国家公務員の生活悪化と負のスパイラルにつながる賃下げは許さない!!
――「改正」給与法案の閣議決定にあたって(談話)

【私たちの主張:私たちの主張】2022-02-01
2022年2月1日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 浅野 龍一
 
1.政府は本日、昨年の人事院勧告にもとづき一時金の引き下げを含む「改正」給与法案を閣議決定し、第208回通常国会に上程した。同法案では、2021年度の一時金引下げ相当分を、当該年度を越えて今年6月支給の一時金(期末手当)から減額調整することとしている。
 国公労連は、政府に対し、新型コロナや頻発する自然災害の対応をはじめ国民のいのちとくらしを守るため昼夜を問わず奮闘している公務労働者の労苦に報いる賃金改善を求めてきた。また、コロナ不況で悪化している日本経済の景気回復を図るためには、すべての労働者の賃上げで内需を拡大することが求められていることから、社会的影響力を持つ公務員賃金の改善を求めてきた。しかし、現下の情勢に適応した政策判断を求めた国公労連の主張を受け入れず前述の閣議決定を行った政府に対し強く抗議する。
 
2.この閣議決定を受けて、私たちのたたかいは国会段階に引き継がれる。国家公務員法第28条第1項において、職員の給与、勤務時間などの勤務条件を「社会一般の情勢に適応するように」するのは、第一義的に国会がその権限を持ち、その責任を負っている。同法案の国会審議にあたり、改めて国公労連の情勢認識と要求・主張を表明する。
 
(1)日本経済はコロナ不況からの立ち直りが先進諸国より大きく立ち遅れており、労働者・国民の生活悪化の状態は依然として改善されていない。国家公務員の給与決定は労働者全体の1割を超える約770万人に影響すると言われており、現在の低迷する日本経済の状態や物価高騰に苦しむ国民生活の実態を鑑みると、国家公務員の賃上げで労働者全体の賃上げにつなげていくべきであると考える。
 政府内にも国家公務員の給与決定が日本経済へ与える影響を懸念する声がある。日本経済へ与える影響を懸念するのであれば、一時金の引下げを今年6月に先送りするのではなく、一時金の引下げそのものを行うべきではない。
 新型コロナウイルスの新たな変異株(オミクロン株)の感染拡大が続いており、今年の春闘も厳しい情勢の中でたたかわれている。公務員賃金が引き下げられることになれば、賃下げのスパイラルがいっそう強まり、今年の人事院勧告にむけても悪影響が及ぶことが考えられる。
 
(2)今回の減額調整は、今年6月に支給を受ける職員のうち、昨年12月の一時金の支給を受けた職員を対象としているが、今年3月で定年退職した職員で引き続き4月から再任用される職員の6月支給の一時金からも減額調整するとしている。定年退職によって公務員の身分は消滅するため、当該職員の在職時の公務員の身分に付随する不利益措置を退職後まで引き継ぐ今回の調整方法は到底納得できるものではない。
 
(3)新型コロナ禍や頻発する自然災害をはじめ、国民のいのちやくらし、権利を守るためにコロナ感染をおそれながらも、公務労働者は現場で奮闘している。一時金の引下げは職員の奮闘に冷や水を浴びせるものであり、モチベーションの低下は免れない。政治がその役割を果たさない下で、国会議員への厳しい批判がある一方、新型コロナウイルス感染症への対応やあいつぐ自然災害への対応で奮闘する公務員へのねぎらいの言葉などはあっても、批判は聞こえてこない。この間、森友・加計学園問題や桜を見る会など政治による行政私物化の問題もあり、行政不信を招いてもおかしくない状況のなかで、行政に対する信用・信頼を維持していることは、現場の職員の奮闘があるからこそである。
 こうした情勢認識に立つならば、国会が議論すべき焦点は、公務労働者の賃下げではなく、積極的な賃金改善に当てられるべきである。
 国公労連は、組合員の利益と権利を守るため、一時金の引下げを許さず、公務労働者の賃金改善と諸要求の実現にむけて国会でのたたかいに全力をあげる決意である。
 
3.既に22国民春闘が本格的にスタートしている。全労連・国民春闘共闘委員会は、ケア労働者の大幅な賃上げを勝ち取り、地域の賃金水準の底上げを図るため、「ケア労働者の大幅賃上げアクション」を立ち上げた。単産と地域が一体となって国民世論を巻き込みながら今春闘で大きな前進を勝ち取り、この前進をけん引として、労働者全体の賃金引き上げ・底上げを図ることをめざしたたかっている。
 国公労連は、マイナス勧告による賃下げのサイクルを断ち切り、国公労働者が主体的に大幅賃上げを勝ち取るためにも、「ひとり一行動」を合言葉に、すべての組合員が職場・地域で提起される行動に積極的に参加するよう呼びかける。
 労働組合の団結の力で国民春闘の勝利をめざし、職場・地域で大いに奮闘しよう。