国家公務員制度改革基本法案が自民、公明、民主三党による「修正」のうえ衆議院で可決され、参議院に送付された。
法案は、公務員制度改革の基本理念や方向性などを定めるものであるが、改革姿勢を競う与野党の党利党略の協議によって「修正」された。しかし、憲法に規定された「国民全体の奉仕者」である公務員のあり方や権利、主権者国民の視点からの検討が欠落しており、なお多くの問題点が含まれていることから到底容認できるものではない。
具体的には、(1)政治主導の強化として国家戦略スタッフ、政務スタッフを配置し、特別職として政治任用を拡大、(2)官民人材交流を推進し、幹部職員等の任用・処遇を弾力化、(3)特権キャリアの人事運用を「幹部候補」として制度化、(4)幹部職員の人事を内閣人事局に一元化、(5)政官財癒着の温床である天下りを放置、(6)定年延長の検討と引き替えに給与抑制に言及、(7)労働基本権は「自律的な労使関係制度を措置する」として先送り、などである。
とりわけ問題なのは、各省幹部職員の任用に関わって内閣官房長官が適格性を審査し、候補者名簿を作成するなど、内閣が一元的に管理するとしているが、これでは時の政権党の思惑によって公務員人事や行政運営が左右されかねず、公務員の政治的中立性が損なわれる危険性がある。
また、官民人材交流の推進によって、行政と利害関係にある企業人が直接行政に関与することになれば、所属業界・企業に都合の良い施策に歪められる危険性が高まり、行政の変質につながりかねない。
さらに、労働基本権の取り扱いに関わって一定の「修正」を行ってはいるが、権利回復を何ら担保するものではなく、ILOが再三にわたって指摘している争議権や消防職員・行刑職員の団結権には一切触れていないことも重大な問題である。
基本法というなら、公務員の基本的人権をまず保障したうえで、給与制度や退職手当の見直しなど労働条件課題は労使の交渉・協議で決定すべきである。昨年成立した「改正」国公法のもとで、「能力実績主義の人事管理」に向けて新たな人事評価制度の検討が進められているが、労働基本権制約のもとで実質的な意味ある交渉・協議の成立に疑念を抱かざるを得ない。
法案審議は参議院に移ることとなるが、国公労連は公平・公正・効率的な公務運営を保障するためにも、徹底審議を通じて以上のような問題点を解明し、広く国民的な議論が行われることを期待する。
同時に、時の政権党に従属するのでなく、国民のために働く公務員労働者・労働組合として、労働基本権の回復をはじめとする民主的な公務員制度の実現に向け、引き続き運動を強める決意を表明するものである。
2008年5月29日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 岡部勘市
以上
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