コロナ禍を乗り越え、働きがいのある職場づくりに向けて引き続き奮闘しよう!
――2022年統一要求に対する政府・人事院回答をうけて(声明)

【私たちの主張:私たちの主張】2022-03-24
2022年3月24日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
中央闘争委員会
 
1.国公労連が2月18日に提出した「2022年国公労連統一要求書」及び「非常勤職員制度の抜本改善を求める重点要求書」等に対し、人事院は3月23日、政府(内閣人事局)は3月24日に春闘期の最終回答を行った。政府・人事院は私たちの要求や主張に対し、「人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点から検討」(政府)、「情勢適応の原則にもとづき、必要な勧告を行う」(人事院)と従来どおりの回答にとどまった。
 コロナ不況を打開するためには、労働者・国民の所得を増やし、消費拡大をはかることが必要であり、こうした「国政全般の観点」からも労働者全体の賃上げを打ち出すとともに、770万人労働者に影響を与える国家公務員賃金を引き上げることが求められている。また、コロナ禍のもとで国民のいのちやくらしを守るために現場第一線で奮闘する職員の労苦に報いる賃金・労働条件改善が求められている。それにもかかわらず、これらの要求に真摯に応えない政府・人事院の姿勢は極めて不満である。
 
2.22春闘では、これまで以上に個人消費と内需に基盤を置いた経済社会構造への転換が求められた。コロナ不況を打開し、経済回復に向かうため、巨額の内部留保を抱える大企業には積極的に賃上げを行い、経済活動を下支えしている労働者の要求に真摯に応える社会的責任がある。しかし、経団連は、各企業が自社の実情に適した賃金決定を行う「賃金決定の大原則」に則った検討が重要であるとし、業種横並びや一律的な賃金引き上げの検討には否定的な見解を示した。一方、22春闘で全労連・国民春闘共闘委員会は、職場や地域の要求から出発することにこだわった生計費原則にもとづく要求闘争によって、賃上げの必要性を「見える化」し、社会的な世論に押し上げた。また、岸田首相にケア労働者の賃上げに言及させ改善施策を打ち出させるなど、ケア労働者先導の賃上げの動きをつくった。
 このような春闘情勢のなかで、大企業は3月16日、労働組合の春闘要求に対して一斉に回答し、1次集計の結果は2.14%(前年に比べて0.3ポイント余り高く、2%超は3年ぶり)となり、コロナ前を上回る賃上げが相次いだと報道されている。一方、全労連・国民春闘共闘委員会は、大企業に先駆けて3月9日を回答集中日に設定しとりくんだ結果、単純平均は月額5,516円(2%)で、昨年同期の346円増、2019年の52円増となった。先行回答を引き出し春闘交渉のリード役を果たすとともに、コロナ以前の賃金水準に戻すなど、労働組合の交渉力を発揮した。しかし、いずれの回答も物価上昇を上回る生活改善できる賃金水準に及んでおらず、日本は依然として低賃金構造を打開できていない。
 
3.国公労連は22春闘で、要求アンケート結果にもとづく有額要求を掲げるとともに、初任給・諸手当の改善、賃金の地域間格差の是正、非常勤職員の均等・均衡待遇と安定雇用、定年延長制度・再任用制度の運用改善、長時間労働是正・超過勤務縮減、赴任旅費の改善、行政体制拡充・定員増などの職場要求の実現を求めてきたが、政府・人事院の春闘期の最終回答は従来の枠を出ず具体性を欠いており、極めて不十分なものである。
 ① 国公労連の試算によれば国家公務員の初任給が地域最賃を下回るところがあるなど、公務員賃金が日本の低賃金構造を固定化させている側面がある。また、地域手当によって生じている賃金の地域間格差は、国公労働者に不平等な処遇をもたらしていることにとどまらず、地域経済にも悪影響を与えている。公務員賃金はすべての労働者の賃金の下支え・底支えができるスタンダードな存在でなければならず、政府にとって国家公務員の初任給改善と賃金の地域間格差の解消は喫緊の課題となっている。
 ② 非常勤職員の処遇改善について、人事院「指針」や政府「申合せ」等により一定改善されてきているが、非常勤職員の定員・処遇が「予算の範囲内」という不合理な制約があることから、十分な労働条件改善には至っていない。特に、一時金支給について、契約期間途中の切り下げは許されない。また、安定雇用をめぐっても、実質的に破綻している定員管理政策や曲解した公務員制度の根本基準や平等取扱い原則を盾に、職場実態を顧みない建前だけの回答に終始し、雇用の安定をはかる立場には立っていない。
 パートタイム・有期雇用労働法の趣旨である同一労働同一賃金の実現が社会的な要請となっている。民間では有期雇用労働者に無期転換権が保障されているなかで、国家公務員だけを対象外とする理不尽な国の姿勢は許されるものではない。3年公募の廃止、無期転換権の保障などとともに、病気休暇の有給化をはじめとする均等・均衡待遇、同一労働同一賃金の実現が待ったなしで求められている。
 ③ 政府は、賃金の後払いとしての性格を有する退職手当は、勤務条件・労働条件であることを認知し、閣議決定されている「国家公務員の総人件費に関する基本方針」にもとづく現在の見直しルールをいったん破棄した上で、退職手当の適正な水準決定のルールを国公労連との協議をつうじて整備すべきである。
 退職手当はこの10年で500万円程度一方的に引き下げられた。退職手当は職員の生涯設計にも大きく影響するものであり、単純な官民比較のみで大幅な引き下げが可能となる制度では、退職後の生活が見通せない。また、使用者が安易な官民比較だけで一方的に見直すのではなく、公務運営の公正・中立性の確保や厳しい再就職規制などの公務の特殊性を踏まえることが重要である。政府・使用者は、職員が安心して働き、安心して退職後の生活が送れるよう責務を果たさなければならない。
 ④ 通常業務に加え新型コロナウイルス対策をはじめとして政治主導で矢継ぎ早に打ち出される新規業務・新規施策などによって、職場体制は限界を超えている。2019年4月から超過勤務命令の上限規制がスタートしているが、超過勤務縮減に向けた具体的な方策が示されないなかで、上限規制だけが先行していることに加え、人事評価目標として数字(ノルマ)ありきの超過勤務縮減が優先されていることなどによって、職場ではサービス残業やかくれ残業が増加している。こうした働き方は、近年国家公務員志望者が減少していることの要因とも考えられる。
 長時間労働の是正・解消にむけては、中央省庁に限らず出先機関も含め全省庁全機関において、客観的な勤務時間の把握を徹底することをはじめ、実効あるとりくみを推進することが求められている。
 ⑤ 公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策について、2020年6月から人事院規則が施行されているが、ハラスメントの被害は後を絶たない。また、カスタマーハラスメントについても、多くの職員が被害にあっている実態にある。あらゆるハラスメントの根絶にむけて、必要な人員確保による体制整備をはじめ、実効ある具体的対策を講じることが求められている。
 ⑥ 2023年4月から段階的に開始される定年延長について、(a)年齢差別となる60歳超の給与水準、(b)一方的な不利益変更となる役職定年制、(c)就労困難職種における柔軟な対応、(d)新規採用を確保するための柔軟な定員管理、(e)再任用制度の実効性の確保などの諸問題の解決はもとより、各省庁の裁量により人員構成や職務の特性に応じた柔軟な制度運用が保障される必要がある。
 ⑦ 行政需要への対応や長時間労働の是正、非常勤職員制度、ハラスメント、定年延長と高齢期雇用、女性活躍とワーク・ライフ・バランスの推進、障がい者雇用などの問題の根底にあるのは定員問題に他ならない。政府は「簡素で効率的な行政組織を確保しつつ、重要課題に適切に対応できる体制を整備していくための重要な枠組みだと考えている」などと回答しているが、現在の定員管理政策が破綻していることは、コロナ禍で行政体制の脆弱性が浮き彫りになったことからも明らかである。国公労働者の働きがいが実感できる職場を実現するとともに、国民本位の行財政・司法を確立するためには、総定員法の廃止、定員合理化計画の撤廃・中止と行政需要に応じた定員確保が必要である。また、必要な人的体制が確保されてこそ、休暇制度をはじめとした各種制度運用の充実が実現される。
 ⑧ 今年も労働基本権の回復や人事評価制度の見直し、行政の公正・中立・透明性の確保などを求めて「国家公務員制度に関する要求書」を提出し、ILO勧告にもとづく交渉・協議の場を早急に設定するよう強く求めた。しかし政府は私たちの再三再四にわたる要求に背を向け、具体的な回答すら行っていない。森友・加計問題をはじめ、政治による行政私物化に対する国民の不信が払しょくされていないなか、それらの真相の解明とともに、公正で民主的な公務員制度の確立と行政民主化こそが求められており、引き続き政府への追及を強めていく必要がある。
 
4.国公労連は、22春闘で賃上げとともに重点課題の要求前進をめざし奮闘してきた。人事院勧告をはじめとした制度的制約もあり、春闘期で決着がかなわなかった諸課題については、引き続き人事院勧告期・概算要求期に要求実現に向けてたたかいを続けていく。
 国公労連が反対している「改正」給与法案が今通常国会で審議されている。今回の減額調整は、今年6月に支給を受ける職員のうち、昨年12月の一時金の支給を受けた職員を対象としているが、今年3月で定年退職した職員で引き続き4月から再任用される職員の6月支給の一時金からも減額調整するとしている。定年退職によって公務員の身分は一旦消滅するため、当該職員の定年前の公務員の身分に付随する不利益措置を引き継ぐ今回の調整方法は到底納得できるものではない。また、年度単位の任用期間となっている非常勤職員の一時金の「減額調整」などあってはならない。
 この法案が成立することによって、組合員の生活悪化に拍車がかかるとともに、賃下げのスパイラルにより日本経済に悪影響を及ぼすことが懸念される。コロナ禍にウクライナ危機も加わって物価上昇が続いており、労働者・国民の生活実態はさらに厳しくなることが想定される。22春闘はこれから多くの中小労組などで労使交渉が本格化する。コロナ禍だからこそ物価上昇を上回る生活改善できる大幅賃上げを求め、官民共同のたたかいに全力をあげなければならない。
 また、9条をはじめとした改憲や「戦争する国づくり」を許さず、今回のロシアによるウクライナ侵攻のように国連憲章に違反した侵略行為に対しては、日本政府として日本国憲法を生かした外交努力や戦争被害にあった国と人々に対する人道的支援を求める。
 国公労連中央闘争委員会は「ひとり一行動」のスローガンの下、22春闘の諸行動に結集されてきた全国の仲間に敬意を表するとともに、春闘最終盤までの奮闘と人事院勧告期・概算要求期へと続くたたかいへの結集を呼びかける。