国公労連速報2022年6月7日《№3642》
国公労連は5月27日、2021年度運動方針および2022年夏季闘争方針にもとづき、「非正規公務員の国会アクション」を実施し、政府・内閣人事局交渉、国会議員懇談を行いました。
アクションには国公労連・笠松調査政策部長を責任者に非常勤組合員5名など計14名が参加し、職場の実態から非常勤職員の雇用の安定、均等・均衡待遇を求めました。
〈内閣人事局交渉〉
非常勤職員が更新時公募の撤廃、無期転換など雇用の安定を求める
無期転換ルールを求めるオンライン署名2,479筆、コメント86件分を提出
内閣人事局交渉は、非常勤職員制度担当の松井参事官と神保企画調整官が対応しました。冒頭、この間とりくんできたオンライン署名「非正規公務員に民間労働者と同様の無期転換ルールをつくってください!」(http://chng.it/BGVNH7q7Tw)2,479筆分と、署名に寄せられた86件分のコメントを提出しました。続いて、署名の要請項目と「非常勤職員制度の抜本改善にむけた重点要求書」にもとづき、非常勤組合員を中心に要旨以下の追及を行いました。
〇 ハローワークで非常勤職員として働いて13年目になる。入所当初は学卒部門の相談員として主に学生の支援をし、就職に導いてきた。そのほか、求人受理、事業所の担当者への助言、公正な採用選考に関する指導も行っていた。中学生や高校生は家庭環境が劣悪な方もいて、親からDVを受けていたり、ホームレス状態だったりと、様々な方が訪れた。中卒生は就職に導いたあとに定着支援が3年間続く。学校に出向いてのフィードバックも業務。涙を流しながらハローワークに助けを求めに来る学生、小さな子どもと一緒に先生と相談にくる学生もいた。子育てと仕事の両立ができる求人を開拓し、就職につなげることができた。現在は職業相談部門にいるが、コロナ禍で失職した方など、大変困窮した方が多く訪れる。所内で暴れる方もいる。様々な方がいて苦労の多い職場だが、困った方が路上に放り出される前のギリギリの状態でハローワークに来られる。そうした方が「就職できてよかった」と言ってくれるときが、本当にこの仕事をしてよかったなと思う瞬間だ。
仕事の経験を積み重ねていくなかで、正規の職員と同等のスキルが身についていった。ハローワークの支援は相談者の人生を左右してしまう重要な仕事である。しかし、現実に目を向けると、私たち非常勤職員は常に雇い止めを心配しなければいけない。社労士やキャリアコンサルタントの資格を自費で勉強して取得する非常勤職員も多いが、必要な知識・経験・スキルは、勉強や資格だけで身に着けられるものではない。年間を通してなくなることのない仕事なのに、なぜ更新の際に公開公募をするのか。私も公開公募を3回か4回経験しているが、本当につらい。さらし首にあうような感覚で、受けている本人からすれば過酷だ。こうした1年更新・3年公募の仕組みで、労働行政の質を保てるのか疑問だ。日本社会の雇用の安定を考えたとき、非常勤職員の公募はその問題を悪化させている。
ハローワークも含め、国の機関はマンパワーとチームワークで仕事をしなければいけないが、公開公募のせいでそれがうまくいかなくなっている。公募の弊害が大きい。国の本来あるべき姿勢として、公募をなくすことを求める。
〇 ハローワークで非常勤職員として13年働き、現在は労働局助成金センターで助成金支給業務を行っている。労働関係法令や社会保険関係法令の知識が必要になる仕事だ。在籍中に行政書士と社労士の資格を取得した。近年は顕著に職場での非常勤職員の割合が高くなった。私のフロアは45名中、常勤3名、非常勤42名。他のフロアは常勤不在、非常勤20名以上。以前の交渉で非常勤職員の無期転換を求めたところ、「非常勤は臨時的・一時的に置かれる官職で、無期転換は常勤化と同じだから難しい」と回答があった。制度的にはそうなのかもしれないが、実態として仕事は恒常的で、必要不可欠な業務ばかりだ。本来、常勤職員が担うべき職務を非常勤職員が担っている。常勤を増やせないからといって、非常勤が臨時的だというのは実態とかけ離れている。仕事の実態をみて、常勤か非常勤かということだけでなく、民間でいう「地域限定正社員」のような中間的な制度の検討を求める。
〇 2013年から現在までハローワークの非常勤職員として勤務し、現在はキャリアアップ助成金を担当している。有期雇用労働者を正社員にすると一人につき57万円支給される「正社員コース」が最も活用されている。非正規を正規にすることで、労働者が定着し、会社側も離職を防げる。人件費増額分の補助として国が税金を投入して正社員化を促進している制度だ。しかしその業務を担う私たちはずっと非正規労働者のままで、毎年雇い止めの不安に脅かされ、公募にかけられている。安心して働きたい。
政府は「非正規労働者を少なくしていこう、希望する方は正社員化しよう」という方針だが、私の職場は明らかに非常勤が増えている。これは政府方針と矛盾しないのか。
会社には労働者を大切することの意識も含めて、正社員化を勧めているが、内閣人事局として、私たちのような非常勤職員が安心して働けるようにしようという意思はないのか。
以上、2点に対する回答を求める。
〇 私は特許庁で非常勤職員として働き4年目になる。特許庁では非常勤職員は最大5年間、4回更新できる運用をしている。職場には非常勤職員が多く、常勤職員と同様の業務を担っている非常勤もいる。非常勤職員が雇い止めの不安を抱えながら仕事をしている状況を変えたい。人事院は、公募による採用であれば何年までという上限は設けていないと説明しているが、経産省は5年を上限としている。私はいまの職場に来る前に独法で3年働き、その前にも特許庁で働いていた。当時、突然「5年ルール」による雇止めが始まり、同じ非常勤の仲間から「どうしてこうなってしまったのか」「なんとかならないか」という声が相次いだ。内閣人事局に要請したいのは、雇用の無期転換制度だ。民間ではすでに有期雇用から無期雇用への転換が始まっていて、国の職場でも試験採用以外にそうした仕組みを入れるのは可能だと思う。
職場には派遣労働者が多くいて、派遣法改正の影響もあって非常勤職員になった方がいる。そうした方についても5年上限をなくすべきだ。
特許庁の労働組合では、雇い止め撤回の上申行動を行っている。今年は14課室に要請して11課室に賛同いただいた。特許庁としても改善していきたいという意識はあり、官房長にも要求をしている。非正規の雇い止めをやめ、何年でも安心して働ける制度にするよう求める。
〇 雇用の安定と身分保障の確立について要求する。国土交通省でも国民のニーズに対応するため、本来なら定員措置がなされなければいけないところ、非常勤職員を配置して恒常的な仕事を担わせている。非常勤職員を無期雇用にする制度が必要だ。会計年度途中で採用された非常勤職員は、初年度が数か月だとしても1年とカウントされている。私は非常勤職員として働いて2年目だが、3年を超えて働いている人がいないので、あと1年。少ない年次有給休暇を使って転職活動をしなければいけない。このような制度を変えて、安心して働けるようにすべきだ。
〇 地方整備局は全国にあるが、期間業務職員は最大5年までという運用が省内ルール化している。制度上は最も優秀な人を採用する仕組みなのに、今年も6年目の公募に応募した期間業務職員が、5年間の実績・経験があるにもかかわらず全員落とされた。更新時の公募を撤廃し、無期雇用を可能にすべきだ。採用する側も毎年のように変わるため、制度の趣旨をしっかり理解していない管理者がきて、更新の時期に妊娠している職員に対し「出産に集中した方がいい」と言っている。これが全国の職場で起きている実態だ。また、非常勤職員の病休の有給化の要求が大きい。
今年4月に非常勤職員の一時金について、常勤職員と同等の月数にするという通知が出された。今後は常勤職員のプラスの給与改定に合わせて、非常勤の給与改定も遡及して支給すべき。
私は40年仕事をしているが、昔は非常勤職員がここまで多くなかった。政府の足元である国家公務員の職場で、常時必要な職種の雇用が非常に不安定になっている。国として必要な立法措置も含めて、無期化、正規化に舵を切るべき。
「非常勤職員も安心して働ける環境が必要」と述べるも具体策なし
これらの訴えを受け、内閣人事局・松井参事官は「コロナ禍、物価高、円安など、経済状況が厳しくなるなか、日々公務を最前線で支えて頂いている皆さまに感謝と御礼を申し上げる。今お話し頂いたような日々の尽力にあらためて敬意を表する」と述べたあと、要旨以下の回答をし、国公労連側とやりとりを行いました。(●…内閣人事局、○…国公労連)
● 共通して、雇い止めに関するものや、無期雇用転換の要望が強かった。その点については昨年も同様のご意見をいただきながら、毎回同じような回答になり恐縮だが、国家公務員制度は、総定員法のなかで定員の総枠をはめてやってきている。最近はコロナの関係で定員が少しずつ増えるように変わってきたが、それまでは非常に長い期間、財政事情が悪化するなかで国民の理解を得るために、国家公務員の職員数を削減してきた。その結果、定員の方々がやっていた業務を非常勤職員が肩代わりし、結果的に非常勤職員数が増えているのではないか、というような実態になっているということかと理解している。年毎に新しい行政需要に応じた形で定員の再配置をやっており、必要な部署に定員を割り当てていく、その不断の見直しをしていくなかで定員が配置されるのが本来望ましいが、結果的に十分な定員数が配置されていないという受け止めにつながっていると理解している。財政的な制約のなかで、毎年定員を査定しているので、現場のなかから「定員を増やすべきだ」という声をあげていただき、それを査定して定員数の確保を図っていかざるをえない、それが今の制度の制約。
● その上で、いまの非常勤職員を常勤職員に任用する場合には、国家公務員法のなかで採用試験などによって常勤職員としての能力の実証を図る必要があり、無条件で常勤に任用するのは今の制度では難しい状況。雇い止めの話については、皆さま十分ご理解されていると思うが、非常勤職員制度は平成22年に従来の日々雇用から期間業務職員制度が導入され、原則会計年度内の任用で、年度が替わるときには一度区切られる実態がある。それでも日々雇用からは制度の改善がはかられた。そのなかで、例外的に公募によらない採用が認められているが、人事院の通知において、国家公務員制度の根幹である平等取扱いの原則や成績主義の原則から、原則として公募によらない採用は連続2回を限度とするよう努めることとされている。公募を経て引き続き採用されることは可能な仕組み。皆様方の現場で運用・実態と乖離しているというご意見だと思うが、国家公務員制度上、再採用を何度も行うことが国民に対して開かれた官職を狭めることになるため、公平・公正な採用をするという原則から、現状それ以上の進展がない状況。
● 政府として、非常勤職員の方々も安心して働いていただけるような環境をつくっていくことは、もちろん必要なことだと思っており、その点、日々ご苦労されていることは申し訳なく思う。制度面で、公募は根幹にかかわる部分でなかなか直ちに改善できていないが、一時金の月数の改善や、休暇、両立支援制度の改善もはかっているところ。こうした点、まだまだ足りないが、少しずつでも処遇の改善につながるよう、人事院とも連携して取り組んでまいりたい。今日のご意見、署名も賜ったので、今後私たちとして何ができるかを考えていきたい。
〇 事実上、非常勤職員が常勤職員の担っていた仕事を肩代わりしている、という回答があったが、臨時的・一時的な業務でない業務、恒常的な業務を非常勤職員が担っているという認識を持っているということでよいか?
● 非常勤職員が常勤職員の仕事を肩代わりされている、という皆さまのご意見が多かった、そういう認識でおられるのを受け止めた、という意味の回答。本来常勤職員がやるべき仕事なのかどうかは、各省・部署で判断すること。
〇 非常勤職員を常勤職員として採用するには採用試験などが必要で、無条件で常勤採用するのは難しいとの回答だったが、一定の条件のもとなら可能という考え方か?
● 総定員法という限られた枠組みのなかで行政のリソースを割り振っていかなければいけない。これを無条件で定員化するのは難しい。その条件についても、総定員法の制約のなかで、一度にすべて常勤化するのは難しく、個々必要な業務量を精査するなかで少しずつ積み上げ、確保・充当していくしかないのではないか。制度と現実のなかでかなり乖離があるというご意見は受け止めたい。
〇 「安心して働ける環境が必要だ」というのは、温かい回答だなと思った。「直ちに改善はできていない」とのことで、緩やかにでも改善していくつもりはあるのか、そうした検討はされているか? 民間の雇用情勢は日々動いていて、政府は助成金まで支給して正社員化を促している。しかし国の非常勤は増えている。そのベクトルの違いをどう考えるのか? 今後も同じ回答でいいのか。新たな制度を設けることが必要ではないか。検討状況、進捗はどうか。
● 民間では正規化が進んでいるという話については、公務は民間準拠ではあるが、民間に遅れて後追いで制度整備をしていくところがある。新しい制度についていま現実に何か検討しているわけではないが、民間の動きを踏まえて日々公務員制度も動いていくものであり、人事院の意見なども踏まえながら政府としても検討していく。
〇 労働組合本部には様々な相談がくるが、増加傾向にあるのが障害がある非常勤職員からの相談。最近あった相談は、採用直後に「上限3年だ」と上司に言われ、不安を覚えたという内容。人事院の通知「障害者を非常勤職員として任用する際の制度運用について」の趣旨について、省庁単位で障がい者雇用枠で採用されているすべての非常勤職員と、職場の管理職と各省官房秘書課にも伝えることを求める。
● ご指摘の人事院通知があり、どういった形で周知できるかというのはあるが、ご指摘いただいた内容は受け止めたい。
〇 経産省同様、国交省では5年で雇い止めするという現実がある。公平・公正を期すために公募があるという話は分かるが、一律機械的に5年で雇い止めしている国交省や経産省への指導も検討すべきだ。現実として、5年を超えた人はいない。6年続けることが公平・公正性を害するのか、それも含めた指導を求める。
● 通知の趣旨を各省がどう受け止めて運用しているかつぶさに把握はしていないが、必要があれば各省に通知の趣旨を周知していきたい。
〇 内閣人事局の回答や把握している状況と、現場の実態との乖離が大きくなっている。ぜひ現場に足を運び、当事者の声を聞くべきだ。
● 今日も貴重なご意見をうかがったが、いろいろな機会を通じて現場の声をしっかり把握していきたい。
〇 地方自治体でも、国の制度を参考にして会計年度任用職員制度が始まり、今年度末に大量に公募にかけられる実態がある。私たちと同じような思いをする地方自治体の会計年度任用職員がたくさん出る。ハローワークの窓口にも会計年度任用職員が相談に来ている。「制度の問題だから仕方がない」ではなく、国民の目線で、国全体のことを考えて何らかの措置を行ってもらいたい。働くことは生きることであり、生死を左右する問題だ。
● 会計年度任用職員制度について様々な問題があることは報道もされていて、担当は総務省となるので、そことも連携をとりながら必要な対応をとっていきたい。
最後に笠松調査政策部長は以下のように述べ、交渉を締めくくりました。
〇 本日、非常勤職員から職場の実態を話していただいた。この声を重く受け止めるべきだ。提出した署名と、寄せられたコメントにも目を通すよう求める。現場の非常勤職員、行政利用者である国民が、今の期間業務職員制度をどう考え、何を求めているのか、コメントにも表れている。
職場の実態に合わせて制度を改善していくことが重要だ。期間業務職員ができて10年以上経つ。政府としてしっかり制度改善を検討すべきであり、その姿勢が見えないことには、現場の奮闘に報いたり、敬意を表したりすることにはならないのではないか。
国公労連が昨年秋に取り組んだアンケートでも、職場での不満として雇用不安を訴える声が圧倒的に多かった。この声に政府としてどう答えるのかが問われている。担当として、我々の要求を受け止めた検討を求める。
〈国会議員懇談〉
田村智子議員と1時間にわたり懇談 非常勤課題の前進探る
交渉後、参加者は国会議員会館で、日本共産党の田村智子参議院議員(参議院内閣委員、党副委員長)と1時間の懇談を行いました。
田村議員ははじめに、国会の情勢と非常勤職員の課題について要旨以下のように述べました。
● 国会では例年、人事院勧告を受けて給与法案などが出るので、毎年質問の機会を得て、国公労連に非常勤職員の現状や質問すべき事態を聞いて質問をしてきた。
● 労働基本権が認められていないことから、国の非常勤職員は民間労働者と比べても無権利状態に置かれている。今国会では育休法改正などが行われたが、雇用期間が安定していなければ先々を見据えた育休などを取れるわけがなく、そうした土台の問題を議論しないのはありえないと感じている。内閣人事局は「国民の皆さんに公募の機会を公正に与えるため」「定員化には試験が必要」といった回答をしたと思うが、すでに働く現場で必要な能力実証がされており、何かしらの突破口をつくっていかなければいけない。定員増で定員に入れることなのか、他の手段なのか。無期で働く権利をどういう制度で構築していくべきか、国公労連とも知恵を出し合って提案しなければいけないと考えている。今はデッドロック(手詰まり)状態。
● 国民にとって必要なことは、国家公務の仕事そのものが質的に向上することであり、職員を非正規として雇い、3年でころころ入れ替えることは国民への質の担保になるのか疑問。常勤の国家公務員は女性比率が低いので、女性の多い非常勤職員を常勤職員にすれば女性比率が上がる、という提案もしてきた。
● ここ数年、政府の従来の言い分が通用しなくなってきた問題がいくつも出てきた。その一つが、正規中心の問題だが、不払い残業の問題だ。私は何度も国会で追及してきたが、前の河野太郎大臣がはじめて「不払い残業がある」と答弁した。私はあえてその答弁を持ち上げ、「すばらしい」「そうであればしっかり調査して手当すべき」という議論ができるようになった。それまでは「超過勤務ではない」と切って捨てていた問題が、1年でガラッと動いた。非常勤職員の雇用の問題も、硬直した非常識な答弁を変えさせていく必要がある。
続いて、参加者から要旨以下の発言がありました。
〇 非常勤の問題をいつも取り上げて頂きありがたい。私が働いている職業相談窓口では、2月末ごろから高齢の調理師やタクシーの運転手が長蛇の列を作っている。従来の相談に加え、コロナ禍で失職した方々で窓口は大混乱だった。私たちもコロナ感染の不安にさらされながら勤務している。去年8月にコロナに感染した非常勤職員が、1年目だったのに公募で切られてしまった。その理由は自身の感染により職場を閉庁させたというもの。コロナに感染して亡くなった非常勤職員もいた。こういうことがあっていいのかと、コロナ禍でずっと憤りを感じている。非常勤職員の問題が置き去りにされている。まずは雇用の安定が必要。処遇の改善について尽力頂きありがたいが、根本の雇用の安定がなければ意味がないというご指摘はその通り。制度のできた2010年から公募の問題だけは動いていない。
〇 特許庁で非常勤として働いている。民間で無期転換制度ができて、なぜ公務でできないのか。私どもの官署は、派遣労働者が非常勤職員として働くようになった。通勤手当が出たり、賞与が支給されたりと、よい面もあるが、同じように5年で辞めないといけない実情があり、改善させていきたい。特許庁の分会では上申行動をして課室長に要求行動をしている。庁内でも次第に理解が深まっている。また、東京地評でも活動しており、最低賃金引上げの運動をしている。公務員も最賃割れしている状況。最賃1500円はだんだん浸透してきているという面もある一方、いまだに東京は1,041円。公務の非正規労働者、ケア労働者の賃上げ、各種補助金継続も重要。会計年度任用職員の問題とも共通しており、少しでも改善していただきたい。
〇 ご挨拶に感銘を受けた。労働局の助成金センターでキャリアアップ助成金の担当をしているが、今年から「有期から無期に」というコースがなくなり、より正社員化を推進するようになった。しかし私たちは雇用不安を抱えている。私は4人子どもがいて、長男と娘が難病にかかっていることが分かった。痛みを感じて熱を出して学校を休むことも多く、私も少ない有給休暇をとるが、怖い上司には「そんなに休んで更新されると思うなよ」と言われびくびくしている。欠席が多い子どもの高校進学への不安もあり、私立の中高一貫校に進学させたいが、私の雇用不安から考えることができない。ぜひ雇用不安がなくなるようお願いしたい。
〇 先ほど内閣人事局と交渉し、その回答として、公務員制度の根幹として無期転換などは難しいといった話をされた。そこは残念ではあったが、「非常勤職員も安心して働ける環境をつくる必要はある」という回答はもらった。私たちが安心して働ける環境は、来年も再来年もずっと、年金がもらえるまで働けるようになること。自分の仕事に対して責任と誇りをもち、スキルアップをしながら日々働いていても、公募を前にビクビクしてしまう。非常勤職員にも生活がある。私にも大学生の娘がいて、雇用が更新されなければ学費を払うのも厳しくなる。誰もがそれぞれの生活があり、来年も再来年もずっと働き続けることが約束された環境が欲しい。
今回は限定正社員などの新しい制度を作っていただけないかという話をしてきた。これまでは「制度がこうだから」ということで進んでこなかったが、少しずつでも進めていきたい。
〇 私が一番困るのは、住んでいる北海道は冬の暖房費が高いのに、非常勤職員には寒冷地手当や住宅手当などが支給されず、1月・2月などの出勤日数が少なく給与が下がる月に高額の暖房費がかかること。暖房費を抑えるために水で食器を洗ったり、風呂を沸かすのを週1回にしたりしても、暖房費だけで月2万円くらいになる。月給では払えず、一時金で補填している状況。寒冷地手当が支給されるようになってほしい。また、非常勤職員の病気休暇は10日間の無給休暇しかなく、常勤との格差が大きい。改善をお願いしたい。
格差をなくし、安定した処遇と身分保障で安心して定年まで働きたい
さらに田村議員と参加者で要旨以下のやり取りを行いました。(●…田村議員、〇…参加者)
● 寒冷地手当や住宅手当がなく光熱費に困り、真冬に水で食器を洗うという話は、いつの時代の話なのかと衝撃を受けた。時給は上がっているか?
〇 上がらない。私は3年目だが、1年目から変わらず日給9200円くらい。
〇 一応昇給制度は作ったが、数年経験すればすぐ天井に達し、みな横並びになる。
● 数年前に賞与が出るようにはなったがベースが下がったこともあった。予算の枠が人件費的な根拠を持たないためではないか。非常勤の超勤が払われていないという実態はあるか?
〇 超勤も予算立てはされているが、予算を超えると不払いになる。ハローワークでは、対面業務でやっている場合は超勤で、事務作業はサービス残業という実態もある。
● 限定正社員制度の要望については、安定して働きたいという要望と、いわゆる正規の働き方は激烈すぎてやりたくないという要望と、両方の声を聞く。どういう制度として考えているのかをお聞きしたい。3年公募をなくしたとしても、1年ごとの更新を続ける制度のままでは昇給もしなくなる。「こういう働き方をしたい」という意見を聞きたい。
〇 私は助成金の審査を13年やっていて、この仕事にかけてはプロだと思っている。仕事のために行政書士と社労士の資格をとり、法令理解もしている。「多様な正社員」についての助成金を扱っているが、そうした正社員の賃金は、時間単価にして従来の正社員と同様だったりするので、そういう制度ができれば嬉しい。正社員になるということは無期になるということで、職務限定、短時間でも正社員として働けるようになっていけばいいと思う。
〇 更新時に公募にかけても皆さん受かって働き続けている。国の機関でも、民間同様に一人ひとりの能力を評価し、無期雇用にすべき。そうしたキャリア制度が必要。私は10年以上働いていて、昇給せず、どんなにスキルを磨いても評価されない。先輩には20年以上働いている方もいて、今回1,200人減員されたことで、私と同じ賃金単価のその先輩が何の報償もなく雇い止めとなりショックを受けた。
● 公務員の場合、俸給表が非常に厳密にできているので、非常勤職員をどういう俸給に位置付けるのかが難しく、人事院も考えるのも放棄しているのではないか。これだけ定員を減らして非正規を増やし、ちゃんとした政策を持たずにやってきた。歪みがここまで大きくなってしまったものをどうしていくのか。本腰を入れて正していかなければいけない。喫緊の課題として、3年公募をやめ、本人意思にもとづき継続雇用をするということがあるが、同時に処遇の改善をやっていかないと、長く働けば働くほど正規との格差が大きくなっていく。また、定員のなかに短時間勤務の常勤職員を広げていくことも必要。私は男女賃金格差の問題にも取り組んでいるが、格差解消には同一価値労働同一賃金が重要であり、その点、国家公務員は今でもコース別人事管理で、逆行している。そこにも切り込んでいかないといけない。
● 日給制についても問題意識がある。天皇の代替わりのときに休日が増えたが、日給制の非正規労働者は休日が増えても賃金が減るため喜べない。月々必要な家賃も生活費も変わらないのだから固定月給制であるべきではないか? 収入が減ると生活が成り立たない。なぜ非常勤は時給や日給なのか。これは民間とも共同でとりくむべき課題。
〇 国の非常勤職員の間でも月給制にしてほしいという声は大きい。
〇 職場では管理職のパワハラを相談窓口に申告した非常勤職員が、調査の途中であるにもかかわらず公募の結果不採用になった。公募の結果とパワハラの関係は切り離して考えると当局は言っているが、実際は切り離せない。職場では「パワハラを訴えたからクビになった」と言われていて、その結果「黙って我慢するしかない」となる。こんな制度はあってはならない。
〇 パワハラもセクハラも起こっているが、雇用不安があるので声が出せない。
最後に田村議員は要旨以下のように述べ、参加者との懇談を終えました。
● この間、定型的な仕事を軽く見るような政治や行政が行われてきた。民間の無期転換制度を作るときに、厚労省は当初「ルーティン業務は無期にしなくていい」と読めるような文書を出し、のちに撤回した。企画立案型の業務だけを評価するような風潮があるが、決まった業務を正確にこなすことが求められる仕事は多く、それを下に見るような政府の姿勢はおかしい。そうした職務に非常勤職員が多いこともあり、その評価を根本的に上げていくことも重要だ。今後も国会で質問を続けて、動かしていきたい。
以上