国公労新聞2021年7月25日号 第1568号

【データ・資料:国公労新聞】2021-07-25
21年人勧・概算要求も山場を迎える
職場からの押し上げで要求前進を



8月前半に勧告交渉も最終局面
 今年の人事院勧告は、例年ベースの8月前半に勧告されることが想定され、概算要求も山場を、夏季重点要求に関する交渉も最終局面を迎えます。
 人事院勧告にむけた重点要求に関しては、各級機関での上申交渉を背景に、国公労連本部・各ブロック国公と人事院の間で交渉を積み上げています。7月16日には各単組書記長が参加して、職場実態をふまえて人事院を追及しました。
 人事院は勧告作業と賃金改善について「民調結果を集計中であり、今の段階では何とも言えない状況である。本年においても民調の結果に基づき、適切に対処したい」との回答にとどまり、どのような勧告になるのか現時点では見通しが立っていない状況です。
 その他の要求課題では、不妊治療と仕事の両立について「職員向けの、不妊治療と仕事の両立のための職場環境に関するアンケート調査を、本年1月中旬から2月上旬にかけて実施したところであり今後、アンケートの結果等を踏まえ、必要な取組の検討を進める」と言及した以外は従前の枠を超えない回答に終始しました。

最低賃金の目安額28円 初任給改善、地域格差是正を
 
 この間、重点課題として追及してきた初任給の抜本改善にかかわる問題として、中央最低賃金審議会が2021年度地域別最低賃金改定の目安額について、すべてのランクで「28円」の引き上げを求める内容を7月16日に厚生労働相に答申しました。この答申は、全労連が求めてきた「全国一律1500円以上」要求からすれば程遠く、一律28円の引き上げでは現状の221円もの地域格差も残されることとなり、極めて問題です。
 一方、このことによって全国加重平均の最低賃金(時給)が930円以上となることが想定され、初任給の抜本改善がなければ、最低賃金と高卒初任給の格差はますます広がることになります。国公労連の試算では俸給ベースの高卒初任給の時給[俸給月額×12月/38・75時間(1週間あたりの勤務時間)×52週(1年間)]は897円で、地域手当が支給されない地域では最低賃金の全国加重平均額との格差が大きくなります。また、大卒初任給の時給は1085円(同試算)ですが、28円引き上げられた場合の東京都の最低賃金1041円と同じような水準となります。地方でも都市部でも、国家公務員志望者の減少に拍車をかけることになりかねません。
 浅野書記長は勧告にあたって「コロナ禍で厳しい状況だからからこそ、社会経済に影響力の大きい公務員賃金の改善、初任給の改善、不合理な地域間格差の解消について、『民間準拠』に固執することなく、人事院として相当な覚悟を示すべきだ」と次回の交渉にむけて注文をつけました。

人員不足のなか奮闘する職員に応える勧告を
 
 国公労連は7月29日に職員福祉局長・給与局長との中間交渉を予定しています。初任給の抜本改善をはじめ、人員不足のなかで奮闘する職員に応える勧告となるよう職場から押し上げをはかっていくことが求められます。
 他方、概算要求期重点要求に関して政府・内閣人事局との交渉を各単組の調査部長が参加して7月19日に実施しました。
 各単組からは、定員削減計画中止など現行の定員管理の抜本的見直し、長時間労働是正と未払い残業根絶、健康・安全確保、定年延長課題、人事評価制度の抜本改善、非常勤職員の処遇改善と雇用の安定、手続きの簡素化も含めた移転料の改善などを訴えました。
 これに対して内閣人事局は、働き方改革を中心に回答し、「在庁時間を正確に把握するために業務端末の使用時間の記録等を利用した勤務時間の状況の客観的把握を、原則として令和3年8月までに開始するとされており、各府省においてこれに向けてとりくんでいただいていると承知。地方支分部局等についても業務に応じた勤務形態の多様性に配慮しつつ、最も効果的な方法を遅滞なく措置するよう進める」と客観的な勤務時間管理について言及しました。また、長時間労働の是正には管理職のマネジメント強化が重要であることを強調しました。
 国公労連は、7月30日に予定している最終交渉にむけて、長時間労働の是正が内外から強く求められており、それに向けた真の働き方改革をすすめることが重要。内閣人事局としても長時間労働是正に何が必要かを再度検証することを求めました。
 組合員のみなさんに、21人勧と概算要求での要求前進にむけていっそう奮闘していくことを呼びかけます。




 
7・19人事院前要求行動


  全労連公務部会は7月19日、人事院本院前で「7・19人事院前要求行動」を実施し、国公労連からは各単組本部を中心に約50人が参加しました。行動では参加者が要求を書いたプラカードを掲げてアピールしました。
 決意表明では国公労連から全労働の南和樹副委員長が再任用職員と非常勤職員の課題について発言。「やっと65歳定年制が完成する。雇用と年金の接続のための再任用制度導入から20年が経過したが、再任用職員の処遇が劣悪だ。俸給では民間企業の再雇用者と比較しても3万円近い大きな開きがある。期末勤勉手当の支給月数も現役職員の半分となっている。均等均衡待遇の観点からすれば、民間であれば明らかにパートタイム有期労働契約法に抵触している」と問題点を指摘。非常勤課題の公募についても交渉の際に「人事院は担当部局に伝えるとすら言わない、持ち帰り検討しないという暴挙にでた。労働基本権制約の代償機関としてきちんと我々の要求を踏まえて処遇改善に向けて動くべき」と発言。最後に「昨年はコロナ禍の影響もあり再任用職員や非常勤職員の処遇改善に触れなかった。もう待っていられない。民間準拠の原則に立ち返り、均等均衡の原則に従って早急に処遇改善を行うよう求める」と締めくくりました。
 行動では「公務・公共サービス拡充署名」(政府宛)を7万7106筆、「賃金改善署名」(人事院宛)を8万692筆積み上げ、人事院宛署名は行動後の交渉の際に提出しました。



 

人事院 非常勤職員の給与指針を改定
期間業務職員の一時金支給月数を常勤と同じに


 国公労連はこの間、2017年1月に確立した「非常勤職員制度の抜本改善要求と運動の基本方向」にもとづいて非常勤職員の安定雇用と均等・均衡待遇の実現を国公労働運動の柱のひとつとしてすすめてきました。
 今年は、新型コロナウイルスの感染拡大の状況を加味し、職場の非常勤職員の最新の実態と要求をつかむこと等を目的に、6月26日に「非常勤組合員オンラインミーティング」を開催し、非常勤組合員をはじめ37人が参加しました。7月9日には政府・人事院との交渉を実施し、安定雇用や均等・均衡待遇要求を非常勤組合員自らの実態を交えながら訴えるとともに、オンラインミーティングで出された意見などをふまえ、追及しました。交渉では前進回答はなかったものの公募の廃止や無期雇用にかかわって人事院は「本件の本質は定員問題」、内閣人事局は「個別に業務の継続性や中身を見たうえで、それなりに固まった業務量があるならそれを担当する官庁で定員要求すべきもの」と回答するなど、非常勤職員制度の建前と働く実態の乖離を認めるかのような回答を引き出しています。
 そうしたとりくみもあり、7月16日に人事院は非常勤職員の一時金にかかわって「一般職の職員の給与に関する法律第22条第2項の非常勤職員に対する給与について」(平成20年8月26日給実甲第1064号)を改定(第3項)しました。その内容は、「任期が相当長期にわたる非常勤職員に対しては、期末手当及び勤勉手当に相当する給与を、勤務期間、勤務実績等を考慮の上支給するよう努めること」に「この場合において、職務、勤務形態等が常勤職員と類似する非常勤職員に対する当該給与については、常勤職員に支給する期末手当及び勤勉手当に係る支給月数を基礎として、勤務期間、勤務実績等を考慮の上支給すること」を追加するもので期間業務職員の一時金の支給水準を示したもので、期間業務職員の一時金について、はじめて常勤職員と同じ支給月数を基礎とするとの明文規定が生まれたことは、貴重な到達点であり、私たちの運動の成果です。
 一方、勧告により支給月数を下げる際に契約時に提示した労働条件から不利益変更される口実とされることなど、現場での運用に注意・監視が必要です。また、この指針を担保できる予算を確保させていくことが重要になっています。
 非常勤職員自らが立ち上がり、運動を推進することで夏季休暇や結婚休暇の新設、忌引休暇の取得条件撤廃など一歩ずつではありますが、要求が前進していることを確信に、非常勤職員の安定雇用と均等・均衡待遇実現にむけて、引き続き奮闘していきましょう。