国公労新聞2021年7月10日号 第1567号

【データ・資料:国公労新聞】2021-07-10
人事院勧告・概算要求にむけた交渉スタート
現場第一線で奮闘する職員に報いる勧告を


政府・人事院に重点要求書を提出
 国公労連は6月28日、22年度概算要求にむけた「重点要求書」を政府・内閣人事局に、6月29日、人事院勧告にむけた「重点要求書」を人事院に提出し、夏季闘争における政府・人事院交渉をスタートさせました。
 今年は6月22日に民調が終了し、8月上旬ごろの勧告にむけて作業がすすめられ、概算要求も8月末締め切りで各府省で作業がすすめられています。
 人事院勧告は国家公務員と民間の4月分の給与(月例給)を調査し、得られた較差を埋めることを基本に行われています。一時金も民間ボーナスの直近1年間の支給実績を調査し、国家公務員の特別給の年間支給月数をそれに合わせることを基本に勧告が行われるため、21年春闘の結果が重要になります。21年春闘等の結果は図表1のとおり昨年を下回る状況で、このことが人事院勧告にも影響すると考えられます。また一時金も日本経団連が発表した大手企業の夏のボーナス(賞与・一時金)妥結額第1回集計では昨年の夏より7・28%減少となるなど、厳しい状況となっています。

職員の労苦に報いる勧告を
 浅野書記長は、要求書提出にあたり「新型コロナウイルス感染症や相次ぐ自然災害への対応をはじめ、国民の命やくらし、権利を守るために、現場の第一線で奮闘している職員の奮闘に応えて労働条件を改善すべき」と要求しました。また、6月18日に閣議決定された「骨太の方針2021」でさえこの間広がってきた賃金格差・地域間格差を問題視しており、コロナ禍を打開していくためにも、最低賃金改善と全国一律制実現、770万人の労働者に影響するといわれる国家公務員の賃金を政策的に引き上げ、地域手当だけでも20%にのぼる格差をいますぐ是正・解消することを求めました。
 現在、最低賃金の改定にむけて中央最低賃金審議会で審議が行われており、今年の「骨太の方針」に「より早期に全国加重平均1000円とすることを目指し、本年の引上げに取り組む」とされていることから、最低賃金が一定額引き上げられることが想定されます。最低賃金の引き上げは歓迎すべきですが、一方で初任給(特に高卒初任給)の改善がなければ、ますます最低賃金を下回る(国公労連試算)地域が拡大することになります。そのため、初任給の抜本改善もあわせて求めました。

非常勤職員の不合理な格差是正・解消は待ったなし
 今年4月からパートタイム・有期雇用労働法によって、すべての企業で正規社員と非正規社員との諸手当など労働条件における不合理な格差が禁止されました。このことから、国の職場でも民間に遅れることなく、今夏の勧告で休暇や手当をはじめ常勤職員と非常勤職員の不合理な格差は是正・解消することを求めました。また、非常勤職員の最も強い要求である雇用の安定について、良質で安定した公共サービスを提供するためにも恒常的・専門的・継続的業務に従事する非常勤職員の常勤化・定員化、少なくとも、労働契約法で定められている無期転換権を公務職場での適用を求めるとともに、人権や健康はもとより、行政運営に否定的な影響をおよぼしている更新に係る公募要件の撤廃を求めました。

高齢層職員の処遇改善を
 常勤職員との不合理な格差解消という点では、再任用職員の処遇改善も待ったなしの課題です。再任用職員は年々増えつづけ、職場の貴重な戦力となっています。しかし、その処遇は劣悪そのものです。希望してもフルタイム任用されない場合も多く、給与についても2~3級を中心とした運用実態となっています。手当についても常勤職員と比較して、「扶養手当」「住居手当」「寒冷地手当」「特地勤務手当」などが支給されず、一時金は、約半分とされており、休暇についても、定年退職前の年次休暇を通算できないなど、再任用制度は多くの問題を抱えています。現行再任用制度の改善がなければ、定年延長制度が導入(2023年度スタート)された際の「定年前再任用短時間制」「暫定再任用制」にも影響します。とりわけ、この間置き去りにされている一時金を、非勤職員と一緒に改善するなど、再任用職員と正規職員との不合理な格差の解消を求めました。

安心して働ける業務職場体制を
 近年増加する自然災害や感染症対応で行政組織や公務員不足がいっそう鮮明となっています。「公務・公共サービスの拡充を求める請願署名」の紹介議員が昨年より12人増加し86人となるなど、行政体制拡充を求める世論も広がっています。国会審議でも与野党問わず、この間の人員削減や現行の定員管理政策の問題点を指摘し、定員管理政策の転換を求める発言を行うなど、私たちの運動で国会のなかの変化も生み出しています。こうした追い風が吹いているいまこそ、増員による行政体制の拡充とその障壁となる総人件費抑制政策をあらため、総定員法廃止、定員合理化計画の中止・撤回など、政府の定員管理のあり方をただちに見直すことを要求しました。
 積年の課題であった公務員の長時間労働に光があたり、変化がみられるなか、長時間労働の是正にむけて、それぞれの職場にあった客観的な勤務時間管理の導入・推進など、本省のみならず、地方出先機関も含めた実効ある対策を講じることを求めました。
 政府の少子化対策として、本年1月から不妊治療への助成が拡充され、2022年度からの公的医療保険制度から適用が検討されています。定年延長を民間に先んじて公務に導入したように、この問題でも、国が民間をリードしていくべきであり、今勧告で不妊治療のための通院休暇の制度化を打ち出すことを強く求めました。
 最後に、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種がすすめられていますが、職員が安心して業務に従事できるように感染症防止対策の徹底はもちろんのこと、安心してワクチン接種ができる職場環境・体制を整備すること、ワクチン接種は本人の希望とし強制にならないようにすること、接種していないことなどを理由に差別や偏見を生むことのないようにすることを求めました。

地域・職場からの人勧期闘争を
 人勧・概算要求期交渉が各職場やブロック国公でも実施されており、要求実現にむけた追及を強めていくことが求められます。また、職場の声として、全労連公務部会の提起でとりくんでいる「賃金改善とあらゆる格差の解消を求める署名」(人事院あて)、「公務・公共サービス、教育の拡充を求める署名」(政府あて)を7月19日に提出します。こうしたとりくみをつうじて、組合員の切実な要求の実現をめざします。組合員のみなさんに職場・地域でのいっそうの奮闘を呼びかけます。



「心に響いた」「勇気が出た」
国公労連 労働学校を全国で開催中


 国公労連は6月から7月にかけて労働学校を中央と地方で開催しています。昨年はコロナ禍により労働学校を開催することができませんでしたが、今年はオンラインを活用することで中央とすべてのブロックにおいて開催しています。
 ブロック別の労働学校は、6月23日に実施した中央労働学校での2つの講演の録画を視聴しています。
 すでにブロック独自企画で開催した九州ブロックと、録画視聴をメインにした中部ブロックと沖縄は開催済みです。録画視聴がメインではありますが、参加者から大変好評を得ていますので、今後開催するブロックの労働学校(表参照)に一人でも多くの方の参加をお願いします。
 以下参加者の感想の一部を紹介します。
 
〈講演①〉小松康則大阪府職労委員長「『メリットないから労働組合やめる』の処方箋とは?~大阪府職労の取り組み」の感想
  ◎心に響く内容であった。ポイントは、組合員が「自らが参加している」という認識のもと、労働組合の活動を進めることだと思った。
 ◎とても新鮮な感覚で聞き入ってしまった。労働組合の会議での「聞いてるだけで疲れるわ」との組合員の言葉が心にグサッときました。コミュニティ・オーガナイジングに挑戦したくなった。
 ◎コミュニティ・オーガナイジングを活かした運動の成功例として、非常に参考になった。こういう運動を組織できるオルガナイザーを各機関に作ることが重要だ。
 ◎組合員に当事者意識を持たせるコミュニティ・オーガナイジングという新しい方法に感銘を受けた。
 ◎吉村知事のもと、保健師さんの増員を勝ち取る運動は参考にも力にもなった。
 ◎実際に取り組まれた実例として、説得力のある内容だった。具体的なやり方をもっと知りたいと感じた。
 ◎公務員バッシングが特にひどい大阪で、このような前向きな活動にとりくまれていることを知って勇気が出た。
 ◎大阪の公務員への風当たりが厳しい中で、職員の窮状を労働組合が世間に訴え改善に向けとりくんでいることに感動した。
 
〈講演②〉石川康宏神戸女学院大学教授「コロナ禍を乗り越える社会へ」の感想
 
 ◎わりやすい話で、より多くの組合員に聞いてもらいたい。
 ◎労働者の置かれている困難な状況とその原因の分析など非常にわかりやすかった。その中でいま何をすべきか、どういう力を結集していくのかについても、整理できよかった。今後の活動への力を得た。
 ◎公務がどれだけ大事かということを労働組合が国民に伝えていくことが必要だと思った。
 ◎内容が濃くとても面白く希望を持てる話だった。一人でも多くの人に見てもらいたい。
 ◎最近聞いた講演の中で一番良かった。
 ◎組合員全員に見てもらいたい。展望が見えた。