【公務員制度改悪反対闘争・学習シリーズ1】

 

行政サービスきりすての行革の総しあげ

「公務員制度改革の大枠」の内容批判

「大枠」はこんなことを言っている(その概要)

意義=新たな政府の組織で働くのは新たな公務員でなければならない

 

<目指すべき公務員像>

 自ら能力を高め、互いに競い合う中で使命感と誇りを持って職務を遂行し、諸課題への挑戦を行う、国民に信頼される「公務員」

 

<目指すべき行政組織像>

 政治主導の下での国家的見地からの戦略的な政策立案、中立公正で簡素・効率的な業務執行を実現する機動性に富んだ「組織」

【具体的改革方向】

1 信賞必罰の人事制度の確立
・能力、業績が的確に反映される新たな給与体系の構築
・能力本位で適材適所の任用の実現
・公正で納得性の高い新たな人事評価システムの整備

2 多様な人材の確保・育成・活用
・採用試験制度の見直し等による多様な人材の確保
・個々人の育成計画の作成等による多様な人材の育成・活用
・女性の採用・登用の拡大
・超過勤務の縮減などによる勤務環境の改善等

3 適正な再就職ルールの確立(「天下り」問題への対応)
・「押し付け型天下り」との疑いを持たれる営利企業への再就職に係る厳格な規制等

  【具体的改革方向】

1 国家的見地からの戦略的な政策立案機能の向上
・「国家戦略スタッフ群(仮称)」の創設等

2 企画・実施両機能の強化
・民間企業等との人材交流の促進
・業務遂行規範の作成等

3 責任ある人事管理体制の確立
・責任ある人事管理体制の確立と自由度の拡大
・府省の枠を超えた人員の再配置
・中央人事行政機関等の役割転換

 

国家公務員法改正など公務員制度の抜本的な改革

2001年4月

日本国家公務員労働組合連合会
(国公労連)

 


「大枠」にもとづく公務員制度改革、そのねらいは

1 ことの発端は、自民党の参議院選挙対策

 2000年10月、野中前自民党幹事長が講演で、「公務員の身分保障を廃止するかわりに労働基本権を回復」と述べたことに端を発した今回の公務員制度改革は、特殊法人等の改悪と並び、来る参議院選挙を強く意識している。「野中発言」の延長線で、12月1日に行革大綱が閣議決定され、3月27日には、「公務員制度改革の大枠」を政府行革推進事務局が決定した。なお、この大枠は、1月6日からの内閣法改正で、あらたに内閣官房の権限となった「重要施策での政策立案」の枠組みを「活用」した「政策調整システム」で決定したと位置づけられている、各省の意見を聞くことなく、「政治主導」で決定された「大枠」ではあるが、首相の了解を得たことで内閣全体が「(目指すべき)基本方向」の性格を持っている。
 そして、4月10日には、各省官房長・人事担当企画官をメンバーとする「連絡会」が設置され、「大枠」をもとに6月中に「基本設計」をとりまとめるための「協力」が確認されている。

2 組織の次は人の改革(=中央省庁再編のねらいと公務員制度改革は同じ)

(1) 今回の公務員制度改革は、極度に中央集権的な行政運営をめざす「首相権限強化」の一方での、独立行政法人制度創設などの行政減量化(小さな政府づくり)を目的とした行政改革後の組織に見合った「公務員づくり」を意図したものである。
 そのような公務員制度改革は、「安定性(永続性)」、「民主、効率」、「政治的中立性」といった現行公務員制度の基本原理を軽視し、自民党政治延命のための戦略的政策立案に公務員を大量動員し、行政実施部門には執行の個別責任をせまることで「民間的経営」(行政執行部門のオール独法化)をねらう大規模なものである。
 特に、中曽根元首相が、公務員制度改革ともかかわって、「大枠」がふれている「国家戦略スタッフ群」を高く評価し、改憲策動もあらわにした投稿を朝日新聞におこなったことは注目する必要がある。有事法制など、「戦争法」につづく「戦争ができる国」への転換は、行政改革の一つの目的であり、そのことと今回の公務員制度改革を切り離して考えることはできない。

(2) その具体的な内容は、信賞必罰の人事管理をねらった賃金制度などの「改革」を、各省大臣を「人事管理権者」として実施させること、官民の人材交流を流動化させるために中途採用や天下りにかかわる規制を緩和し、企画部門の公務員の「政治化」を一層促進することが、中心におかれている。
 そして、それらのこととのかかわりで、公務員の労働条件決定における人事院の関与(=人事院勧告制度)を緩和し、各省単位での労働条件決定を可能にする仕組みが提起されている。


「大枠」の具体的な内容の批判

【なぜ、今公務員制度改革なのか】
【逆立ちした改革の基本方向】
【職務給を廃止して「能力・実績が反映される」賃金制度に改革】
【退職金の見直しにも言及】
【人事院の級別定数査定を廃止し、各府省大臣の判断と責任で給与を設定】
【新たな人事評価システムと「適材適所」の任用】
【天下り問題への対応】
【官民の人材交流】
【責任ある人事管理体制の確立】
【6月中に「基本設計」とりまとめ】

 

【なぜ、今公務員制度改革なのか】

「大枠」では、行政改革の「魂」をいれるためには、公務員の行動原理の基礎をなす公務員制度の改革が必要だとし、現在の制度では次のような問題に対応できないとしている。

(1)政策立案能力の低下
(2)セクショナリズムによる機動的・総合的対応の欠如
(3)硬直化した昇進管理、過度の年功的処遇などの人事運用上の問題
(4)政治と行政のあり方(関係)
(5)組織への安住、無駄と分かっている予算の消化、押しつけ型の天下り、前例主義、サービス意識の欠如など

1 「現行制度の問題点」としていることは、50万国公労働者全体に共通するものとは考えられない。全体として、一部のキャリア特権層の「問題」(例えば(1)や(4)など)を念頭においたものである(離島で働く公務員、24時間交替制で働く職員、窓口第一線の職員の働き方、働きがいにかかわる公務員制度という視点が欠けている)。

2 (2)、(3)などは、制度ではなく運用の問題でしかない(キャリアの優遇人事、年次別・試験採用別人事管理などは、制度としての裏付けは全くない)。

3 (5)は、公務員制度だけの問題ではない(予算制度や行政の裁量権など、行政全体の見直し課題であるにもかかわらず、中央省庁再編でも何ら具体的な措置は検討さえされなかった)。

 

【逆立ちした改革の基本方向】

「大枠」では、「中立公正で国民から信頼される、質の高い効率的な行政の実現」を目標に

(1)自ら能力を高め、互いに競い合う中で、使命感と誇りを持って職務を遂行し、諸課題への挑戦を行う、国民に信頼される「公務員」
(2)政治主導の下での国家的見地からの戦略的な政策立案、中立公正で簡素・効率的な業務執行を実現する、機動性に富んだ「組織」

を公務員制度改革でめざすとしている。

1 公務は、国会が定めた法にもとづき、いつでもどこでも同質の行政サービスを、政治的な関与を排除して公正・中立に実施することがその役割。そのために、集団性や専門性、政治的中立性などを保障することが現行公務員制度の基本的な精神(「全体の奉仕者」としての公務員とは、そのような役割を忠実に執行することで具体化される。また、そのことが、身分保障など民間とはことなる勤務条件のもとにある)。

2 社会が複雑・高度化する下で、公務員が専門性を高めることは必要。しかし、「互いに競い合う」余地が、法を誠実に執行する上でどれだけあるのか。何にたいして「挑戦」をおこなうのか。一人一人の公務員が、自己の判断で行政執行することで、公正な行政サービスを提供していると言えるのか、などの問題がある。その点が、「少ないコストで最大の利潤」を追求する営利企業と異なる点。

3 政治家が、政策を立案するのは当然。しかし、その政策立案に、公務員が「補助的」に関与する場合でも、政治的中立性を保つことが何より重要。政権党の「選挙政策」づくりに官僚が関与することは、政権党延命のために助力することになる(例えば、日本とおなじ議院内閣制をとるイギリスでは、大臣など省にいる政治家以外と公務員との接触を制限しているとされている)。
 特定利益を代表する政党(政治家)のために職業公務員が政策立案をすることを当然視する改革は、変えてはならない公務員制度の基本精神を踏みにじることになる。

 

【職務給を廃止して「能力・実績が反映される」賃金制度に改革】

「大枠」では、現行の職務給は、

(1)ポストと給与の関係が硬直的で、状況に応じて弾力的に職務内容を変化させる我が国の行政運営の実態にあわない、
(2)民間企業では従業員の能力を基本とした給与制度を構築しているとして、職務給原則に基づく給与制度の廃止を提起。

 そして、「職務遂行能力に基づく部分」「職責の大きさに基づく部分」、「具体的にあげた業績に基づく部分」に分割し、能力、職責、実績をバランスよく反映し、能力向上や業務達成に対するインセンティブを高める新たな給与制度の構築を提起。

1 現行の給与制度の廃止を前提とする全面的な改革を提起。例えば、「職責給」を新設した独立行政法人・産業技術総合研究所では、生活補填手当である調整手当などの廃止を当初提案。「職務能力(職能給)」の具体的なイメージは明らかではないが、例えば企画・実施部門別に職能資格を区分し、それぞれに係員職級や係長職級を設定して定額を定め、それに同じ係長でも職責により異なる職責給を加算し、さらに査定にもとづく業績(実績)給を加算して一人一人の賃金を決定するといったことなどが想定される。

2 民間でも、職能給制度をとるところが多かったが、近年その見直しがすすみ、「職務給、役割給」を日経連が提言している状況にある。すなわち、個人の能力という抽象的で「数値化」が困難な職能給ではなく、職務(仕事の役割と責任)に応じた賃金制度に民間でも変化しはじめている。
 仮に、職能給を公務員賃金の基本とした場合、50万国公労働者一人一人の能力を賃金にどうして反映させるのか、(納税者の納得という意味で必要な)民間賃金との均衡を保つ方策(基準)をどう考えるのか、という問題もある。

3 また、職務給を前提として、経験を積むことで仕事の役割・責任が増し、それにともなって賃金も上昇するという賃金体系は、一面では生活(生計費)保障の側面をもっている。3分割した場合に、その点を保障する「基準」もなくなることになりかねない(生計費原則の否定)。

4 なお、実施部門と企画立案部門の公務員の分離(区分)、さらには「国家戦略スタッフ群」や「大臣スタッフ」といった「スーパー特権官僚」の3類型の公務員像が想定されている。先にも触れているように、職能給、職責給などの要素に賃金を分割することは、結果として、3類型別々の賃金水準を招くことになりかねない。結果として、「スーパー特権官僚」の処遇のために、大多数の実施部門の公務員の賃金が抑制されることをねらった賃金制度改悪とも言える。

 

【退職金の見直しにも言及】

「大枠」では、退職手当制度について、給与制度の見直しをふまえつつ、長期勤続者に有利になる退職手当の算定方式等を改める、と提起。
 また、官民人材流動性向上の観点から、官民の年金制度の相違解消も検討

 退職金、年金とも、官民の雇用流動化と能力・実績によって賃金が大きく変動することが検討の前提。
 例えば、退職金では、民間企業が導入しはじめている「ポイント制」などが想定されていると考えられる。結局、実施部門で地道に仕事をしている職員に報いるものではなく、「スーパー特権官僚」を優遇し、若い時期から高額の退職金を保障するものにしかならない。

 

【人事院の級別定数査定を廃止し、各府省大臣の判断と責任で給与を設定】

「大枠」では、

(1)現行給与制度の廃止と併せて、各府省の機動的弾力的な人事運用を阻害する要因となっていた人事院による級別定数制度は廃止、
(2)各府省が自らの判断と責任において、総人件費の枠内で、一定の基準の下、組織・業務の特性等に応じた給与設定ができるような仕組み、
(3)大臣を「人事管理権者」として制度上明確に位置づけ、総定員・総人件費の枠内で、あらかじめ定められた明確な基準の下、課・室の機動的弾力的改編や、組織・人事制度を設計・運用できる仕組みを整備、

としている。

1 級別定数は、昇格にかかる重要な勤務条件。また、各府省が、総人件費の枠内で給与設定することも重要な勤務条件である。同時に、課や室の弾力的な変更は、結果として賃金決定要素の変更にかかわる可能性がある。
 能力、職責、業績といった基準があいまいな賃金決定要素で、恣意的に個々人の賃金が決定できる賃金制度への改革も含めて、労働基本権の回復や人事院勧告制度にかわる労働条件決定の仕組みを同時に検討することが絶対的に必要。
 しかし、「大枠」では、「公務員制度全般にわたる抜本的な改革のための検討を進める中で、労働基本権の制約のあり方との関係も十分検討」するにとどまっており、「いいところ取り」の改革で、公務員労働者をさらに無権利状態に押し込む危険性をもっている。

(参考)
○公務員労働者の労働基本権制約を「合憲」とする判例の趣旨(昭48.4.25・最高裁)

1 公務員は労務を提供して糧を得ている点では一般の労働者と異なることはないから、憲法第28条の労働基本権の保障は及ぶ
2 しかし、国民全体の共同の利益の見地からの制約は免れない
3 労働基本権を制約する以上相応の措置(法律により主要な労働条件が決定され準司法機関的性格をもつ人事院の設置)が講じられなければならない。

2 大枠では、「一定の基準」、「あらかじめ定められた明確な基準」のもとで、「総定員・総人件費」の枠内で弾力的に給与等を決定するとしている。先にもふれたが、職務給をもとにした民間均衡という仕組みではない基準設定とはなにか、極めて不明確。
 しかも、能力評価の基準が、各省横断的に設定しうるか。結局は、総人件費と財政事情のみが強調され、賃下げ、リストラ「合理化」を各府省の「判断と責任」で実施すること、行政減量化のための仕組みとなる危険性が高い。

 

【新たな人事評価システムと「適材適所」の任用】

「大枠」では、新たな給与制度、新たな人事評価システムの導入を契機に

(1)T種・U種・V種や事務官・技官の別など採用段階の区分にとらわれない、能力本位で適材適所の任用を実現
(2)分限処分について、勤務成績が良くない公務員や官職に必要な適格性を欠く公務員に、必要な指導等をおこなうとともに、改善がみられない場合には厳正な処分を的確に講ずるなどの実効性ある制度を確立

などとし、評価については

(3)能力評価(能力・行動基準を定めて評価)と業務評価(一定期間毎の業務目標の設定と評価)の2本立てのシステム(評価基準について、省益にとらわれない縦割り行政を排除した企画立案や予算節約実施などを高く評価)

を提起している。

1 T種特権のいわゆる「キャリアシステム」の改革に踏み込むような打ち出しをしているが、すでに述べたように、「大枠」の基本には公務員を3分割(区分)することがある。「適材適所」の任用は、結局、あらたな評価システムをテコとする差別と分断の強化をめざすものと言える。

2 しかも、「勤務成績不良」を理由に、「厳正な処分」(降任、降給、免職など)を行うとしており、分限処分をちらつかせながら、「上意下達の人事管理」を強化することが中心的なねらいであると考えられる。
 そのような人事管理の「評価基準」が、「予算節約」などにおかれていることも問題である。先にもふれたが、公務員の役割は、法にもとづく行政サービスを公正、中立かつ能率的に執行することにあるにもかかわらず、「財政効率(カネ)」優先の執行をおこなわなければ、分限処分をちらつかせれることでは、質のたかい行政サービスは提供できない。

3 また、現在は行われていない降給や降任などの不利益処分に対して、労働者の権利擁護の観点にたった異議申し立てや、救済措置の手続き、労働組合の関与など民主的な手続きが同時に検討されるべきであるにもかかわらず、検討姿勢さえ示していない。
 「大枠」に示す公務員制度改革が、労働者の勤務条件の根本基準を定めていることへの配慮を欠いた改革であることを露呈している。

 

【天下り問題への対応】

「大枠」では、押しつけ型の天下りは厳格に規制しつつ、

(1) 明確かつ厳格な承認基準を設け、大臣の直接承認とする、
(2) 再就職後の行為規制を導入、
(3) 人事院の事前承認制度は廃止

などが提起されている。

1 「天下り」に対する国民の批判は高く、特に各省庁と関連企業との組織的なゆ着の実態が相次いで明らかになっている状況から、近年、さらに批判が高まっている。各省の責任者である大臣の承認のみで、「天下り」を認めるとすれば、現在の人事院による規制以上の厳格な基準設定が求められる。しかし、一方で「大枠」が、官民の人材交流や「民間との情報交換」などを強調していることにもみられるように、組織的なゆ着に対する反省は見受けられない。結局、「天下りの自由化」となる恐れが強い。

2 その歯止めとして「再就職後の行為規制」が強調されるが、在職中の公正・中立性を確保するという「再就職規制」の別の一面は、行為規制では担保されない(再就職が予定されている企業に対して在職中に「便宜」をはかることも制約するためにも事前承認の意義がある)。

3 「政官財」ゆ着の現状からすれば、各省と関連する営利企業への再就職は全面禁止することを基本に、制度改革を行うことこそ必要である。
 また、特殊法人などへの再就職については、「数次にわたり高額の退職金を受け取ることのないよう、公務員の再就職に係る退職金について厳格な見直し」とするにとどまっている。そのことは当然のこととして、特殊法人等から出身省庁と関係のある民間営利企業への再々就職も禁止するなどの措置も検討すべきである。

 

【官民の人材交流】

「大枠」では、「中立公正を追求するとの原則の下に民間企業等との人材交流を過度に規制」したとして

(1)人事院の事前承認、協議の廃止を検討するなど中途採用、任期付き採用制度の見直し
(2)公務員の民間企業等への出向の機会の増大
(3)民間企業から登用された人材の再就職規制の見直し

などを提起している。また、政策の企画立案重視の観点から

(4)内閣・内閣総理大臣を支えるスタッフとして、各府省や民間企業から選抜されたメンバーからなる「国家戦略スタッフ群」の創設
(5)各大臣を政策立案面で直接補佐するスタッフの充実
(6)人材の公募制の導入など、スタッフ選定方法や処遇のあり方等の制度化検討などを打ちだしている。

1 採用や昇任など、任用にかかわって、情実人事を排除し、政治家の介入による不公正な選考採用を排除することは、公務員制度の基本精神。「大枠」は、その点に逆行。
 例えば、任期付き採用制度にかかわる国会審議でも、「官民ゆ着等の疑惑や批判を受けることのないよう制度の適正な運用」を求める付帯決議がおこなわれている。
 そのような経過を無視し、国家決議さえないがしろにした改革をおこなうことは、政治主導とはいえ本来許されない。

2 日本国憲法は、公務員に「全体の奉仕者」であることを求めており、政治的な任用は原則として否定。その上で、一般職国家公務員と、政治的な公務員を含む特別職国家公務員に区分し、政権と運命をともにする公務員をおいている。
 「国家戦略スタッフ群」などの構想は、まさに政権にのみ奉仕をする「政治的任命の公務員」となることが想定される。政権と運命をともにすることを避けつつ、政策立案など政治的役割のみを発揮する立場の公務員を作り出すことは、安全な場所に身をおいて改革を唱えるご都合主義でしかない。

 

【責任ある人事管理体制の確立】

「大枠」では、各府省が組織・人事管理について主体的に責任を果たす体制を確立するとして、

(1)大臣を「人事管理権者」として制度上明確に位置づけ
(2)人事院については、人事管理に係る事前承認、協議事務を廃止することを基本とするとともに、組織としてのあり方も含め検討

としている。

1 大臣を「人事管理権者」として位置づけるならば、人事院勧告による労働基本権の「代償機能」が形骸化することになり、労働基本権やあらたな労働条件決定システムの検討が必要になることは先にもふれた。
 同時に、各省大臣が自由に任用などをおこなうことでの、公務の中立性・公正性への悪影響についても繰り返し指摘しているところである。

2 国公労連は、1982年3月に、「民主的公務員制度の確立にむけて」とする国公労連・公務員制度検討委員会報告を確認し、この間取り組みを進めてきた。その中では、労働基本権を公務員労働者に回復した場合でも、公務員と国民のための公正・中立・安定した行政を担保するための人事行政を所掌する中央人事行政機関の必要性を述べている。その際の中央人事行政機関は、政府から独立した中立の行政委員会とし、職務分類制度、試験及び任免(任用)、分限・身分保障、服務、研修などを所掌することを提案している。
 このような検討委員会報告の立場は、現在でもいささかも変わるものではなく、公務員制度を民主的に運営していくための基本的な条件の一つだと考える。

3 中央人事行政機関のそのような役割を確認した上で、公務員労働者の「内部告発権」や、人事行政に対する意見表明権、あるいは労働組合の参加など、より民主的な公務員制度としていくための改革を対峙していくことが求められている。

 

【6月中に「基本設計」とりまとめ】

「大枠」では、

(1)6月には基本設計を取りまとめ、法改正作業に早急にとりかかる
(2)関係者の意見も聞きながら、内閣の「政策調整システム」に基づき、抜本的な改革の具体化に向けた検討を迅速におこなう

とするスケジュールと進め方を明らかにしている。

1 政府は、4月5日に、各府省(人事院、会計検査院を含む)の官房長、人事担当企画官を構成員とする「連絡会」を設置し、4月10日には初回の会議を開催している。
 この「連絡会」は、
 1)各府省が、意見、要望を行革事務局に伝える場
 2)行革事務局の求めに応じて各府省が基本設計の策定に協力していく窓口
 とされ、「主要事項については、行革事務局と各府省との協力で検討を進めるチームを連絡会の下におく」ことも確認されている。また、7月以降の行革事務局の体制強化についても、各府省に協力要請がおこなわれている。

2 「連絡会」の性格からしても、また「大枠」が内閣官房の「政策調整システム」(内閣法第4条)を活用してトップダウンで「基本設計」をおこなうとしていることからして、公務員制度改革が一部の政治家と官僚によって強引に進められる危険性がある。
 それだけに、1)「大枠」にもとづく公務員制度改悪を許さないとする国民的な世論で政府を包囲する状況を一日も早く作り出すこと、2)各省当局を追及し、改悪反対の立場を明確にさせること、3)労働条件の大改悪、行政サービスの切りすてに反対し、危機感をもって全国公労働者(管理職を含む)が一日も早くたたかいに立ちあがること、の3点に力を集中することが求められている。
 そのようなたたかいを進める上で、本資料を参考として活用願えれば幸いである。

 


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