2012年5月11日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 岡部勘市
政府は本日、1月に決定した「独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針」にもとづく「独立行政法人通則法」の一部改正法案を閣議決定した。その内容は、「独立行政法人」から「独立」という言葉を取り去ったことに象徴されるとおり国の関与を強化し法人の自主性・自律性を縛る一方で、「法人」という枠組みを残すことによって国が果たすべき責任を投げ捨てるものとなっている。加えて、法人の事務・事業や組織の廃止ありきの内容となっており、「小さな政府づくり」「公務員総人件費2割削減」を口実にした公務・公共サービスの切り捨て、消費税増税をはじめとした国民負担増の露払いに他ならず、断じて認められるものではない。
独立行政法人制度は、行政の減量・効率化を目的にしつつも、国民生活および社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務および事業について、自律性・自発性および透明性を備えた法人が行うこととされてきた。
しかし、「改正」法案では「行政法人」は「主務大臣が設定した政策目標の達成を目指すため、政策実施機能を担う法人の業務運営への適切な関与の強化を図る」とされ、自主性・自律性を縛るものとなっている。また、国の定める計画に基づき効率的に事務・事業を行うことや、社会経済情勢を踏まえた事務・事業の実施を求めているが、国の政策実施機能の強化をはかることを目的に制度を見直すのであれば、現在独立行政法人が行っている事務・事業について、国の責任であることを明らかにし直接実施すべきである。
行政法人の事務・事業が運営費交付金でまかなわれることを理由に、主務大臣が法人の中期目標の設定や評価を行うだけでなく、組織の改廃に関する権限までをも掌握するとしている。加えて、主務大臣による評価結果や組織の改廃措置判断について、内閣府におかれる行政法人評価委員会が主務大臣への勧告を行うことや、内閣総理大臣に対して意見具申ができる仕組みを盛り込んでいることは、「国民目線」を名目にした行政法人の縮小・解体をねらうものに他ならない。
また、縮小・廃止対象となった行政法人を離職せざるを得ない職員について、法人の内部規則を含む法令等違反行為があったことを理由に再就職あっせん措置の対象外とすることは、社会保険庁の分限免職と同じく不当な首切りを生み出す危険性が極めて高いといえる。
さらに「国立研究開発法人」については、行政法人評価委員会と総合科学技術・イノベーション会議両方から評価等の点検をうけることとなっているが、責任の主体があいまいなことに加え、解消が求められている「評価疲れ」をいっそう深刻にするという問題点を含んでいる。
財政との関わりでも「行政法人は、業務運営にあたっては、前項の規定による交付金について、国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われるものであることに留意し、…適切かつ効率的に使用するよう努めなければならない」という条文を盛り込むなど、運営費交付金をタテにした締め付けを強めようという意図が表れている。
以上のように、法人の「自主性・自律性の発揮」とはほど遠く、運営に必要な基本的事項について、文字通り「箸の上げ下げまで口を出す」制度づくりが狙われていると指摘せざるを得ない。
国公労連は、国の責任において、(1)財源措置をはじめとした独立行政法人の事務・事業を存続・拡充すること、(2)国として直接運営した方がより効率的・効果的で、国民生活と社会経済の安定・向上等に公共的見地から貢献できる事務・事業については、国の行政機関に戻すべきこと、(3)研究開発独立行政法人については、確実に目的を達成するための制度とすること、を求め引き続きとりくみを進めるものである。
以上
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