の公務員法でも「無期」が原則であるのは同じ趣旨であるのにもかかわらず、日本の非正規公務員については「財政」や「定員管理」という口実から有期雇用を使った「効率」化がはかられていると指摘。その前提に日本的な「正規」と「非正規」との分断があり、国民や市民の理解を獲得しながら、「公務では無期こそが原則」という原点に立ち返るべきだと述べました。
 山口弁護士は、自治体の非正規公務員をめぐる裁判実例を紹介しながら無期転換に対する課題を整理しました。その上で、昨年から始まった会計年度任用職員制度は法と実態の乖離を形式的に解消したもので、問題の本質的な解決を放棄していると指摘。これまでの各判決から非正規公務員の法的保護、雇い止めに対する救済方法が欠如していることは明らかで、現在の働き方に即して非正規公務員を法的に保護する立法措置が急務だと述べました。さらに、公務のアウトソーシングが広がるなかで、民間労働者が公務を担っている実態にも目を向け、自治体による労働契約の締結についても議論を進めるべきだと問題提起しました。
 その後のフロア発言では国土交通労組の窪添書記次長からも国土交通省の実態と労働組合のとりくみを紹介しました。シンポジウムの最後に、国公労連の九後委員長が公務部会代表委員として閉会挨拶をし、「非正規労働者自身がもっと労働組合に結集して声をあげてほしい。身の回りにあるあらゆる壁をとっぱらって、職場・組合・社会全体での運動を強めよう」と訴えました。
 本シンポジウムは、新型コロナの感染防止の観点から会場参加は少人数としてユーチューブで動画配信を行い、全国から100人以上がリアルタイムで視聴しました。動画アーカイブはユーチューブ上でいつでも視聴できます。ぜひ視聴ください。