国公労新聞2021年9月25日号 第1572号

【データ・資料:国公労新聞】2021-09-25
浅野書記長にインタビュー 秋年闘争のポイント
組合員みんなが力を寄せて 要求を前進させよう



コロナ失政で動く政局
国公労働者の切実な要求実現を


Q. 現下の政治情勢と国会審議の動向について教えてください。

A.
 菅首相が9月3日に辞任を表明しました。コロナ失政に対する厳しい批判を受け、内閣支持率が危険水域といわれる30%を割り込む中での辞任劇でした。
 コロナ禍での国民の苦しみをよそに、自民党総裁選挙が9月17日告示、9月29日投開票で争われています。10月21日の衆議院議員任期満了日を控え、この秋の衆議院選挙をにらんで政局が大きく動いています。衆議院選挙では、国民のいのち・くらしを最優先する社会の実現と国公労働者の切実な要求の実現をめざし、国公労連が提起する「衆議院選挙闘争方針」にもとづき、積極的な職場議論と権利行使を呼びかけます。
 このような情勢のもとで今後の国会審議の見通しも立っておらず、人勧の取扱いも不透明です。私たちは一時金0・15月削減には断固反対していますが、もし仮に衆議院選挙の日程の影響で給与法の成立が遅れた(12月の賞与支給に間に合わなかった)場合、一時金0・15月分を月例給でマイナス調整する可能性も否定できず、組合員の生活への影響を最小限にとどめていかなければなりません。


公務員への国民の期待広がる
公共サービスの体制拡充へ奮闘を

Q. 今秋闘の重点となるとりくみは何ですか?

A.
 コロナや自然災害などへの対応で、エッセンシャルワーカーとしての公務員の役割に国民・住民の皆さんの期待や信頼が広がっています。
 この間とりくんだ「公務・公共サービスの拡充を求める請願署名」の国会議員要請では紹介議員が増えていますし、各単組の請願署名の国会採択、42年ぶりの純増査定など、私たちの運動は国民・住民の支持を受けて着実に前進しています。
 今秋闘では公務公共体制拡充運動を柱に、来年の通常国会での請願採択にむけて、新たな請願署名をとりくみます。この署名を軸に、宣伝活動や要請活動を展開し、政治を変える、世論を変える運動に職場・地域から奮闘します。


361市町村で高卒初任給最賃割れ
低賃金打破と地域間格差の解消を

Q. 賃金の地域間格差解消するためにはどういう運動が必要ですか?

A. 
今年は多くの地方最低賃金審議会で中央最低賃金審議会目安どおりの28円引き上げとなり、全国加重平均で930円(現在902円)となりましたが、この改定で国家公務員の高卒初任給が最賃を下回る地域がさらに増えました。国公労連のデータによると361の市町村で最賃割れとなっています。公務員は最賃法が適用されないとはいえ、本来率先垂範すべき国が最賃違反が疑われる運用を続けています。そのことによって、公務員賃金が社会の低賃金構造を固定化させていることは問題です。
 国公労連は先日の大会で発表した「賃金の地域間格差解消戦略PT最終報告書」で、公務員賃金と地域経済は、密接な相互作用があり、公務員賃金と最賃や生活保護など社会保障をセットで地域間格差の解消を求めていく必要があることを明らかにし、公務員賃金闘争の基本方向を提示しました。この報告書を活用して、全国で地方議会や自治体等との懇談を行い、私たちの運動に対する支持を広げます。


非常勤職員の処遇改善や
霞が関でのキャンペーンを立ち上げ

Q. 方針で提起されているプロジェクトやキャンペーンについて教えてください。

A. 
増員を含む長時間労働の是正、非常勤職員の雇用の安定や均等待遇に集中的にとりくむ「持続可能な公務プロジェクト」を開始します。このプロジェクトでは、現場の職員・組合員を主体としたチームを立ち上げ、目標達成までの具体的とりくみの検討、タイムラインの作成などを行います。当面、年末までにつぎの2つのプロジェクトチーム(PT)を立ち上げます。
 ①「霞が関PT」各単組の本部・本省支部や国公労連本部の役員等で構成し、本省庁での不払い残業や長時間労働問題に重点を置いた「霞が関キャンペーン」を準備・実施します。
 ②「非常勤PT」現場の非常勤組合員、各単組の非常勤担当役員、国公労連本部の役員等で構成し、職場における常勤・非常勤職員間の不合理な格差解消を求める「格差解消キャンペーン」を準備・実施します。
 また、リニューアルする「告発フォーム」を活用し、歪められた行政を正し、公正・民主的な行政の実現をめざす「公務員の誇りを取り戻す 行政民主化キャンペーン」を展開します。


仲間づくり講座をスタート
全員参加型・対話型の組織拡大へ

Q. 大会で決定された組織強化・拡大に向けた新しい方針を教えてください。

A. 
国公労連は先日の大会で、「組織強化拡大3か年計画」を決定しました。「減らさず増やす」を合言葉に、5年前の組織回復を目に見える、手が届く目標に設定し、すべての組織でこの計画に基づくとりくみを具体化します。
 このとりくみを実践的なものとするため、「仲間づくり講座」(連続開催)をスタートさせ、全員参加型・対話型の活動スタイルの構築をめざします。
 「仲間づくり講座」は節目毎に戦略的ゴールを設定し、それに向かって議論・計画をすすめ、最終的に組織強化拡大3か年計画の目標達成につなげるきっかけづくりの講座をめざします。
 運動の活性化をはかるうえで、全員参加型の運動スタイルへの転換が重要です。そのためには、労働組合活動の基本である職場を基礎にした活動をどう展開するかが課題となっています。来年4月に開催する「これからの国公労働運動を考える全国会議」では、全員参加型の活動スタイルをいかに築き上げるのかを議論します。すべての職場で組合活動の問題点を洗い出し、ひとり一人の要求が前進する運動を構築するために、全国会議に向けて組織的議論のプロセスを大切にして、その問題点などを全国会議で共有し全員参加型の運動スタイルの構築につなげます。おおいに議論をすすめましょう。
 また、ジェンダー平等(とりわけ労働組合におけるジェンダー平等)を実現し、誰もが安心して働き続けられる労働条件や職場環境を構築するため「ジェンダー平等推進チーム」を設置し、①労働組合運動への女性の参加促進、②機関役員における女性比率の向上、③大会などの方針決定の場への女性参加比率の向上(クォーター制を含む)などについての課題を検討します。




 
21人勧取扱い  政府は責任ある対応を
単組書記長参加で政府と中間交渉


 8月10日に出された人事院勧告について、政府内部で取扱いに関する検討が行われています。そうしたもと、国公労連は、政府との人勧の取扱いにかかる中間交渉を実施しました。交渉には、各単組書記長も参加し、政府・内閣人事局は中井総括参事官が対応しました。
 冒頭、浅野書記長から要求書に対する検討状況について政府を質したところ、第1回給与関係閣僚会議において「労働基本権制約の代償措置の根幹を成す人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立って、国政全般の観点から給与関係閣僚会議において検討を進め、早急に結論を出す必要がある旨、確認されたところ」とし、「今後、適切な時期に改めて給与関係閣僚会議が開催されることとなっている」との回答がありました。
 この回答を受け、各単組書記長から非常勤職員、再任用職員を含む一時金の引下げ反対、自己負担解消にむけた通勤手当の改善、客観的な勤務時間管理の適切な運用と長時間労働の是正、定員削減計画の撤廃と行政需要に見合う増員、安心して働ける定年延長制度の実現、再任用職員のフルタイム任用の確保と処遇改善、無期転換制度など非常勤職員の安定雇用と均等待遇の実現、運用面も含めた赴任旅費の改善など、組合員の切実な要求と職場実態をふまえた追及を行いました。
 この追及に対し中井総括参事官は、定員について「業務の状況をみながら今後も査定を行っていく。定年引上げにあたって各府省が必要な新採確保をできるよう進められるよう内部で議論している」、再任用職員について「人事院に対して実際に頑張った人をちゃんと報いるような対応をお願いしているところ」、非常勤職員について「一時金の引下げと言うことになった場合、我々としては減額調整を全府省一律に求めるものではない。常勤職員との権衡を考慮しながら各府省において適切に対応いただきたい」、長時間労働是正について「勤務時間の客観的把握を8月までに始めるよう人事管理運営方針で定めている。地方支分部局においても業務・勤務形態の多様性に配慮しつつ最も効果的な方法を遅滞なく措置するようお願いしている」などと再回答がありました。
 最後に浅野書記長は、「一時金削減には断固反対だが、仮に衆議院選挙の日程の影響で給与法の成立が遅れた(12月の賞与支給に間に合わなかった)場合、月例給でマイナス調整する可能性も否定できない。組合員の生活への影響を最小限にとどめるべきだ」「今年の最低賃金の改定で、国家公務員の高卒初任給が最賃を下回ると考えられる地域がさらに増えた。国家公務員は最賃法が適用されないとはいえ、本来率先垂範すべき国が、最賃違反が疑われる運用を続けることによって、公務員賃金が社会の低賃金構造を固定化させていることは問題だ」と延べ政府に責任ある対応を求めました。