「故安倍晋三国葬儀」の当日における弔意表明に関する談話

【私たちの主張:私たちの主張】2022-09-01
2022年9月1日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 浅野 龍一
 
 政府は8月31日、「故安倍晋三国葬儀」の準備に向けて関係府省庁の幹部らでつくる葬儀実行幹事会を開催し、当該「国葬儀」の実施概要を決定した。また、葬儀委員長である岸田首相は、「当日には、哀悼の意を表するため、各府省においては、弔旗を掲揚するとともに、葬儀中の一定時刻に黙とうすること」を併せて決定した。
 国公労連は「国葬儀」の実施が閣議決定された7月22日、「安倍元首相の「国葬」の実施に反対する(談話)」を公表し、その法的な諸問題を指摘するとともに、「「国葬儀」の実施に当たっては、国家公務員に弔旗の掲揚や黙とうなどの行為が指示され、より強力に弔意の表明を強要することが想定される。(中略)これらの職務命令は、日本国憲法第15条、第19条及び第20条に違反する疑いがあるとともに、国家公務員の公正・中立性をないがしろにするものである」ことを主張し、その実施に反対してきた。
 最近のマスコミ各社が実施した世論調査では、「国葬儀」の実施に「反対」が過半数を占め、「賛成」を上回る傾向が顕著となっている。その背景には、そもそも国の行事としての法的根拠が曖昧であることをはじめ、そこに約2億5,000万円の経費を今年度予算の予備費から支出することばかりでなく、海外の要人の警護や接遇などの経費が数十億円とも指摘されているにもかかわらず、その概算すら公表しようとしない政府の姿勢に批判が高まっていることなどがある。多くの国民が反対している国の行事に「全体の奉仕者」である国家公務員が従事させられることは、およそ看過できるものではない。
 とりわけ黙とうは、国内では弔意を表明するための行為として定着しており、個人の内心の自由が保障されるべき私的行為であるため、「葬儀中の一定時刻」の職務行為となれば、日本国憲法第19条が定めた思想・良心の自由を侵害する違法な職務命令になりかねない。仮に勤務時間中に黙とうが実施される場合であっても、それは職員の自発的な意思に委ねるべきであって、本人の内心に反して強要されるようなことがあってはならない。各府省は、黙とうが職員の任意により実施されるものとなるよう、必要な周知などを徹底すべきである。
 岸田首相は8月31日、「国葬儀」に関わる意見・批判などには、国会の閉会中審査において回答することを明言した。当初の閣議決定の撤回を含めて、国の行事のあり方を民主的に議論することを求める。