クレーンの検査作業のため地上64メートルの運転席まで支柱タラップを登っていく北大阪労働基準監督署の労働技官=1989年12月
1989年12月、大阪・枚方市。「みなさん集まってください。今からこのクレーンの検査を行います」。北大阪労働基準監督署の労働技官の声が工事現場に響いた。工事関係者を集め、検査作業の段取りを手際よく説明する。この日の仕事は、京阪電車の大阪・枚方市に建設中の店舗兼マンションの建設現場に設置された、運転席まで高さ64メートルの大型クレーンの検査だ。労働技官はクレーンの支柱の中にあるタラップをすいすいと登っていく。
クレーン検査は、運転手に操作させながら、テストウエート約12トンを吊り上げ、加重テストなどを行った。労働災害を未然に防ぐのが労働安全衛生行政の使命だ。
北大阪労働基準監督署は、大阪府の東北部7市と大阪市鶴見区の約3万カ所の事業所を管轄している。管内には松下電器(現パナソニック)、三洋電機など大手電機メーカーの本社・工場がある。北大阪署の職員数30人、労働基準監督官は署長含め10人。この人数でどれだけ労働者の生活と権利、生命と健康が守られるのだろうか。こうした状況だが「事業場に何回も足を運び、賃金不払いや解雇の問題が解決し、労働者からお礼の手紙をもらったりしたときが、何よりうれしい」と北大阪署の監督官は語った。
(「国公労新聞」1990年1月1日・11日合併号より)
(国公労調査時報 bT79 2011年3月号)
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