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2010年2月19日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 岡部勘市
政府は本日、公務員制度改革関連法案として国家公務員法等の一部改正案を閣議決定した。法案は、幹部職員人事の内閣一元管理と弾力化、内閣人事局の設置、民間人材登用・再就職適正化センター及び再就職等監視・適正化委員会の設置などとなっている。
国公労連は、全労連公務員制度改革闘争本部に結集し、労働基本権の完全回復をはじめとする民主的公務員制度の確立とともに、関連法案の検討にあたって労働組合との十分な交渉・協議を一貫して求めてきた。しかし、政権交代したもとで昨年2月3日決定の「工程表」や「自律的労使関係制度の措置に向けて」(12月15日報告)の取り扱いについてすら明確にしないまま、拙速な閣議決定に抗議する。
法案の内容も多くの問題点を含んでいる。幹部職員人事の内閣一元管理、とりわけ事務次官、局長、部長を「同一の職制上の段階」とし、転任と称して任免の自由化をはかることは重大な改悪と言わざるを得ない。事務次官、局長、部長等は、それぞれに求められる資質、能力等の実証を経て厳格に任用されなければならない。明確な基準のない降任は、幹部職員と言えども勤務条件の不利益変更であり、公務員の身分保障に反する。
また、各府省の行政に精通しているとは言えない内閣総理大臣(内閣官房長官)による適格性審査や幹部候補者名簿の作成、任免の協議などは任命権者の形骸化と幹部職員の政治化、恣意的な人事運用を加速させることとなる。
さらに、内閣総理大臣の権限がいっそう強化され、内閣人事局設置で公務員の管理統制が強められる一方、労働基本権とも関わって附則では使用者側機関の体制検討にも言及しているが、協約締結権の具体的な制度議論もないまま先行することは容認できない。
組織的な再就職斡旋は禁止されるが、内閣総理大臣(民間人材登用・再就職適正化センター)の承認を得た場合は、職員が在職中に利害関係企業への再就職依頼を認めることは国公法第103条(私企業からの隔離)と整合しない。公務の中立性を担保する関連条項を整備する必要がある。
一方、第78条4号による離職(分限免職)の場合は就職の援助を行うとしているが、昨年末に強行された社会保険庁の例に明らかなように、本来事業を引き継ぐ組織に雇用も承継されるべきであり、包括的な雇用承継規定の整備とともに、最低でも整理解雇4要件に相当する分限免職回避(乱用防止)の努力規定を同時に措置すべきである。
また、民間人材登用・政治任用の拡大は、情報の漏洩や企業との癒着の増長を招き、専門家集団としての職業公務員の中立・公正性や、安定的・継続的な公共サービスの提供に影響を及ぼすことが懸念される。
なお、2月5日に閣議決定された内閣法の改正など「政治主導確立法案」や、地域主権と称して国の出先機関を廃止し、国家公務員の削減数を競うような関係閣僚等の発言と併せ考えれば、憲法第15条2項の公務員の本質に逆行し、時の政権に隷属するモノ言わぬ公務員づくりの狙いが浮かび上がってくる。
国公労連は、以上のように重大な問題点をもつ法案の根本的な修正を求めるとともに、憲法にもとづき国民の権利保障のために働く国家公務員の労働組合として、公平・公正・民主的な公務員制度の確立に向けて、引き続き運動を強化するものである。
以上
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