◆独法の「整理合理化計画(廃止、民営化)」は
国民の安全・安心の切り捨てに
政府は「骨太方針2007」のなかで「独立行政法人整理合理化計画」を今年12月に策定するとしています。この計画はすべての独立行政法人(101法人)とその事務事業について廃止もしくは民営化、民間委託の検討対象とし、存続が必要な独法の事務事業についてもすべて市場化テスト導入の検討対象とするとしています。国民サービス切り捨ての独法「整理合理化計画」策定の問題点をみます。
◆独立行政法人とはどういうものか
「行政機関の減量化」として発足
◇国民生活を支える重要な組織
独立行政法人は、「橋本行革」の一環として省庁再編と同時に行政機関を減量化するために2001年に発足しました。その後、旧特殊法人も独法へ移行しました(図1)。
独法は、確実に実施される必要のある事務事業であって、国自らが直接実施する必要のないもののうち、民間にゆだねた場合、実施されないおそれのある事務事業を実施(通則法第2条)しており、医療、検査、試験研究、技術開発、情報提供など、国民生活を支える重要な組織です。
◇ほとんどの独法が非公務員型へ移行
各独法では所管の主務大臣が中期目標(3年から5年)を設定し、独法理事長が中期計画を策定し、その終了時に総務省独法評価委員会を頂点とする評価をうけて、組織の見直しを含めて方向を決める仕組みとなっています。
特定独法(公務員型)から非特定独法 (非公務員型)への移行が強引に進められ、101ある独法のうち、特定独法は現在8独法のみ。職員の労働条件は人事院勧告制度ではなく、団体交渉による労働協約で決められます。
◇評価の押し付けで「従属」行政法人に
なお、独法の業務を運営する経費については基本的に国からの「運営費交付金」という「渡しきり」の予算により賄われています。
独法の職場は、移行前の宣伝とは違い、運営費交付金削減、人件費抑制、各省・各独法の自主性を踏みにじる総務省独法評価委員会の評価の押し付けにより、すでに、「独立」行政法人ではなくて、「従属」行政法人の状態になっています。
◆「整理合理化」は行政の責任放棄
◇現行も業務・組織を改める仕組みはある
本来、独立行政法人は、通則法で中期目標の期間(3年から5年)を設定し、その終了時に総務省の独法評価委員会等の評価を受け、事務事業の改廃を含めその後の業務・組織の方向を決める仕組みとなっており、すでに多くの法人がそうした見直しを行っています。したがって、新たな「整理合理化計画」は不要です。
◇経済財政諮問会議の提案が発端に
経済財政諮問会議の民間議員(日本経団連・御手洗会長など)の提案を発端とする今回の整理合理化計画策定について、国公労連が従来の仕組みとは別に計画策定を強引に進めていることを追及したところ、行革推進本部事務局は、「独法通則法には総務省独法評価委員会だけが見直しができるとは書いていないし、従来の独法のスキームと別の見直しはできないということではない」(6月)と居直りの回答をしています。
◇「真に不可欠以外はすべて廃止」の方針
整理合理化計画策定は、国民サービスを切り捨てることになります。
計画策定のための独法の見直し基準である「策定基本方針」(8月に閣議決定)は、独法の事務事業については「真に不可欠なもの以外はすべて廃止する」とし、「当該事務・事業の廃止が国民生活や社会経済の安定等の公共上、著しい悪影響を及ぼすものでなければ不可欠なものとならない」としています。
結局、多少の悪影響は仕方がないと居直り、国民サービス低下を是認しており、行政の責任放棄を公然と宣言しているのです。
◆廃止・民営化の「政治的圧力」はねのけよう
◇行政減量・効率化有識者会議の動き
整理合理化計画策定は、行革推進本部の行政減量・効率化有識者会議が進めています。
有識者会議は、所管主務省から8月末に提出された各独法の見直し案を踏まえて、9月末から11月初旬に計49独法からの個別ヒアリングを行いました。同時に総務省独法評価委員会(35独法の見直し担当)、規制改革会議、官民競争入札監理委員会(市場化テスト担当)、資産債務改革の実行等に関する専門調査会からの報告をうけています。今後、有識者会議として指摘事項をまとめることとなります。その後12月末までに整理合理化計画を確定し閣議決定される予定です(図2)。
◇研究機関の統合など圧力をかける
有識者会議は、所管主務省からの各独法の見直し案について、緑資源機構の廃止の他、国立病院機構と統計センターの「非公務員型への移行の検討」を大きく評価していますが、全体としてまったく不十分としています。ヒアリングを終了した後も、研究機関の統合などの圧力をかけています。指摘事項をまとめる時期は当初予定した11月末から12月へのびる可能性が大きくなっています。
◇自民が各省に圧力、民主独自法案提出も
こうした状況の中、11月初旬、自民党・行革推進本部は整理合理化計画の進捗について「およそ納得出来る段階に至っていない」として各省官房長宛に文書を発出し、党独自で各省ヒアリングを行う旨を伝えました。有識者会議の援軍の意味合いがあります。
一方、民主党も独法を3年後に「廃止、民営化、地方委譲、国へ戻す」(4つの選択)という法案を提出しようとしています。
◇予測のつかない混沌とした状況
「整理合理化計画」策定をめぐる情勢は、12月へむけて予測のつかない混沌とした状況にあり、圧力をかけて無理に各省に廃止・民営化などを飲ませるという「政治決着」の危険も大きいといえます。
◆「構造改革ノー」の世論喚起を
国公労連は、以上の混沌とした情勢のなか、(1)国民サービス切り捨ての整理合理化計画策定反対、(2)独法とその事務事業の存続・拡充実現、(3)職員の雇用確保を掲げて運動を進めています。
整理合理化計画策定は、構造改革路線の「小さな政府」論により、「政府機能の見直しの第一弾」(骨太方針)とされており、独法を公務・公共サービス切り捨ての突破口とするものです。しかし、構造改革路線は参議院選挙で国民から「ノー」と判断されています。これを背景に、大きく運動を発展させることが大切です。
独法職員を含む公務部門の職員数(人口千人当たり)は、日本が先進国のなかで最少です。これ以上、「小さな政府」とする必要は、まったくありません(図3)。
◇署名と宣伝、新聞投書の運動を強めよう
具体的な行動としては、国民サービスを切り捨てる「独立行政法人整理合理化計画」に反対する署名の継続です。国公労連全体として集約し、11月28日に政府(行革推進本部)へ提出しましたが、12月に最終集約し、再び提出します。
全国統一宣伝行動として12月第2水曜日(12日)を中心に独法ビラ(A4二つ折り青色)の配布・宣伝を行います。
新聞投書行動として一般新聞の投書欄で世論喚起を図ります。「国公労連速報11月1日付」(国公労連ホームページに掲載)に、参考として文例4例を掲載しています。
「政治決着」を許さないため、各単組による各主務省・各独法当局交渉と連携をとりつつ、国公労連として最終的に整理合理化計画をとりまとめる行革推進本部事務局との交渉を行います。
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