国公労新聞2021年9月10日号 第1571号

【データ・資料:国公労新聞】2021-09-10
国民のいのちとくらし守る行財政・司法へ
国公労連 第67回定期大会ひらく


 国公労連は、「公正で民主的な公務員制度確立、組織強化・拡大で国民のいのちとくらし守る行財政・司法を実現しよう」をスローガンに、第67回定期大会を8月27日から2日間、東京都内の会場参加とオンライン参加の併用で開催しました。代議員57人(うちオンライン11人)、特別代議員44人をはじめ総勢150人が参加しました。
 大会では、2021年度運動方針案、秋季年末闘争法案案について浅野龍一書記長が提案した後、討論に入り35人が発言(うちオンライン13人)しました(発言要旨を2~3面に掲載)。大会討論では、それぞれから職場・地域の実態を踏まえたとりくみの経験や教訓、方針案に対する意見が語られ、議案が補強されました。
 討論を受け、浅野書記長による総括答弁(3面に掲載)の後、採決が行われ、すべての議案が賛成多数で可決・承認されました。
 大会では、全労連の黒澤幸一事務局長から来賓のあいさつを受けました。
 役員選挙では、伊吹五月中央執行委員(全労働)と森慧佑中央執行委員(全司法)が退任し、新たに副委員長に千葉美明氏(全労働)、中央執行委員に笹ヶ瀬亮司氏(全法務)、丹羽秀徳氏(全司法)を選出しました。



九後委員長のあいさつ(要旨) 組織拡大は  待ったなし

 コロナ禍や相次ぐ自然災害によって新自由主義的改革、小さな政府づくりの問題点が浮き彫りになり、「おおやけ」が果たす役割と重要性が多くの国民に認識され直しています。そのことは、公共サービス拡充署名の紹介議員が広がっていることや、内閣人事局による「もの言わぬ官僚づくり」への批判、コロナ対策や災害復旧などで奮闘している公務労働者に対する国民からのエールなどにあらわれています。
 一方、菅内閣は「不要不急の外出自粛」や十分に確保されないワクチン接種の推進を掲げるなど国民に自助を求めるだけの対策に終始しています。直近の世論調査では菅内閣の支持率が25・8%まで落ち込むなど国民の政治に対する怒りが高まっており、都議会選挙や横浜市長選挙などで立憲野党の候補者が勝利しています。私たち国公労働者の要求を実現する上では、政治のあり方が大きく関わってきます。今の流れを「政治を変え、私たちの要求を実現するチャンス」ととらえ、「政治的無関心」に陥ることなく自らの権利行使で要求をつかみ取っていく、公務員労働者としての誇りを取りもどすという観点での職場議論を呼びかけます。
 人事院勧告は給与表改訂なし、一時金0・15月削減という、困難な中でも奮闘している国公労働者に冷や水を浴びせるものです。一方、不妊治療休暇の実現や長時間労働の是正と定員問題への報告での言及など私たちの要求と運動が結実した点も見ておく必要があります。
 他方で、今年の最賃引き上げは全国一律で28円の目安が示され、いくつかの県ではそれを上回る改定が行われました。国公労働者も、初任給の引き上げや賃金の地域間格差解消を実現する立場から全労連・県労連の提起に応えて結集・奮闘してきましたが、そうしたとりくみが一定の成果をつくり出したことに確信を持ちたいと思います。とはいえまだまだ到達点としては不十分であり引き続きの奮闘が求められます。今回の大会では「賃金の地域間格差解消戦略構築プロジェクトチーム」の最終報告も示し、今後の公務員賃金闘争のあり方について議論を呼びかけていますが、とりわけ重要なのは国民春闘と社会的な賃金闘争への結集であり、官民一体でのとりくみが重要です。
 また、非常勤職員や再任用職員を含め職場で働くすべての仲間がやりがいを持って働ける、安心して職務に専念できる労働条件を勝ちとっていくことも重要です。
 組織強化・拡大は「待ったなし」の状況です。本大会では「国公労連組織強化拡大3か年計画」を議案提案し具体的な拡大目標の設定や重点対策組織への支援、「減らさず増やす」とりくみの実践などを提起しています。労働組合の「見える化」と、対話による要求組織や組合員から信頼される組織づくりをすべての職場で実践していこうではありませんか。





組合員の減少に歯止めかけ、全員参加型で仲間づくりを


 大会議長に、唐井祐樹(全労働)、小池浩之(全経済)、丹羽秀徳(全司法)の各代議員を選出し、2日間にわたって討論が行われ、この1年間の運動の到達点や運動方針をめぐって35人が発言しました。

国民本位の行財政・司法・確立にむけたとりくみ
 国民本位の行財政・司法確立にむけたとりくみでは、「公共サービス拡充署名の前進が全司法大運動とリンクして大きな賛同につながった。コロナ禍での仲間の奮闘が理解されてきている。ネット上でも公務員賃金を下げるべきでないという意見が多数だ。国民の怒りは菅政権に向いている。この潮目の変化を組合員の中にも浸透させて要求実現とともに社会変革へ奮闘したい」(全司法)、「コロナ禍で行政体制の脆弱さが浮き彫りになり国民の期待は大きくなっている。一方で官邸主導で行政が歪められている。名古屋入管で起こった死亡事件での法務省の対応は許されない。民主的な行財政・司法の確立に向け奮闘したい」(国交労組)、「全法務の増員請願書名が衆参で請願採択された。次期国会でも請願書名にとりくむ。法務省も災害復旧時の家屋倒壊等での登記事務に奮闘している。しかし大幅に職員を減らされ支障をきたす状況だ。増員署名とあわせて公共サービス拡充署名に全力をあげる」(全法務)、「公共サービス拡充署名で地元国会議員事務所30か所への要請行動を展開し12人が紹介議員となった。一昨年9人、昨年10人で着実に増やしている。引き続き奮闘する」(北海道)、「もともと職員数がギリギリのところにコロナ対応が加わり国立病院の現場は限界が来ている。病床拡充が課題なのに政府は感染症病床を減少させている。国立病院で全国2万床以上のコロナ病床を運営しているが職員は疲弊しており、国立病院の強化拡充を求める請願署名に引き続きとりくむ」(全医労)、「通常国会で少年法の改正が成立した。これは公職選挙法の適用年齢が18歳に引き下げられたことによるもの。日弁連などが反対し全司法も反対のとりくみを行い世論も広がった。5年後に見直しがあるので、更生させ社会に送り出す役割の少年法の理念を守るため引き続きとりくみを進める」(全司法)との発言がありました。

労働条件改善、国民的課題のとりくみ
 
 労働条件改善をめざすとりくみでは、「組合員に対し分限免職の処分が行われた。上司によるパワハラなどにより休みがちとなり、人事評価で低評価が続いた。ADHDの病名も判明したにもかかわらず処分を強行してきた。人事院に不服申し立てを行い全面的にたたかっていきたい。ご支援を」(全国税)、「人事院北海道事務局との交渉で寒冷地手当の改善に力を入れてきた。特に再任用職員や非常勤職員にも支給させるようにとりくんでいる」(北海道)、「大雨で九州北部で大きな被害が出た。河川事務所の仲間は大雨の影響で13日間連続勤務となるなど奮闘してきている。このような状況で賃下げは許されない。人事院九州事務局との交渉でも労働条件の改善を強く求めてきた。定年延長における賃金水準改善と退職手当改悪反対のとりくみ強化をお願いしたい。また九州ブロックでは女性交流集会をオンラインで実施し成功させた」(福岡)、「退職金見直しで改悪されれば定年延長と合わせてダブルで不利益を被ることとなる。とりくみの補強をお願いしたい。全国一律最低賃金制度の実現、来春闘でのビクトリーマップのとりくみを進めたい」(埼玉)、「高齢期雇用の働き方について事業所に指導を行っている。大企業では65歳以上の3割の方が働いている。事業所には21年4月から70歳までの雇用の努力義務がある。国の職場でも仕組みが必要」(全労働)、「東日本大震災から10年が経過。復興に向けて国公労連の仲間の支援が励みとなった。岩手では災害公営住宅に高齢者の方が多く入居されているが大規模な造成工事は大幅に遅れている。首都圏で大規模地震災害時に30分以内に職場に出勤できなくなっている。宿舎の拡充が必要」(岩手)、「コロナ禍の中で職場ではサーキュレーター・消毒液の設置、事務機器の消毒などあらゆる対策を講じている。しかし1か月で150人ほどの感染者が発生している。職員の感染対策強化を国公労連として追求してほしい」(全労働)、「国立ハンセン病資料館を不当解雇され1年半が経過。この間2万筆超の署名と200万円超のカンパが寄せられ感謝したい。夏に都労委で和解が成立し解決する予定だったが復職は認めないと相手方が和解を拒否してきた。そのため審問が継続され年内に結審し命令が来春に予定されている。引き続きの支援をお願いしたい」(国公一般)、「福島原発事故の汚染水の海洋放出が来年行われることとなり風評被害が懸念されている。この間の裁判でも東京電力は被災者へ寄り添った対応をしていない。再稼働が狙われていたり青森の大間で原発の建設が進んでいる。原発再稼働反対と復興のとりくみに全力をあげる」(東北)、「年金機構では正規職員1万1000人、非正規職員7000人が働いている。正規職員10人、非正規職員20人で窓口対応を行ってる部署もあり非正規職員が正規職員と変わらない業務を担っている。非正規職員の処遇改善に奮闘したい」(全厚生)、「中央最賃の指針より高い地方が多くなってきたのは最賃引上げへ世論が味方になっているのではないか。全労連の記者会見に参加しNHKでも放送され世論に訴えることができた。非常勤職員の処遇については病休の有給化が大きな課題。再任用職員の処遇も可視化していくことが必要だ」(国公一般)、「厚労省において非正規公務員の無期転換が行われていない。コロナ禍でとりわけ非正規労働者は厳しい実態にある。非正規公務員の処遇改善キャンペーンの成功に向け力を入れてほしい」(全厚生)、「定員査定が純増となり定員合理化計画が形骸化してきている。非常勤職員の課題では無期転換が必要で政府・人事院の追及強化を求める。赴任旅費については改善されてきたが引き続きのとりくみが必要。引き続き組織拡大に力を入れていく」(全労働)、「全国税の発言を受けて、職場における障がい者への理解を広げることや、医療を受けられる体制の確保、定員増などで働きづらい職場の改善、ハラスメント解消などにとりくむ決意だ」(国交労組)、「社保庁不当解雇撤回闘争は裁判では勝利できなかったが、教訓、経験の財産を得た。引き続きたたかう決意だ。コロナ対応で感染研の定員が倍化されたが、急に定員が増えても効果は先になる。将来につながる体制として維持発展させたい」(全厚生)、「非常勤職員の処遇改善は各省予算に縛られている。各単組における非常勤職員の賃金・一時金の状況などを把握し、共有していくことを求めたい」(京都)、「コロナ禍でも討論集会、労働学校、女性交流集会をオンラインも活用し実施。新幹線が開通し県をまたぐ異動が多くなり人事院交渉では通勤手当の改善が強い要求になっている。国会議員要請では昨年の7名から10名に紹介議員が増加。コロナ禍で尻込みするのでなく、できる方法を探し実施することが大切」1、「行政相談を実施し26件の相談がありチラシも1500枚配布。とりくめば注目が集まる。行政が国民生活にどうかかわっているのか知らせることが大事。コロナ対策相談会など神奈川労連に結集し奮闘している。地域の運動とタイアップしとりくみを進めることが重要。高卒初任給が最低賃金に満たない問題の追及強化を」(神奈川)、「公共サービス拡充宣伝行動を月1回実施している。春闘では地域総行動やビクトリーマップ運動も展開。コロナ禍でもプラスターを掲げて市民との対話ができている」(熊本)、「コロナ禍で街頭宣伝が5回しかできていないが、SNS発信、オンライン説明会など工夫している。非正規公務員の雇い止め問題は深刻。非正規の仲間が気軽に交流できる場を設けるなど工夫を」(兵庫)との発言がありました。

組織強化・拡大、国公共済会拡大のとりくみ
 
 組織強化・拡大のとりくみでは、「労働基本権の課題は組織拡大と合わせたとりくみが必要。労働組合に自分はかかわらなくていいと思う人が増え組織の減少が進んできている。しかし労働者は自分で奮闘して要求実現していくことが重要。そのためにも労働基本権の回復を組織問題と位置付けて奮闘したい」(国交労組)、「全医労では今大会で残念ながら増勢にはならなかった。新年度に向け2000人以上の仲間を向かい入れるとりくみに奮闘する」(全医労)、「国公共済会への加入促進が必要。各単組に還元金が入ってくるので県国公の財政も健全化していくと思う。そのためにも各単組に国公共済会の加入促進に力を入れてもらいたい」(富山)、「国公青年フォーラムの運営強化が必要となっているが、国公労連本部で青年役員が配置されないと聞いている。このことは残念でならない。青年役員の配置、女性協の発展に向けた女性役員の配置をお願いしたい」(全司法)、「今年の人勧でも青年層の賃金改善を行わなかったことに対し怒りを感じる。政府・人事院に青年の声を届けることが重要になっているが拡大が進んでいない。青年層での魅力ある活動を展開するためにも国公青年フォーラムに役員の選出をお願いしたい」(国交労組)、「職場を基礎とする日常活動と国公産別運動の発展が重要。地域の運動の核となるのが県国公の活動だ。全通信は10地域で県国公に結集しているが役員の世代交代がうまくいかず悩んでいるところも多い。引き続き県国公への結集を強めたい」(全通信)、「多くの女性が求めいていた不妊治療が実現できたことは大きな成果。ジェンダー平等を重視し女性役員を増やす重要性とともに非常勤職員や障がい者の方に役員になってもらうことも必要だ」(全司法)、「組織人員の減少に歯止めがかかっていないが、すべての支部で要求書を提出し交渉する、新聞を全組合員に配布する、新規採用者や未加入者に加入を呼びかけ、とりわけ30歳未満の未加入者の拡大に奮闘したい」(全法務)、「職場に労働組合がなければどうなるのか、その分岐点に直面している。労働組合の必要性は職場で起こる課題を解決することで実感できるが、労働基本権がない中で処遇の前進があってもわかりづらい状況で、多くの組合が役員の請負活動になってしまっている。組織拡大とじっくり向き合いながら3年で1万人組合員回復に向け奮闘する」(国交労組)との発言がありました。

財政方針 財政と運動を両輪で動かす
 
 2020年度一般会計、特別会計共に予算の範囲内での執行となりましたが、コロナ禍の影響により従来型の運動が困難であったことから、2019年度に引き続き繰越金が大きくなったことを報告しました。2021年度予算については、納入人員減少が続く中、会費値上げは実施せず、山積する課題に対応する運動を保障し、効率的かつ適正な執行に努めることを提案しました。
 予算等小委員会では、会費納入について、これまで以上に組合員への丁寧な説明が求められており、組織人数が減少やコロナ禍のもとで、目標に向かっての運動のすすめ方、財政と運動を両輪で動かしていくべきなどの意見が出されました。
 以上の予算等小委員会の報告を受け、決算報告・会計監査報告は拍手で、2021年度財政方針案等は満場一致で可決されました。

国公共済会 青年層の加入拡大を
 大会に提案された国公共済会2020年度事業・活動報告および2021年度事業活動・方針案、役員体制案はいずれも満場一致で承認されました。
 具体的には、この一年間加入者で約800人の減少、掛金収入で約5000万円の減収となっており、毎年歯止めがかかっていません。共済会は、この状況を打破するため、昨年に引き続き、各級機関の執行委員会で「5分間学習運動」を行い、また青年層の加入拡大に力を入れるため、ワンコイン共済プレゼント対象者に共済会のアンケートの実施とクオカードのプレゼントを行うことを確認しました。
 また、規約・規程について、日帰り手術見舞金の創設と、シニア共済の通院給付額1200円(現行1500円)に変更することを含む改正案を提起しました。この改正案は、第157回定期大会で決定することとし、各級機関で議論していくことを確認しました。
 
青年フォーラム活動報告 次世代を担う仲間づくり


 国公青年フォーラムは昨年11月1日にオンラインで2020年度総会を開催しました。討論では「コロナ禍で見えた職場の実態」や「青年層の賃金・仕事について感じること」など発言があり、あわせて要求や労働組合に関する疑問を解決する分科会を開催し、青年運動について真剣に考える機会となりました。
 今年の2月11日には「春の国公青年セミナー」を、6月20日に「夏の国公青年セミナー」をそれぞれオンラインで開催しました。各セミナーでは年金の仕組みと問題点、定年延長とわたしたちの賃金、わたしたちの労働条件の決まり方と今の情勢などについて講師を招いて学習しました。また、わたしたちの要求を政府や人事院に申し入れる交渉も実施しました。特に夏のセミナーでは国会議員との懇談も行い、公務職場の現状を理解してもらえる機会となりました。これらのとりくみに参加した青年からは「今から改善のために行動することが、将来の自分に還元されると感じた。」といった感想が寄せられました。
 今年の12月4日~5日には国公青年交流集会「CONNECT」を滋賀県で開催予定ですが、開催の可否を含め運営委員会で議論をすすめています。
 国公青年フォーラムが発足して丸3年になります。青年は組織を活性化させる大きな力であるとともに、次世代を担う存在です。国公青年フォーラムは次世代を担う仲間づくりに奮闘します。

女性協活動報告 50回にわたった国公女性集会
 女性協は、男女差別のない、一人ひとりが尊重されながら、安心して働き続けられる労働条件の改善、職場環境の整備等をもとめて、毎年3回の人事院交渉を行い、春1回の内閣人事局交渉を実施しています。8月の人事院勧告で、不妊治療休暇の新設、非常勤職員の産前産後休暇の有給化と配偶者出産休暇などの新設について意見の申出がされたことは、これまでのとりくみの成果で、とてもうれしい。女性協は不妊治療ついて、母性保護学習リーフ「自分の体のしくみを知っていますか(不妊症編)」を作成し、まずは学習し理解を深めていきます。また、愚痴も積もれば要求に!と、「ランチミーティング」など「集まって話す機会」を作ることを呼びかけています。感染対策をして集まり、鶴を折りながら対話されたとの報告もあります。
 第50回国公女性交流集会はオンラインで開催し、150人超が参加しました。記念講演は、雑誌「KOKKO」44号に掲載していますので、是非ご購読ください。組合員限定でユーチューブ配信もしています。
 また女性集会では、50回にもわたる集会と運動を振り返り、育児休業制度の変遷を学習しました。参加者からは学習の重要性について意見が寄せられました。次年度も国公女性交流集会を開催します。オンラインだから参加できたとの声も大切しながら、全国のなかまとつながりあえるよう準備を進めていきます。



総括答弁
 2日間の熱心な討論ありがとうございました。全司法蓑田代議員から「潮目の変化」という発言をいただきました。私たちも「潮目の変化」を強く感じているからこそ、大会議案の「運動の基本方向と重点課題」の項を昨年の2倍の分量で記述し、国公労働運動の基調(スタンス)を明確にしました。本大会でのすべての発言が、この基調とシンクロしており、私たちが同じ方向を目指していることが確認されたと思います。多くの発言で補強された方針にもとづき、国公労連が「2つの責任と1つの任務」を果たしていくことをお互いの決意にしたいと思います。
 まず個別の発言についてコメントします。①全国税木村代議員から発言があった全国税組合員の分限免職撤回闘争について、現在不利益処分についての審査請求を人事院に提出する準備をすすめています。本件は、障がい者に対するパワハラなど深刻な問題を内在しています。国公労連として別途支援のとりくみを提起します。②予算等小委員会で発言があった剰余金処分の考え方や闘争特別会計のあり方などの課題については、次年度設置する組織財政検討委員会で検討し、国公労連としての考え方を確立したいと思います。
 運動方針案では、日常的な職場活動を活性化することと全員参加型の運動スタイルを確立することを強調しました。このことを命題とする「これからの国公労働運動を考える全国会議」に対する期待も寄せられました。大会で出されたすべての発言をふまえて3点の所感を申し上げます。

労働組合が労働者の要求を実現できる 
 1点です。昭和女子大学の木下武男名誉教授が『労働組合とは何か』という本の中で次のように述べられています。「多くの人は、生活が苦しいのは政治のせいであり、政治さえ変えればよくなると思っている。政党も、政治を変えれば世の中がよくなるかのように喧伝する。政治を変えるのが政党の役割だから、そう主張するのも当然かもしれない。しかし、労働者の働き方を変えられるのは、政治家でも、官僚でも、裁判官でも、警察でもない。労働組合なのだ。なぜなら、社会には社会のルールがあるからだ。働き方は、労使自治というルールにもとづいて決められる。労働組合と経営者が交渉し、話し合いで決めるのだ。その取り決めこそが社会の根本である。政治が決める国の制度はその後にくるものだ。現在は絶対主義の時代でもないし、日本は専制国家でもない。労働者の働き方は国家の権力が決定するのではない。労使が交渉し、対立し、そして妥結する。この労使自治のフィールドでこそ働き方は決められる」―この最後のフレーズは官民に共通する基本だと思います。そうであれば労働組合の力の源泉は職場にあると言えます。私たちは職場から労働組合の力を大きくし要求実現につなげていかなければなりません。

信頼関係をつくりあげよう
 2点目です。全厚生盛田委員長から組合のメリットは団結できることだという発言がありました。私も労働者の権利として団結権を行使できること自体がメリットだと思います。私は昔民間労組が実施した労働組合に対する意識アンケートを調べたことがあります。その回答の中で組合員はさまざまな思いを労働組合に持っていることがわかりました。「『明るく風通しの良い職場』『働きがいのある職場』をつくるため」「誇りを持って仕事をするため」「弱い立場の組合員を守ってくれる」「組合員を孤立から守ってくれる」「労働組合として会社に意見を言ってくれる」「組合員の(利益の)ために行動してくれる」「労働条件・職場環境を改善してくれる」「必要な情報を提供してくれる」「職場の問題を解決してくれる」「組合員の相談にのってくれる」「レクレーションなどをつうじて多くの仲間と交流できる」などです。これらを総じて一言で言えば、労働組合に対する信頼だと思います。組織の強化・拡大のとりくみにあたっては、労働組合と組合員との信頼関係をつくることがとても大事だと思います。

全員参加型で組合員を主体に
 3点目です。戦後日本を代表する憲法学の権威で、多くの大学で教科書として使われる「憲法」(岩波書店)の著者、故芦部信喜東大名誉教授(1999年死去)が、日本国憲法公布直後の1946年11月15日、23歳で書いた論考の存在が今年6月明らかになりました。「新憲法とわれらの覚悟」の題名で、新憲法ができても、国民自身が主体となる意識を持たなければ国は変わらず、権力者に支配されない主体である自覚を持つことを説いており、専門家は「現代への問い掛けにもなっている」と話しています。この言葉を借りれば、組合員が主体となる意識、主体である自覚を持つことが重要であり、全員参加型の運動スタイルとは、イコール組合民主主義の具現化と言えるのかもしれません。
 以上3点の所感を申し上げ、総括答弁に代えさせていただきます。



 

国公労連本部新執行体制

 役員選挙では、すべての候補者が信任され、新執行体制が決まりました。今大会で、中央執行委員の伊吹五月氏(全労働)、森慧佑氏(全司法)、会計監査委員の奥田智子氏(全経済)が退任し、新たに中央執行副委員長に千葉美明氏(全労働)、中央執行委員に笹ヶ瀬亮司氏(全法務)、丹羽秀徳氏(全司法)、会計監査委員に大谷孝一郎氏(全経済)が就任しました。





 
要求を出発点に「全員参加型」運動を
2022年要求組織アンケート


 国公労連は2022年春闘にむけて、「2022年要求組織アンケート」(5・6面に掲載、基本集約日11月5日、最終集約日11月26日)にとりくみます(10月が集中期間)。
 アンケートは、組合員をはじめ、職場の労働者の要求と意識を一体的に把握し、春闘要求の確立や今後の組合運動に活用することを目的に実施します。また、本アンケートを組織拡大・強化のツールとして位置づけています。感染対策を十分にしたうえで、全組合員からの集約と未加入者などへの対話を実施し、対話をつうじて組織拡大をめざします。

コロナ禍で悪化する国民生活
 
 現在、コロナ感染拡大の「第5波」が押し寄せ、日本経済や労働者・国民の生活に深刻な影響を及ぼしています。新型コロナウイルスの影響を受けた倒産(法的整理または事業停止、負債1000万円未満・個人事業者含む)は2022件(法的整理1868件、事業停止154件)にのぼり、昨年の500件あまりから4倍にも増加しています(帝国データバンク)。
 労働者の実質賃金も対前年度比で5万2000円マイナスと悪化する一方、大企業の内部留保はこのコロナ禍においても7兆円も増加しています(図参照)。
 新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないなか、逼迫する医療現場や国民生活を支えることが求められており、いまこそ政府の責任と役割を発揮すべきです。

賃下げを許さず、賃上げで生活改善を
 
 今年の勧告は、民間の21年春闘や一時金の結果が大きく影響し、給与は据え置き、一時金は0・15月のマイナスと厳しいものとなりました。
 災害時やコロナ禍などをはじめ、様々な緊急事態に対して最前線で国民のいのちと生活を支えている国公労働者の奮闘に冷や水を浴びせるものであり許されません。このマイナス勧告は賃下げのスパイラルを誘発する危険性を持っており、来春闘へ影響するおそれがあります。賃下げを許さないとりくみを強めるとともに、生活改善できる大幅賃上げを22年春闘で実現するため、世論を高めていく必要があります。

多くのなかまの要求を束ねよう
 労働組合は、要求で団結する組織であり、職場の組合員・労働者の生活実態や組合員一人ひとりの要求が出発点になります。
 より多くの要求を組織すること、より多くの組合員・労働者が要求確立にむけた議論に参加し、要求を練り上げることが大切です。このアンケートのとりくみをつうじて、組合員一人ひとりが要求に責任と確信をもち、全員参加型の運動で多くの仲間を組織し、22年春闘での要求前進を勝ちとっていきましょう。