国家公務員の生活悪化と負のスパイラルにつながる賃下げは許さない!
2021年人事院勧告の取扱いに関する閣議決定にあたって(談話)

【私たちの主張:私たちの主張】2021-11-24
2021年11月24日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 浅野 龍一
 
 政府は本日、第3回給与関係閣僚会議を開き、本年の人事院勧告の取扱いについて、一時金の引き下げを含め勧告どおり実施する方針を決定した。その後の閣議においても同様に方針決定がなされた。
 国公労連は、政府・人事院に対し、新型コロナや頻発する自然災害の対応をはじめ国民のいのちとくらしを守るため昼夜を問わず奮闘している公務労働者の労苦に報いる賃金改善を求めてきた。また、コロナ不況で悪化している日本経済の景気回復を図るためには、すべての労働者の賃上げで内需を拡大することが求められていることから、社会的影響力を持つ公務員賃金の改善を求めてきた。しかし、現下の情勢に適応した政策判断を求めた国公労連の主張を受け入れず前述の閣議決定を行った政府に対し強く抗議する。
 
 この閣議決定を受けて、私たちのたたかいは国会段階に引き継がれる。国家公務員法第28条第1項において、職員の給与、勤務時間などの勤務条件を「社会一般の情勢に適応するように」するのは、第一義的に国会がその権限を持ち、その責任を負っている。現時点では給与法「改正」法案は閣議決定されていないが、今後想定される同法案の国会審議にあたり、改めて国公労連の情勢認識と要求・主張を表明する。
 日本経済はコロナ不況からの立ち直りが先進諸国より大きく立ち遅れており、労働者・国民の生活悪化の状態は依然として改善されていない。国家公務員の給与決定は労働者全体の1割を超える約770万人に影響すると言われており、現在の日本経済や物価高騰に苦しむ国民生活の実態を鑑みると、国家公務員の賃上げで労働者全体の賃上げにつなげていくべきであると考える。
 11月12日に開催された第2回給与関係閣僚会議において、国家公務員制度担当大臣は、「国家公務員のボーナス引下げはコロナから回復途上にある我が国経済にマイナスの影響を与えることも念頭に置きつつ対応していくことも重要」、「今般の勧告については、国政全般の観点、特に現在検討が進められている経済対策等政府全体の取組との関係も見極めることが必要ではないかと考えて」いるとし、「その際、人事院勧告の実施に当たっては、本年度の引下げ相当分を、来年6月のボーナスから減額することで調整を行うことも含め、引き続き検討を進めてはどうかと考え」ると発言している。政府内にも国家公務員の給与決定が日本経済へ与える影響を懸念する声がある。経済対策との関係を言うのであれば、一時金の引下げを来年6月に先送りするのではなく、日本経済に深刻な影響を与える国家公務員の一時金引下げは行うべきではない。
 新型コロナの影響が続き、民間における年末一時金闘争や来年の春闘も引き続き厳しい情勢の中でたたかわれることが想定される。公務員賃金が引き下げられることになれば、賃下げのスパイラルがいっそう強まり、来年の人事院勧告にむけても悪影響が及ぶことが考えられる。
 新型コロナ禍や頻発する自然災害をはじめ、国民のいのちやくらし、権利を守るためにコロナ感染をおそれながらも、公務労働者は現場で奮闘している。一時金の引下げは職員の奮闘に冷や水を浴びせるものであり、モチベーションの低下は免れない。政治がその役割を果たさない下で、国会議員への厳しい批判がある一方、新型コロナウイルス感染症への対応やあいつぐ自然災害への対応で奮闘する公務員へのねぎらいの言葉などはあっても、批判は聞こえてこない。この間、森友・加計学園問題や桜を見る会など政治による行政私物化の問題もあり、行政不信を招いてもおかしくない状況のなかで、行政に対する信用・信頼を維持していることは、現場の職員の奮闘があるからこそである。
 こうした情勢認識に立つならば、国会が議論すべき焦点は、公務労働者の賃下げではなく、積極的な賃金改善に当てられるべきである。
 国公労連は、組合員の利益と権利を守るため、一時金の引下げを許さず、公務労働者の賃金改善と諸要求の実現にむけて国会でのたたかいに全力をあげる決意である。